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No. 416 手術室での放射性医薬品の利用

センチネルリンパ節を核医学の手法を用いて検出する際の放射線管理を教えて下さい。

記事作成日:2020/07/02 最終更新日: 2023/07/06

ガイドライン

遠藤 啓吾.「センチネルリンパ節の核医学的検出法ガイドライン」について

E.放射線安全管理

1.放射線被曝について
99mTc 74MBq (2 mCi)が残存する患者に50cmの距離で1時間作業すると仮定すると手術医の被曝線量は約6 μSvとなる(資料1 自然界の 1日分の放射線量とほぼ同じ程度で,手術医・職員の安全性は担保されている).
2.標本,ガーゼなどの取扱いについて
手術標本,血液,ガーゼなどの取扱いによって受ける放射線被曝は無視できる量である.ただし手袋を着用し慎重に取り扱うこと.
F.おわりに
本法を実施する施設により事情が異なるので,本ガイドラインを基準として,それぞれの施設に適したガイドラインを作成することが望ましい.

通知

病院又は診療所における診療用放射線の取扱いについて医政発0315第4号(平成31年3月15日)
(11)診療用放射性同位元素を手術室等において一時的に使用することについて
診療用放射性同位元素を手術室において一時的に使用する又は「集中強化治療室若しくは心疾患強化治療室において一時的に使用する」とは、手術室等における医学的な管理が必要とされる患者に対して、診療用放射性同位元素の一時的な使用が必要かつやむを得ない場合に限定され、手術室等において管理する必要のない患者に対して使用することは認められないこと。
また、概ね次に掲げる適切な防護措置及び汚染防止措置を講ずる必要があること。

  • ア 使用時は、汚染検査に必要な放射線測定器を備え、使用後は、スミア法等の適切な方法を用いて、汚染の有無を確認すること。また、測定結果は記録すること。
  • イ 使用時は、汚染除去に必要な器材及び薬剤を備えること。また、測定により汚染が確認された場合は、汚染除去等を行うこと。
  • ウ 手術室等で診療用放射性同位元素により汚染されるおそれのある場所の壁、床面は、気体及び液体が浸透しにくく、平滑で腐食しにくい構造であること。
  • エ 他の患者が被ばくする放射線の線量が1週間につき100マイクロシーベルト以下になるような措置を講ずること。
  • オ 診療用放射性同位元素使用室を有すること。また、使用する診療用放射性同位元素の準備及び使用後の汚染物の処理は、診療用放射性同位元素使用室で行うこと。
  • カ 手術室等において診療用放射性同位元素を使用する場合、放射線防護に関する専門知識を有する医師、歯科医師又は診療放射線技師等の中から管理責任者を選任すること。また、手術室等における管理体制を明確にする組織図を作成すること。

医療機関での導入事例

新谷 悟, 矢野 淳也, 中城 公一, 栢原 浩彰, 寺門 永顕, 中原 裕二, 大西 詔子, 三原 真理子, 日野 聡史, 浜川 裕之.核医学的検出法によるセンチネルリンパ節生検実施までの経緯と現状

…特に手術部の説明に難渋した.すなわち,「手術につきたくない」「手術室全面にディスポのシーツを貼る必要はないのか」,「センチネルの手術の後は1日手術室を使わせない」などの放射線同位元素(法令用語は放射性同位元素。実際は放射性同位体)を使うことに対する過剰な反応としかとれない発言や,麻酔器具,手術器具の汚染や,手術に伴う血液,尿,ゴミについてどうすべきか,といった点が問題として挙げられた。

実態調査

センチネルリンパ節シンチグラフィに関する学術調査報告 : 乳がんセンチネルリンパ節シンチグラフィについて(アンケート報告)對間 博之, 安藤 猛晴, 河村 誠治

ガイドライン整備時の検討

山田 正人.【センチネルリンパ節生検の実際】手術室の放射線管理.核医学技術.21巻3号 Page177-179(2001.09)
遠藤 啓吾.「センチネルリンパ節の核医学的検出法ガイドライン」について.医療放射線防護 NEWS LETTER 2000.6 No.28

遠藤 啓吾(群馬大学 核医), 織内 昇, 浅尾 高行, 桑野 博行.Sentinel Node アイソトープによるセンチネルリンパ節の検出とその安全性.外科.63巻7号 Page830-834(2001.07)

Abstract:欧州で放射性同位元素(RI)を用いるセンチネルリンパ節検出の優れた臨床成績が報告され,我が国でも乳癌,消化器癌などで注目されている.本法はRIを局所に投与し,手術場にてガンマプローブを用いて検出するなど,これ迄の核医学検査と異なる.幸い投与するのが少量の99mTcコロイド製剤なので,患者,病院職員,公衆にも安全な検査で,放射線管理は容易である.しかし関係者に十分な説明を行い,理解の下に本法を実施することが望ましい。

厚生省医薬安全局安全対策課.医療放射線管理.センチネルリンパ節の核医学的検出法によるナビゲーション 現状と将来展望 行政の立場から.核医学.37巻5号 Page474(2000.09)

 医療機関内で使用される診療用放射線については,医療法により,その使用場所,必要な構造設備などについて定められており,その上で,学会等が作成したガイドラインを遵守し,さらに安全性に配慮して実施する必要がある.
 センチネルリンパ節の核医学的検出法に使用する診療用放射性同位元素(放射性医薬品)は,医療法施行規則第30条の14により,診療用放射性同位元素使用室で使用することとなっているが,手術室において一時的に使用する場合にあってはこの限りではないこととされており,医療法に定められた範囲で安全に実施することが求められている.
 特に,本法を実施するにあたっては,手術室における診療用放射性同位元素によって汚染されたものの適切な管理,汚染除去および廃棄物処理について,注意が必要であり,また一方で,用いられる診療用放射性同位元素が静注用のものであって,適用外使用となる場合には,患者への説明の実施等,十分な配慮が求められる.
 こうした状況に留意の上,センチネルリンパ節の核医学的検出法が安全に実施され,適応となる患者にとって有益な治療法が選択されることが,今後期待されている.

関連した法令適用上の議論

No. 353 診療用放射性同位元素の「使用」の定義

厚生労働科学研究

平成 15 年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)研究 課題:「診療用放射線の防護規制に関する緊急特別研究(H15-特別-022)」 総括研究報告書

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