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No.198 局所排気設備

汚染した空気を浄化する装置は、必ず室外に排気する必要がありますか?

記事作成日:2012/06/28 最終更新日: 2022/09/07

室内の空気中濃度限度と排気中濃度限度

それぞれの濃度限度を担保する必要があります。
さらに防護の最適化を講じる必要があります。

局所排気設備で排気中濃度限度を下まわる浄化した空気を室内に排気してもよいですか?

局所排気設備での対応では、局所排気設備で排気中濃度限度を下まわる浄化した(=汚染していない)空気を室内に排気してもよいかどうか?という課題が出てくるのかもしれません。
排気中濃度限度が担保されている場合に、それが防護の最適化を講じているかどうかに帰着するのではないでしょうか。

施設からはまとめて排気すべき?

施設からまとめて排気する必要はそもそもないと考えられます。
フィルタの劣化を考えると分散した方が効率的でしょう。
放射線治療病室などでもできるだけ発生源近くで対処した方が効率的であると考えられるのではないでしょうか。

これまでの施工例

教科書では局所排気設備の記述がまだないようです。
ドラフトチャンバー、準備室用のフードの中で試薬等を取り扱い、その排気はダクトに接続するという形態で施工されているのが実態であるようです。
準備室で試薬を取り扱う設備として天蓋のフードを設け、換気扇で排気設備に排気する施工例は今のところは確認されていないようです。
研究施設では、換気扇で排気設備に排気するところを外側から覆い、見かけ上、連結しているようにしている例があるとの情報があります。

直接連結した場合の問題点候補

医療機関のRI検査施設の準備室で、フードから排気設備に直接連結すると、キャビネット内の気圧が変化し、本来の性能が発揮されないという危惧があるかもしれませんが、業界などでの警告は見当たりません。

これが問題である場合の解決策

・作業者が汚染した空気を吸わないようにフード内には顔を入れない構造
・フードと排気設備を直接連結するとフード(キャビネット)内の気圧が変化し、本来の性能が発揮されない
・換気扇で排気設備に排気する
・あるいは局所排気設備で十分に空気を浄化する

他の法令との関係

薬事法(現薬機法)

医療法施行規則第三十条の八と全く同じ規格ではありませんが、放射性医薬品の製造及び取扱規則でも廃棄物詰替施設に関して、排気設備の連結規定があります(第三条の二)。

薬事法(現薬機法)

電離則では、「排気又は排液がもれるおそれのない構造」となっています(第三十四条 )。

空気の放射能汚染が課題となっていない場合

気体状の放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物のひろがりを防止することが目的である場合には、排気設備に連結する必要があるとされています。

準備室にフード、グローブボックス等の装置が設ける場合でも、気体状の放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物のひろがりを防止することが目的ではなく、別の目的であれば、排気設備に連結する必要は必ずしもないでしょう。

既存の施設において後付でドラフトや排気装置を持つ装置のつなぎこみ

想定外の装置の設置は、空調バランスを崩すことが危惧されます。
排気量を事前に把握し、室内の排気の一部として設計し、専用のダクトを用意してつなぎこむことが一般的には想定されているとの意見が施工業者からあります。
後付の場合、ただ単にダクトにつなぎ込むと、キャビネット内の気圧が変化し、装置が止まってしまうことも考えられるそうです。

安全キャビネット

装置が陰圧がに保たれ、その排気は高性能フィルターを介して排気されるため、単独で室内に置かれても装置の使用に問題はないと考えるとの意見が施工業者にはあります。

安全キャビネットからの排気を別の排気設備に接続する場合や建物外にまとめて排気する場合

既存の室内の排気口付近に天蓋フートとしての囲いを儲け、間接的に安全キャビネットの排気を吸わせるという、間接的な接続であれば、その問題(安全キャビネットがバランスを崩して止まってしまう)が避けられるとのアイデアがあります。

連結とは?

直結していないと連結していると言えないかどうか?

直結していないと連結していると考えられるような技術的な裏付けがあり、業界などでその考え方が標準化されており、国際的な規格とも整合性がとれているかどうか?

連結が間接的であるために室外に漏れる空気中の放射性物質の量は測定でも評価できるでしょう。

感染症対策とのトレードオフ

陰圧にすることは汚染物の拡散防止には有用ですが、感染症のリスクを高めることが考えられます。

COVID-19対策での経験から

COVID-19対策で簡易的に陰圧室に改造した例があります。
病室内の排気設備
病室内の排気設備

空気中の濃度の決定要因

空気中の放射性物質の濃度は、患者への投与量、病室の容量(容積)、換気量、室内での吸着捕集除去量などで決定。

ポイント

・換気ダクトに関しては、局所的な範囲内での飛散が想定されるなら、そこを集中的な排気ゾーンにすると効果が高い。
・部屋全体への拡散の場合だと、最初だけ急速排気をする手もあるかもしれない。

現状を踏まえた対応案

①一般病室は最低でも2回/h以上の機械換気や空調による給気ができるように設計しているはず。
自然換気のみの病室は考えにくい。窓開けなどの自然換気を使うと気流制御ができなくなる。
放射性物質の場合は、確実に気流制御と濃度制御を行う必要があるのではないか。
②循環式(レタン式)の中央式空調が入っている場合は、該当室だけレタンを止めで、全量排気するようにする。
③一般病室の陰圧化は外乱に影響を受けにくくするため「排気量確保+静圧が高い装置」が重要。
風量が大きな装置よりはむしろ静圧が強い装置が必要。
④部屋の改修ができるならダクト式の換気装置がよい。
⑤除去フィルターは効果があるが快適性確保なども考えて総合的に判断する必要がある。

その他の考慮点

室内の風量など快適性確保。