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No. 189 清掃工場の飛灰で医療系核種が検出された場合

本当に検出されることはありますか?
その場合に、どう対応するのがよいですか?

記事作成日:2012/06/07 最終更新日: 2023/11/07

東京都内での検出例

東京二十三区清掃一部事務組合が2012年6月4日に公表したデータでは、
清掃工場でI-131が比較的高い濃度(=放射性セシウムによる汚染の管理の基準と比べられてしまいそうな程度の)で検出されています。

し尿由来ではないと考えられますか?

23区清掃事務組合では、し尿処理汚泥は最近は投入されていませんので、オムツなどに由来したものと考えられます。

その他の検出例

I-131の退出基準

放射性ヨウ素では、0.5GBqを超える投与量の場合には、放射線治療病室に入院させる必要があります(残存甲状腺破壊(アブレーション)を目的とする場合には 1.1GBq)。

放射線治療病室は、管理区域

放射線治療病室は、管理区域であり、排水や廃棄物は放射線管理の対象です。

放射線管理区域からの排水

排水は濃度限度を下回らないと公共下水には排出できません。
放射性の廃棄物は、放射性廃棄物として扱う必要があります(2012年4月から放 射線障害防止法ではクリアランス制度が導入されていますが、廃棄物業界からは ご理解をいただけないために、可燃物のクリアランスは認められていません)。

外来治療

退出基準を下回る場合には、放射線治療病室に入院させる必要はありません。
医療機関が包括的に安全評価を行っていますので、排水や廃棄物は、法令上は特別な管理は必要ないと考えられていますが、廃棄物に関しては、鋭敏なゲートモ ニターで放射線が検出されうるので、医療機関から廃棄物を排出する際に は、廃棄物処理施設でのゲートモニターで放射線が検出されない程度に減衰して いることを確認しています。

収集作業員の放射線リスクは小さく、管理は不要だと考えられています。
収集作業員からご要望があれば、医療機関側が対応することになるでしょう。

アメリカでの類似例

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嘔吐

おむつ経由以外では、嘔吐も可能性は否定できないかもしれませんが、わが国では、事例は少ないと考えられているようです。

食べ残し

外来治療を行う患者へのI-131投与後に、唾液の分泌促進のために種抜きではない梅干しを食べてもらうと、清掃工場にI-131で汚染した種が収集されると思われます。

退出基準の考え方

・放射線防護上、問題がない場合(=公衆や介護者が受ける線量が線量拘束値を 超えない場合)に、管理区域から退出できる。
となっています。
(いずれかの条件の一つではありますが、「各患者の状態に合わせて実効半減期やその他の因子を考慮し、」と通知には記述されています)

非放射性のおむつの廃棄物としての取扱

放射線防護上問題がない場合には、放射線治療病室に入院することはなく、その場合に、入院患者さんが管理区域外で使用した紙おむつは、事業系一般廃棄物となるか、感染性を考えて特別管理産業廃棄物などになると考えられます。

在宅でのおむつは多くのものが特別管理一般廃棄物にはならないとの説明例

日本衛生材料工業連合会

産業廃棄物として扱われている例

なお、⼀部の⾃治体で産業廃棄物として取り扱われている場合がある

汚染は検出可能か?

15 MBqのI-131では、距離1mで1µSv/h程度になりそうです。
NaIのサーベイメータがあれば見つけるのは容易かもしれません。

原発事故後の清掃工場での放射性セシウムの推移

清掃工場や下水処理場での放射性セシウムの濃度は、天候や廃棄物の性状(季節的にも変動します)などで変化すると考えられています。

下水汚泥焼却灰

焼却処理のために、脱水汚泥でI-131が検出されていても、下水汚泥焼却灰にはI-131は移行にしづらいと考えられます。

下水汚泥焼却炉からの環境放出

下水汚泥焼却炉には、湿式洗浄(スクラバ)あるので、そこで除去されると思われます。
焼却処理により汚泥から遊離したI-131が、そのまま大気中に放出されるかどうは、排煙の浄化装置に依存するでしょう。

廃棄物処理施設からの大気放出を検討した厚労科研の報告書

汚泥コンポスト

生活排水処理系汚泥のコンポスト化について