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No.20 無線スイッチによる診療用X線装置の操作

「無線スイッチ」を利用する診療用X線診断装置が開発された背景について教えてください。

記事作成日:2011/01/05 最終更新日: 2018/06/18

「無線スイッチ」は院内回診用移動型X線装置に組合せて使用することを目的に開発されたものです。このため撮影は主にベッドサイドになります。撮影時に操作者が散乱線の影響をできる限り避けるためベッドからの距離をとる場合や、患者さんを抑えながら撮影する場合等、ハンドスイッチで撮影できない場合に使用することを想定しています。なお、医療用エックス線装置基準でハンドスイッチのコードはX線管焦点から2m以上距離をとることが規定されていますが、「無線スイッチ」は約7mの距離をとることができます。

関連FAQ

「無線スイッチ」では、診療用X線装置の何を制御しているのでしょうか?

撮影用ハンドスイッチの一段目(READY)と二段目(X−RAY)を遠隔操作します。また、高圧コンデンサーへの充電開始(コンデンサ‐式のみ)、コリメータランプの点灯も制御します。更に、最新のものでは管電圧と実効稼働負荷(mAs)の設定値の表示と、その変更ができます。

「無線スイッチ」で誤操作は起こるのでしょうか?

送受信周波数を2チャンネル有しているので、ノイズの影響がある場合はノイズの影響の少ないチャンネルを選択して切り替えることができます。
また、「無線スイッチ」同士の混信については10種類のIDコードを設定し、同一のIDコードのX線装置と「無線スイッチ」の組合せのみを通信可能としています。更に、最新の「無線スイッチ」ではこれらに加えて、X線装置と操作器である子機との間で動作制御用IDコードを送受信することにより動作可能としています(同一周波数帯の電波を受信してもこれらのコードがないと動作しません)。
このため、外来電波と確実に区別することができ、ノイズで誤動作することはありません。

誤作動例

移動型エックス線撮影装置の遠隔操作に関する必要性の検討

薬事承認の過程では、担当課とどのような議論がされたのでしょうか?

平成3年10月に医用機器開発課から、装置の安全性について質問がありました。
それに対し日立メディコは、次のような文書で回答しています。
(1)混信を避ける手段
(A)外来ノイズに対して
送受信周波数を2チャンネル有しておりノイズの影響の少ないチャンネルを選択して切り替えることができる。
(B)「無線スイッチ」どうしの混信に対して
IDコードを設定し、同一のIDコードのX線装置と「無線スイッチ」の組合せのみ通信可能としている。同一施設に2台以上納入された場合は、事前にIDコードを異なるものに設定し、混信を防ぐ。
(2)その他安全に対する配慮
「無線スイッチ」の操作スイッチは、押している間のみ信号が伝達されるデッドマン方式としている。送信中に通信不能領域に入った場合は、自動的に送信を停止し、X線装置の動作を中断して送受信不安定による誤動作を防ぐ。

他にこの装置に関係する法令はどのようなものがありますか?

電波法の第六条(免許の申請)、郵政省令第三十七号(特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則)があります。開発された装置は、免許のいらない無線局の規定に基づいて設計されています。

放射線診療において「無線スイッチ」を安全に使うには、どのような配慮が必要になると思われますか?

X線装置は患者さんを監視しながら操作をすることが原則ですから、患者さんとその周囲の状態を常に監視し、安全を確かめながら撮影をする必要があると思われます。

薬事法(現薬機法)と医療法で、それぞれエックス線装置の防護基準を定めているのは何故でしょう?

薬事法(現薬機法)と医療法では、それぞれその法律の目的が異なります。薬事法(現薬機法)により装置の安全性が担保されても、実際に医療機関でその装置を安全に使うためには、医療法の規制も満足させる必要があります。
なお、診療用X線装置の防護基準に関する医療法と薬事法(現薬機法)の規制はこの度は法令改正で統一されました。
しかし、それぞれの法律の目的が異なるためにその考え方は同じではないと考えられます。

医療放射線防護連絡協議会の『医療領域の放射線マニュアル*2001*』では、無線で操作するタイマスイッチは、外部からの電波で誤作動の起きる恐れがあり、また、X線装置は患者を監視しながら操作することが原則であるため、その使用は認められないとあります。
これはどのような経緯があったのでしょうか?

歯科診療においては、かつて、歯科医師が別の患者を治療しながら、患者を十分に観察しないで無線スイッチを操作することがありうるものと想定されていました。
その一方、当時の無線操作は誤動作を起こす可能性があると考えられていました。また、無線スイッチを使った場合に、十分な安全性が確保できない恐れがあるとされていました。
このため、日本歯科放射線学会・放射線防護委員会編集『歯科エックス線防護と管理』では、無線スイッチを用いた装置を認めるべきではないという見解が示されていました。
『医療領域の放射線マニュアル*2001*』作成では、安全性が確保されたものについては、その用途を限り、使用の際の注意事項を明らかにした上で無線スイッチの使用を認めることを検討すべきだとの意見がありました。
しかし、特に、現場やメーカーからの要望がないとして、日本歯科放射線学会・放射線防護委員会の見解をそのまま記載することになりました。

放射線診療において、この装置を医療法上も問題なく使うためには、どのような手順が必要でしょうか?

放射線機器の承認等は薬事法(現薬機法)で規制されています。一方、無線スイッチを使った診療用X線装置の使用は医療法では想定されていないものと思われます。このため、薬事承認時の考え方や他の無線操作を使った医療用具の安全確保策等を確認した上で、特に実際に使用する際の安全性の確保を中心に医療法上の取扱いについても検討する必要があると思われます。その際には、無線スイッチを使った放射線診療が安全に実施されるように、その安全取扱いガイドラインを明らかにする必要があるでしょう。

参考文献

日本歯科放射線学会・放射線防護委員会編集.歯科エックス線防護と管理.日本歯科医師会雑誌.42(5), 532-538, 1989

この記事の出典

放射線管理のQ&Aのコ−ナ−.無線スイッチによる診療用X線装置の操作について.医療放射線防護NEWSLETTER

参考情報

リモコン付き電気ストーブの誤作動について(PDF)

スイッチの不具合による過剰照射

篠原 照彦.胸部集検時におけるX線誤照射(第11回「医療放射線の安全利用研究会」フォーラム緊急報告).医療放射線防護NEWSLETTER.(29),9-15,2000

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