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No.249 散乱線の計算での散乱線発生点の設定

旧188号通知では、「被写体から遮蔽壁・・・」となっていた所が、新通知では、「撮影天板面での利用線錘中心・・・・」と改正されました。歯科で主に行われている、口内法撮影、パノラマ撮影、そして近年普及が著しい歯科用コーンビームCT撮影では、天板が有りません。新通知の文言では、散乱X線に対する遮蔽計算が出来ません。
医薬発第188号通知(医政発0315 第4号通知に置き換わっています)の文言をそのまま準用して、「天板」を「被写体」と読み替えても宜しいでしょうか?

記事作成日:2014/10/01 最終更新日: 2019/05/04

散乱線の計算での散乱線発生点の設定

設定により影響を受けるのは、

  • 散乱線の発生源での強度を決定する散乱体に入射する放射線の強度
  • 散乱線の減衰を決定する距離
  • 散乱線の発生源での線量を決定する散乱体に入射する放射線のビームサイズ

散乱線の量は、以下の要素で決定されます。

  1. (1) どこで散乱するか?
  2. (2) X線ビームのサイズ(散乱する場所での)
  3. (3) X線ビームの強度(散乱する場所での)
  4. (4) その他

このうち、(2)と(3)は、相反する性質を持ちます。
X線CTの場合、回転中心と受像面を比較すると、

  • X線ビームは、回転中心に比べて受像面は4倍
  • X線ビームは、受像面に比べて回転中心が4倍

となります。
このため、どちらを採用しても、散乱線発生点から一定の距離での散乱線の強度は変わりません。

安全側の設定例

エックス線管焦点から回転中心(被写体中心)までの距離をd3として、受像面における照射野を用いて計算すると安全側になるでしょう。

安全側の設定の課題

スループットが大きくなったX線CTをビル内の診療所で使う場合には、安全側に設定して計算すると、遮へいコストが大きくなることが考えられるでしょう。

課題となったのは歯科放射線での扱い

これらの距離の取り方が結果に与える影響は多くの場合、限定的だと考えられますが、例外は歯科です。将来的には、感度分析して、それぞれの要因の不確かさにどの程度配慮するかを考えてもよいのかもしれません。

「被写体」とした場合の問題?

被写体の厚さはどうするのか?装置に関係なく被写体の厚さを一定にするのか?よく質問されます。

これらの回答を調べると、

  • ・遮蔽が適切であるように判断して・・・・。とか
  • ・十分な余裕を持った遮蔽にするように努める・・・・。とか

曖昧な回答が多く困っているのが現場の状況です。

どこまで考えるか?

細かく考えると、考えるファクタの種類によっても、どの方向が安全かが変わってきます。例えば、被写体を厚くすると後方散乱が増加するが、透過する線量は減ります。このような素朴な疑問は、本院の研修を受けて頂くのがよいと思います。

照射野サイズの設定?

照射野の大きさについても良く聞かれます。被写体での照射野なのか?検出器面での照射野なのか?これらについても、もっと解りやすくすれば、良いと思います。

散乱線を計算するための照射野の大きさ

撮影台の天板

通知では、「撮影台の天板」との用例があります。

医療用エックス線装置承認基準の改正について

(平成一三年六月一一日)
(医薬発第六二二号)
(各都道府県知事あて厚生労働省医薬局長通知)

歯科領域のテキスト

新版 歯科診療における放射線の管理と防護では、線源ー被写体間距離は20cm、照射野サイズが1×15cmと設定されています(120ページ)。

散乱係数では、線源ー被写体間距離は安全側に設定されています。
照射野面積は入射面における面積に設定されています。

候補となる面

  • ・撮影天板面
  • ・受像面
  • ・被写体(の中心(散乱係数)、の放射線が透過する面(照射野サイズ))
  • ・その他

地方厚生局のこれまでの対応

遮蔽計算は、撮影天板表面で行うように指導していたので定着してきているそうです

各厚生局に提出される遮蔽計算は天板表面を使うようにしていますが、仮想被写体を設け適当な位置を取っているところもあるそうです。

被写体中心?

医薬発第188号通知(医政発0315 第4号通知に置き換わっています)の図では被写体中心になっています

ある意見例

その中心位置についての決め方で現場は迷う。マンモの時と、胸部の時、装置毎に被写体の中心を考えると混乱する。
一方、通常使用状態での天板位置であれば容易に理解できるのではないか。

NCRPの文書

NCRPの文書では、「受像面」(image receptor)が用いられている。

「撮影天板面」の問題点(?)

  • ・これまで国の通知では使われたことがない。
  • ・JISなどで示されていない。
  • ・撮影以外の透視にも適用することがわかりづらい(?)
  • ・その他

X線CT装置の場合の照射野

検出器でのビームサイズを照射野にしている例があります。
その場合のエックス線焦点から被写体までの距離は、照射野までの距離としてもよいと考えられます(この場合に、d3をエックス線管から被写体の中心とすると安全側になりすぎると考えられるので)。

そのようにしている例

日本アイソトープ協会.改訂版『医療放射線管理の実践マニュアル』
照射野は検出器でのビームサイズ、エックス線焦点から被写体までの距離は、回転中心までとし、安全側にしています。

Q.医薬発第188号通知(医政発0315 第4号通知に置き換わっています)でd2が以下のように変更されています。

旧d2:被写体からしゃへい壁の外側までの距離
新d2:撮影天板面での利用線錐中心からの遮へい壁の外側までの距離

また、照射野の大きさが以下のように変更されています。
旧F:照射野の大きさ
新F:受像面における照射野の大きさ

X線CTの場合新d2を受像器からの距離と考えると、
例えば、下方の階の線量を計算する際に、
下向き照射時を想定し、新d2を下向き照射時の受像器からの距離と考えると距離が短くなるため、再計算した結果、不適になりました。

追加工事を求めるべきでしょうか?
(あるいは照射野のサイズの評価面である、散乱体への入射面の位置を受像面に合わせるために焦点から遠ざけ、照射野の大きさを大きく設定した一方で、散乱体に入射する放射線の強度の設定を変えず、結果として散乱線の量が大きくなった場合の想定)

A.求める必要はありません(平成24年度の医療放射線監視研修でも扱っています)。

理解度チェックポイント
・距離や面積の表現が変更になったのは、距離の取り方がこれまででは安全ではなかったため?
→単に「被写体」だと位置が点で決まらないので(=被写体は厚みを持ち、可変)、明示して欲しいとの現場からのご意見に基づいています。
(従来の評価法が非安全側だったので改めたということではありません)

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d2の始点を評価点側の受像面にするなどして、計算結果が不適になり、追加工事が求められた事例があれば情報ご提供頂けないでしょうか。

評価する点

Shielding for Multislice CT Scanners

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