問題

福島県と東京都の水道水中の放射性セシウム濃度

以下の文章は正しいですか?
『平成24-27年度に福島県から公表されたデータでは水道水から検出された放射性セシウムの濃度は東京の水道水の検査結果とほぼ同じレベルである(平成28-30年度は東京の方が濃度が高い)。』

参考資料等

原子力規制庁・上水(蛇口水)のモニタリング

韓国での水の放射性物質の調査例

Yoon S, Chang BU, Kim Y, Byun JI, Yun JY. Indoor radon distribution of subway stations in a Korean major city
the concentration (177.9+/-2.3 Bq L(-1)) of one station was over the level of 148 Bq L(-1) in drinking water proposed by U.S. EPA

水源対策

大柿ダム

底質土の除去や流出防止対策の徹底が要望されています。
浪江町
南相馬市

木戸ダム

ダム湖水の安全確認

現状

国(環境省)は、木戸ダムの水質・底質モニタリング箇所を定点 1 箇所に加え 15 箇所を増加(計 16 箇所)して測定したところ、水質は全地点で ND(不検出)という結果であった。一方、底質は 51〜12,200 Bq/kg の範囲であることが判明した。
平成 26 年 10 月の台風上陸時に、木戸ダムおよび取水堰における水の濁度および放射性セシウム濃度を測定した結果、放射性セシウム濃度は最大で 2.0 Bq/kg であり、これは濁度 110 のときであった。

評価

今回の調査期間中、台風などの大雨時でもダム底からの土砂の巻き上げは無かった。
また、木戸川河川水の濁度が浄水場の取水停止基準(濁度 30)より大幅に高い場合でも、放射性物質の濃度は低かった。これらを総合して、木戸ダムは、水源として求められる安全が確保されていると考えられる。
一方で、町民の水に対する不安は未だに払拭されてはいないことから、今後とも理解を得るために丁寧な説明を続けていくことが必要である。また、木戸ダムと木戸川の濁度と放射性物質混入との関係を継続的に調査する必要がある。

上水道の水質管理

現状

水道企業団・復興庁は、小山浄水場に、水道水の 24 時間モニタリング機器を導入予定(平成 27 年度測定開始予定)。また、ゲルマニウム半導体検出器による浄水の放射性モニタリングについて、週3回から毎日に変更した。 町民に配布されているタブレット端末を活用した飲料水の放射性物質モニタリング結果の定期配信や、町の委託事業である「まちめぐりツアー」における木戸ダム・小山浄水場の見学などのリスクコミュニケーション活動も実施。

評価

水道水のモニタリング体制が充実し、現実的な対応となっている。 取水口において一定以上の濁度があれば取水しない(また、その基準を超える濁度であっても放射性物質の濃度 2 Bq/ℓと低い)ことと、浄水場の処理工程において濁度を十分に落としていることから、水道水は多重の安全対策が取られ、安全は確保されていると言える。しかしながら、飲料水に対する町民の不安は大きいことも事実であり、モニタリング体制をはじめとする安全管理の仕組みや、実際の水道水の測定結果などについて積極的に情報公開するとともに、丁寧な説明を行って、住民の理解を深めることが必要である。

飲料水の安全・安心

【関連評価項目】

   
○ダム湖水の安全確認 ○上水道の水質管理
○沢水を利用した簡易水道の水質管理 ○ストロンチウム飛散状況把握

○木戸ダム貯水の鉛直方向濁度測定結果、取水堰の濁度測定結果、及び取水堰における水中放射性セシウム濃度の経時的変化のデータから、大雨や台風時に放射性物質を含む底土の明瞭な巻き上がりは観察されなかったが、今後もこれらの測定を継続して基本的データの蓄積に取り組む必要がある。
○木戸ダム・小山浄水場から供給される水については、国や水道企業団等による様々な対策により、安全性が確保されている。しかし町民の不安は未だに払拭されていないことから、当面は安全性の理解を得るために丁寧かつ分かりやすい説明を続けることが重要である。具体的には、モニタリング体制をはじめとする安全管理の仕組みや、実際の水道水の測定結果を積極的に周知する等の取組を検討・実行し、町民の水の安全性に対する理解を求めていくことが必要と考える。
○依然として木戸ダムの湖底に放射性物質が存在し続けており、飲料水のさらなる安心を確保するため、将来的には、技術革新による抜本的対策の実施可能性についても検討すべきである。
○沢水を利用した簡易水道については、現状、週 3 回の測定にとどまることから、利用する町民が不安を感じる可能性がある。しかしながら、現状の測定頻度を高くしていくことは困難であることから、現状の方針で町民の理解を得るため、これまで以上にリスクコミュニケーションに努める必要がある。

