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No.181 隣り合う放射線使用室間の遮へいの確認

X線診療室が隣り合う場合にX線診療室内の放射線の量を計測する必要はありますか?

記事作成日:2011/11/10 最終更新日: 2019/09/09

評価が不要である理由は?

X線診療室内に滞在する患者や放射線診療従事者が隣り合うX線診療室から受ける放射線の量を評価する必要がない場合を除いては、評価が不要であるとは考えられないのではないでしょうか。

リニアック室と密封小線源室が隣り合っている例

リニアックと小線源

法令の根拠

放射線障害が発生するおそれのある場所の測定

第三十条の二十二 病院又は診療所の管理者は、放射線障害の発生するおそれのある場所について、診療を開始する前に一回及び診療を開始した後にあつては一月を超えない期間ごとに一回(第一号に掲げる測定にあつては六月を超えない期間ごとに一回、第二号に掲げる測定にあつては排水し、又は排気する都度(連続して排水し、又は排気する場合は、連続して))放射線の量及び放射性同位元素による汚染の状況を測定し、その結果に関する記録を五年間保存しなければならない。
一 エツクス線装置、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用放射線照射装置又は放射性同位元素装備診療機器を固定して取り扱う場合であつて、取扱いの方法及びしやへい壁その他しやへい物の位置が一定している場合におけるエツクス線診療室、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用放射線照射装置使用室、放射性同位元素装備診療機器使用室、管理区域の境界、病院又は診療所内の人が居住する区域及び病院又は診療所の敷地の境界における放射線の量の測定

2 前項の規定による放射線の量及び放射性同位元素による汚染の状況の測定は、次の各号に定めるところにより行う。
一 放射線の量の測定は、一センチメートル線量当量率又は一センチメートル線量当量について行うこと。ただし、七十マイクロメートル線量当量率が一センチメートル線量当量率又は一センチメートル線量当量の十倍を超えるおそれのある場所においては、七十マイクロメートル線量当量率について行うこと。
二 放射線の量及び放射性同位元素による汚染の状況の測定は、これらを測定するために最も適した位置において、放射線測定器を用いて行うこと。ただし、放射線測定器を用いて測定することが著しく困難である場合には、計算によつてこれらの値を算出することができる。
三 前二号の測定は、次の表の上欄に掲げる項目に応じてそれぞれ同表の下欄に掲げる場所について行うこと。
項目 場所
放射線の量 イ エツクス線診療室

放射線防護の観点からの検討

測定の目的、意義

・エツクス線診療室における放射線の量の測定は、放射線診療従事者やX線診療を受ける患者を防護するために必要なもの
・エツクス線診療室における放射線の量は、X線診療室の外側や管理区域の外側の線量を推計するための重要なパラメータ

エツクス線診療室の放射線の量の決定因子

・X線装置の単位実効稼働負荷あたりの出力
・X線装置から放出される光子のエネルギー分布
・X線装置の使用状況
・防護衝立等の性能
・測定する場所とX線装置等の幾何学的条件

・測定するX線診療室外の線源条件
・その線源のシールド

エツクス線診療室における放射線の量の測定が免除されうると考えられる条件

・放射線診療従事者が照射中にX線診療室に立ち入らない場合
・装置の出力は適切に管理されていて患者の防護に問題がない場合
・X線診療室外の測定が適切になされていてエツクス線診療室における放射線の量を把握する必要がない場合

隣りのX線診療室等からの放射線の量の確認の必要性

・患者が適切に防護されているかどうかを確認する
・放射線診療従事者等の作業環境管理
・放射線診療の品質保証
BGの線量率が高いとノイズの原因になる。
リニアックや核医学施設からの光子等の制御がなされているかを確認する。

・施工後に壁のシールド機能が適切に評価されている。
・シールド機能の経年劣化がないことが確認されている。
・隣室の線源条件に変更がないことが確認されている。

隣りのX線診療室等からの放射線の量の確認の目的

・少なくとも1mSv/weekを超えていないこと。
→室内での線量が1mSv/weekを超えていない場合は、隣のX線診療室からの漏えい線量を評価する必要性は乏しい。
・診療上、支障のない程度であること。

X線診療室間の遮へい

エックス線診療室の間の壁を1.5mmの鉛や15cmのコンクリートと考えると、
・1.5mmの鉛だと0.2%に減弱
・15cmのコンクリートだと0.3%に減弱
なので、このシールド能力の壁だと、隣の室内の線量が300 mSv/weekを超えるかどうかが限度との境目になりそうです。

一方、その診療室の室内の線量が同程度であるとすると、鉛1.5mmで、見つけるべき、隣の室からの漏えいと同程度になります。

多くの場合に考えられる状況

そもそも使用室内に人が滞在する間に使用室内の線量が1mSv/週を超えることはないのではないでしょうか。
その場合は、測定された線量のうち、隣の室から寄与を明らかにする意義は乏しいのではないかと考えられます。
なお、それぞれの使用室での線源使用状況情報を使うと壁の劣化も一定程度は評価可能であるとも考えられます。

治療病室間のしゃへい

治療病室間は、医療法では、シールドが薄くてもよいとしています(施行規則第30条の12)。

まとめ

エックス線診療室が隣り合う場合や診療用高エネルギー発生装置使用室等が隣接する場合に、室内に多量の放射線が飛んできてもよいとは考えられないので適正に管理するということになるはずです。
もっとも室内の散乱線の量が限定的なので、多くの場合は隣の室から漏洩線のみを評価する意義は乏しいと考えられそうです。