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No.219 散乱線を計算するための照射野の大きさ

散乱線を計算するための照射野の大きさは、回転中心と検出器の位置のどちらで設定するのが適切でしょうか?

記事作成日:2012/11/05 最終更新日: 2023/11/02

まとめ

改正通知での照射野サイズの扱い

H26.3.31に改正された通知では、参考例において、照射野を与える位置を明確にするために、NCRPのリポート147に添い受像面上の照射野と表現しています。

放射線防護上の照射野サイズの扱い

散乱線の評価における照射野の大きさの設定は、線源から散乱体への距離の設定とセットで考えることができます。

経緯

元のNCRPリポートでは、エックス線管から1mの距離での照射野の大きさとされています(固定した条件で散乱係数などを定義しているため)。

一方、NCRPのリポート147では、イメージレセプターの位置でパラメータを与えるとあります(4.1.7.2)。

また、このリポートの元の論文では、照射野のサイズは(患者入射面で規定しているが(NCRP49でも)、フィールドサイズが得られた線源からの距離もパラメータとすればどこでもよいとし、診断領域ではイメージレセプターの大きさを採用するのが簡便としています。

いずれにしても、よほど大きな照射野ではない限りは、散乱体に入射する放射線の強度あたりの散乱線の強度は、散乱体に入射する際の照射サイズに比例すると考えられます。また、実用上は、検出器での照射野サイズを採用することは適度な安全側評価につながるでしょう(d3の設定にも依存しますが)。

X線CT

X線CTで、入射面と検出器までの距離に差があり、検出器での照射野サイズを使うと過度に安全側になる場合には、非安全側にならない範囲で合理的に設定してもよいでしょう(その場合には、d3を散乱線発生を想定したところまでの距離とすることが考えられるでしょう)。

改正前の設定

・改正前の188号通知(医政発0315 第4号通知に置き換わっています)の図ではX線管焦点から被写体中心までの距離をd3としていました。

その設定の課題

・この設定は、元の文献と違いがありました。
・また、被写体中心の定義が明確ではないという現場の方々ご意見が研修会などで寄せられていました。

どう改正されたのか

・このため、照射野のサイズを受像面で与えることが明示されました(もっともここでの計算はあくまでも参考例だと考えられます)。

受像面で実際に散乱しているのか

・照射野のサイズを受像面で与えるのを明示したことは、放射線が受像面で主に散乱しているということを意味するものではなく、安全評価における計算モデル上の整理であると考えられます(面積線量計などでの散乱が多く、オーバーテーブルでの使用で術者が受ける線量として、そこからの寄与が大きい場合には、作業環境管理上は、その評価も望まれるでしょう)。

安全側の設定例

・エックス線管焦点から回転中心(被写体中心)までの距離をd3として、受像面における照射野を用いて計算すると安全側になるでしょう。

より安全側にするため

X線CTのように、d4が変化する場合に安全側に設定することも考えられるでしょう。
もっとも多くの計算書では、d3と照射野サイズの組み合わせが安全側に設定されていて、散乱線の線量が安全側に推定されていることがH26年度の厚労科研(細野班)でも確認されています。

改訂版 医療放射線管理の実践マニュアル

スライス厚×FOVでも提示されています。
スライス厚(slice width)は、撮影領域の中心位置における一つのスライスの厚さ方向の長さを示しています。

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    • 迷路散乱エックス線、中性子線の線量計算で、評価点から見える漏洩線の線量評価に関する散乱面積の計算にミスがあり(保健所による確認時に気づかれていました)、評価点での線量が規制値をオーバーしてしまっていた。

まとめ

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