最近の装置は、フィルターが厚く、線質が硬くなっているために、遮へい体での透過割合がより上がっているのではないかと思います。だとすると、一次ビームのシールド透過に関する空気カーマ透過率は、過小評価されているのではないでしょうか?
188号通知(医政発0315 第4号通知に置き換わっています)に従うと、
空気カーマが174μGy m2/mAs(120kVで160 μGy m2/mAs、130kVで190 μGy m2/mAs)
透過率が0.24
であることから、
透過したエックス線の空気カーマ(*1)は、
42 μGy m2/mAs
となるようです。
(線源を点とし、ビームサイズを鉛シールド位置で1×1cmとした場合)
フィルタ | ||||
---|---|---|---|---|
Al(mm) | 0 | 2.5 | 3 | 2.5 |
Cu(mm) | 0 | 0 | 0 | 1.9 |
シールド前の空気カーマ(*)(μGy m2/mAs) | 2170 | 171 | 155 | 12.3 |
透過割合(EGSで計算) | 0.20 | 0.35 | 0.37 | 0.63 |
透過したエックス線の空気カーマ | 420 | 60 | 57 | 7.8 |
(線源を点とし、ビームサイズを鉛シールド位置で20×20cmとした場合)
フィルタ | ||||
---|---|---|---|---|
Al(mm) | 0 | 2.5 | 3 | 2.5 |
Cu(mm) | 0 | 0 | 0 | 1.9 |
シールド前の空気カーマ(*)(μGy m2/mAs) | 2170 | 171 | 155 | 12.3 |
透過割合(EGSで計算) | 0.29 | 0.39 | 0.40 | 0.64 |
透過したエックス線の空気カーマ | 630 | 66 | 62 | 7.9 |
このように透過割合が通知の表では過小評価されていると考えられることから、一次シールドを透過した一次ビームの線量が過小評価されることがあるようです。
このような現象は、加藤秀起先生らによっても、指摘されています(*2)。
ただし、2次シールドの透過率などが安全側に設定されているため、結果としては、安全側評価になることが知られています。
より慎重に評価するには、NCRPのリポート147に示された方法を用いることなどが考えられるでしょう。
(*1)
単位実効稼働負荷あたり(IPEM Report 78を用いて計算)
(*2)
加藤秀起.コンクリートおよび鉛遮蔽体に対する診断領域X線の実効線量透過率.JSRT誌.59(8),965-975,2003
能登 公也.遮へい計算への応用(テーマ:シミュレーションを活用しよう)