資料中の用語説明

小山浄水場が供給する水道水の現状と安心に向けた取組について(楢葉町除染検証委員会(第5回)資料)
小山浄水場から供給される水道水の安全性について(楢葉町除染検証委員会(第7回)資料)

ELとは?

(海抜)標高です。ELevationを略しています。

SWLとは?

洪水時に貯留することができる満杯の貯水位(洪水時最高水位)です。サーチャージ水位を略しています。

小山浄水場の見学で飲料水の安全性が確保できていることが理解できた。浄水場でのモニタリングのことも学べた。その一方で、どこまで浄水のモニタリングを行えば良いのか疑問に感じた。水道水のモニタリングはどう行うのがよいのか?

浄水場では施設が健全に運営されることで、飲料水の放射線安全は確保されているので、住民の生活の支えになるようにどこまで施策として実施するかが問われることになるでしょう。このため施策の優先順位などを住民と共に考える必要があるのではないでしょうか。ダムを水源とする特殊性が小山浄水場にはあります。全ての浄水場で小山浄水場のような放射能モニタリング(毎時のGe半導体検出器による計測)を行う必要はないと考えられます。放射線計測は判断に役立つ材料を提供することもありますが、 それが課題解決に必須のものでもなく、優先度が低いものは取りやめていくことも必要だと考えられます。

資料が用意されていて有り難いが、住民にどう説明するかがよくわかりません…

一人で全てを対応すべきではなく、難問は力を集めて対応することが求められます。専門的な事項は専門機関に相談できます。専門的な事柄まで勉強しないといけないと思うと負担になってしまうので、どのような役割を果たせばよいのかを確認できるとよいのではないでしょうか。

見学して現状での対応はよいと思いましたが、災害があった場合に備えているのでしょうか?

浄水場では常にモニタリングされており異常があった場合の対応の方法も決められており、その場合、各自治体には迅速に連絡されることになっています。一方、放射性物質の環境放出を早く発見できるように、県では空気中の放射性物質のモニタリングも強化しています。

記録的な渇水時に台風が来ると底質の泥が巻き上げられるのではないか?

取水制限がなされ水道水の濃度が管理目標値を上回ることはありません。

ダムにはまだ放射性セシウムが流入するはずではないか?

環境中の放射性物質の挙動の予測に関してシミュレーションする研究がなされるとともに、それを検証するためのモニタリングが継続されています。

原水の濁度が増加するのはダムに流入する水量が増加するからか?

降雨時には、ダムから放流された水が取水堰に到達するまでの間に木戸川に濁流が流れ込みことによります。

出典

楢葉町除染検証委員会.楢葉町除染検証委員会.第二次報告書(平成27年 3月 5日) 平成27年度 原子力災害影響調査等事業 (放射線影響に関する相談員の支援拠点事業)報告書

浪江町の復興に向けた要望書

飲料水の安全と安心の確保

高濃度汚染地域を水源としているため、安全と安心確保のための放射性物質除去設備を国の責任のもと整備すること。
また、国の責任で井戸を試掘するなど生活用水の安全を確保すること。

出典

浪江町議会.浪江町の復興に向けた要望書(平成27年4月16日)

関係機関による連携した取り組み

小山浄水場が供給する水道水の現状と安心に向けた取組について

モニタリング

連続サンプリング

水質放射能自動測定システム

福島工業高等専門学校との地域連携協定による河川の水環境調査

かじか通信

検出限界を下げた測定例(いわき市)

