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No.241 壁が動くX線診療室(分割利用が可能なAngio―CT装置)

 血管造影装置と同じ患者寝台を用いてCT撮影が可能なシステムは、カテーテルを挿入したまま患者さんを動かさずに、より高精度なIVR(Interventional Radiology)を短時間で安全・確実に行えることから広く利用されています。これをさらに発展させ、血管造影装置とCTをそれぞれ単体に分割して利用できるよう工夫した臨床利用例の報告があります 。この法令適用を考えます。

記事作成日:2014/02/26 最終更新日: 2019/06/25

通知改正で対応が図られました

医政発0315第4号

エ 可動壁で隔てられた2つの室にそれぞれエックス線装置を設置し、それぞれの室で異なる患者の診療を行い、必要に応じて可動壁 を開放し1つの室のエックス線装置を他の室に移動させ同一室に おいて2台以上のエックス線装置を使用する場合にあっては、アからウにおける構造設備の基準等を満たすとともに、次の(ア)から(ウ)に掲げる点に留意すること。
(ア) エックス線装置を設置した2つの室をそれぞれ独立したエックス線診療室とし、それぞれの室について規則第30条の4の 規定に基づく構造設備の基準を満たす必要があること。
(イ) エックス線装置の使用中は2つの室を隔てた可動壁を開放できない構造とすること。
(ウ) それぞれの室にはいずれの室のエックス線装置を操作する場所も設けないこと。

実情

千葉県がんセンター

Angio-CT

一つのエックス線診療室として扱う場合の課題

1)一つのエックス線診療室で複数の患者を同時に診療できない。

2)一つのエック線診療室に複数のエックス線装置を設置するには、同時曝射防止装置を設ける必要があること。ただし、血管造影後のスムーズなX線CT検査を行うには、X線CT装置の立ち上げを迅速に行えるようにしておく必要がある。

3)エックス線診療室の大きさが変わることは想定されていない。

基本的な考え方

1)放射線防護以外にも全般的な医療安全確保が欠かせない。

2)このような事例を現行の規制が想定していない。

従って、このような事例の法令適用を考える際には、放射線防護の基本を踏まえてエックス線診療室が備えるべき放射線のシールド性能をきちんと確認することが最低条件となるでしょう。
また、このような使用法がより普及することが想定され、法令適用上の混乱が避けられないのであれば、医療現場での自主的なガイドラインを基に、規制上の整理がつくように法令を整備することも求められそうです。

解決に向けての考え方の案

1)装置を分割して、別の患者の診療に使うことがありえる場合には、エックス線診療室も分割して2つのエックス線診療室としても手続きし、CT- 血管造影を行う場合と併せて事前安全評価をしておく。

2)間仕切りを開けるか 、装置を結合させて、一つのエック線診療室に複数のエックス線装置が設置された状態になった場合には、同時曝射防止のためのインターロックがかかるようにする 。ただし、このインターロックは、血管造影直後は直ちにX線CT検査が行えるように工夫し放射線診療の安全性を確保する必要がある。また、間仕切りを開けて放射線診療を行う際には操作室のない側の扉から不用意に患者等が入らないように表示などを工夫する。

3)間仕切りを開けたまま室をCT- 血管造影のために利用する場合には、予期しない死角が生じないようにズーミング機能付の監視モニタを設置するなど工夫する。

厚労科研の報告書

平成29年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「新たな治療手法に対応する医療放射線防護に関する研究」(H28-医療-一般-014)(研究代表者:細野 眞)分担研究報告書「医療放射線防護の国内実態に関する研究」

文献

種山英記, 小原信也, 中島英樹, 石津誠,横山孝徳, 勢登和夫, 笹本和夫.検査室分割型IVR-CTシステムの構築とCT装置のスライス位置再現性の検討(会議録).日本放射線技術学会雑誌.60巻9号 Page1216(2004.09)
小原信也.IVR対応FPD Angiography-CT systemの効率的運用(会議録).日本放射線技師会雑誌.51巻10号 Page905(2004.10)
Kinoshita T, Yamakawa K, Matsuda H, Yoshikawa Y, Wada D, Hamasaki T, Ono K, Nakamori Y, Fujimi S. The Survival Benefit of a Novel Trauma Workflow that Includes Immediate Whole-body Computed Tomography, Surgery, and Interventional Radiology, All in One Trauma Resuscitation Room: A Retrospective Historical Control Study. Ann Surg. 2017 Sep 26. doi: 10.1097/SLA.0000000000002527″>

事例

隣の室にX線CT装置が移動する構造

社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院
済生会横浜市東部病院

救命撮影室でのIVR-CT

Hybrid Emergency Room System (HERS) 研究会
東京都立墨東病院
大阪大学医学部附属病院 医療技術部放射線部門 柳川 康洋.最先端の救急医療への試み!当院における CT 初療室の現状
新たなモデルケースの構築を目指しているそうです。

検査実績

平成 23 年 8 月の稼働以来,約 1 年間で約2000 件の検査をハイブリッド初療室で施行した.内訳としては,救急搬送された外来患者の CT が 1100 件(外傷患者で全身 CT 撮影を行った場合は,頭部と体幹部で 2 件とした), ANGIO が 50 件,フォローアップを含めた入院患者の CT が 700 件,ANGIO が 200 件であった.
Daiki Wada, Kazuma Yamakawa, and Satoshi Fujimi.First clinical experience with IVR-CT system in the emergency room: Positive impact on trauma workflow>
The Survival Benefit of a Novel Trauma Workflow that Includes Immediate Whole-body Computed Tomography, Surgery, and Interventional Radiology, All in One Trauma Resuscitation Room: A Retrospective Historical Control Study

IVR

北海道大野病院
国立病院機構岡山医療センター
関西医科大学.世界初の機構を持つ 2 ルーム CT 導入

同時曝射防止

JIRA.X線透視診断装置引渡しにおけるガイドライン(2012年10月19日Ver. 1.2 RPD-009)
8)2台以上のX線発生装置を1つの部屋に設置する場合は同時曝射防止(インターロック)を確認すること。