水道水の放射性物質の測定結果について
「水道水の3か月分濃縮による放射性物質の測定について」は、平成26年6月から新たに公表に加えたものです。測定結果がND(不検出)と続いていることから、さらに精度を上げ0.001ベクレル/キログラムまで測定したものです。

検出限界を下げた測定例(秋田放射能測定室)

【濃縮】2016年4月採取 東京都練馬区 水道水【45L】

   
母親 他の対策コストを圧縮して、測定コストを増やすと、測定の質を向上させて、小さい値まで検出できるようになるけど、それで対策が変わるわけでもないので、だからどうしたのと思ってしまう…。別のことに力を注いだ方がよいように思う
アオイ 原発事故前の放射能調査研究事業に関する議論のようですね。各基礎自治体でどうすべきかは、そこの住民で決めるしかないと思う
エミ 地域での対応では意義を持つこともあります。研修フォローアップニュースには、県の保育士対象研修を受けて保育所に戻った方が、市と感情的な対立を持ちながら、熱心に放射線対策をなさっていた職場の同僚と話が合わなくなってしまって、専門機関に援助を求めて、関係者間での、関係の改善が図られた例が示されています
母親 測定も1つの手段に過ぎないということですね。目的のためにどのような手段をとれば良いのか考えられると良いと思う

国への要望

双葉地方水道企業団

復興大臣並びに環境副大臣へ要望書を提出

対策推進のインフラ整備

福島再生加速化交付金制度

ベクレルとシーベルト

   
エミ ダムの底のBqとSvの関係をどう説明するのがよいかしら?
母親 ダムの底質の放射性セシウム濃度が高いのは事実…
アオイ 原発事故は環境に大きな影響を与えました…
母親 それを食べるとリスクが高いのも事実ですが、そもそも食べられない…
アオイ リスクが高いものがあるので、しっかりと管理しようとしています
母親 疑問の背景を考えていくことも必要そう…

底質のベクレルと水中のシーベルト

湖底に半径2m、深さ15cmの範囲で放射性物質を設置しています。

水中を放射線はどこまで飛ぶか?

水中を放射線はどこまで飛ぶか?

湖底から10mの高さまで

水中を放射線はどこまで飛ぶか?
1cm線量当量率[毎時マイクロ・シーベルト]を示しています。

水が空になった場合

空気中を放射線はどこまで飛ぶか?
1cm線量当量率[毎時マイクロ・シーベルト]を示しています。
湖底のCs-137の濃度を2万Bq/kgとしています。

ベクレルからグレイそしてシーベルトへ

パワーポイント資料
pdf資料

ふくしま復興ステーション

これまでの水道水放射性物質検査の結果

ダムと放射性物質とメディア対応

セシウムと将来リスク

モニタリング

厚生労働省

水道水等の放射能測定マニュアル

米国

National Primary Drinking Water Regulations

原子力災害後の環境工学の取り組み

ウクライナ

Water Quality Management of Contaminated Areas and its Effects on Doses from Aquatic Pathways

環境省

環境省除染チーム.河川・湖沼等における放射性物質に係る知見の整理(平成26年8月)

事故前のレベル

飲料水のCs-137の濃度は事故前では、0.054 mBq/Lとの値があります。
福島県 放射能測定調査 陸水 河川水 2010/09/15 2010 福島市 Cs-137 0.22 0.054 mBq/L

販売されている水道水

なみえの水
そうまの銘水
ペットボトル「東京水」

季節変動

   
母親 河川の溶存態Cs濃度は夏~秋高く、冬~春低いという季節変動が示されているそうです
エミ 夏から秋は雨量が多い為に、周辺から河川に流れ込む量が増えるからかしら?
アオイ 出水時は濁度が増えそうですね
エミ 増水時にできる流路上からの溶脱が考えられそうですね
母親 平水時の季節性の要因は解明されているのかしら?
アオイ 水量、水温(Cs吸着有機物の微生物分解速度や土砂との平衡状態の変化)、吸着競合元素の季節変動などが可能性として考えられるかもしれません(とのご示唆を専門の方から頂きました)




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更新日:2023年05月08日 
登録日:2014年03月11日 

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