旧188号通知では、「被写体から遮蔽壁・・・」となっていた所が、新通知では、「撮影天板面での利用線錘中心・・・・」と改正されました。歯科で主に行われている、口内法撮影、パノラマ撮影、そして近年普及が著しい歯科用コーンビームCT撮影では、天板が有りません。新通知の文言では、散乱X線に対する遮蔽計算が出来ません。
医薬発第188号通知(医政発0315 第4号通知に置き換わっています)の文言をそのまま準用して、「天板」を「被写体」と読み替えても宜しいでしょうか?
設定により影響を受けるのは、
このうち、(2)と(3)は、相反する性質を持ちます。
X線CTの場合、回転中心と受像面を比較すると、
となります。
このため、どちらを採用しても、散乱線発生点から一定の距離での散乱線の強度は変わりません。
エックス線管焦点から回転中心(被写体中心)までの距離をd3として、受像面における照射野を用いて計算すると安全側になるでしょう。
スループットが大きくなったX線CTをビル内の診療所で使う場合には、安全側に設定して計算すると、遮へいコストが大きくなることが考えられるでしょう。
これらの距離の取り方が結果に与える影響は多くの場合、限定的だと考えられますが、例外は歯科です。将来的には、感度分析して、それぞれの要因の不確かさにどの程度配慮するかを考えてもよいのかもしれません。
これらの回答を調べると、
曖昧な回答が多く困っているのが現場の状況です。
細かく考えると、考えるファクタの種類によっても、どの方向が安全かが変わってきます。例えば、被写体を厚くすると後方散乱が増加するが、透過する線量は減ります。このような素朴な疑問は、本院の研修を受けて頂くのがよいと思います。
通知では、「撮影台の天板」との用例があります。
(平成一三年六月一一日)
(医薬発第六二二号)
(各都道府県知事あて厚生労働省医薬局長通知)
散乱係数では、線源ー被写体間距離は安全側に設定されています。
照射野面積は入射面における面積に設定されています。
各厚生局に提出される遮蔽計算は天板表面を使うようにしていますが、仮想被写体を設け適当な位置を取っているところもあるそうです。
その中心位置についての決め方で現場は迷う。マンモの時と、胸部の時、装置毎に被写体の中心を考えると混乱する。
一方、通常使用状態での天板位置であれば容易に理解できるのではないか。
NCRPの文書では、「受像面」(image receptor)が用いられている。
検出器でのビームサイズを照射野にしている例があります。
その場合のエックス線焦点から被写体までの距離は、照射野までの距離としてもよいと考えられます(この場合に、d3をエックス線管から被写体の中心とすると安全側になりすぎると考えられるので)。
日本アイソトープ協会.改訂版『医療放射線管理の実践マニュアル』
照射野は検出器でのビームサイズ、エックス線焦点から被写体までの距離は、回転中心までとし、安全側にしています。
旧d2:被写体からしゃへい壁の外側までの距離
新d2:撮影天板面での利用線錐中心からの遮へい壁の外側までの距離
また、照射野の大きさが以下のように変更されています。
旧F:照射野の大きさ
新F:受像面における照射野の大きさ
X線CTの場合新d2を受像器からの距離と考えると、
例えば、下方の階の線量を計算する際に、
下向き照射時を想定し、新d2を下向き照射時の受像器からの距離と考えると距離が短くなるため、再計算した結果、不適になりました。
追加工事を求めるべきでしょうか?
(あるいは照射野のサイズの評価面である、散乱体への入射面の位置を受像面に合わせるために焦点から遠ざけ、照射野の大きさを大きく設定した一方で、散乱体に入射する放射線の強度の設定を変えず、結果として散乱線の量が大きくなった場合の想定)
理解度チェックポイント
・距離や面積の表現が変更になったのは、距離の取り方がこれまででは安全ではなかったため?
→単に「被写体」だと位置が点で決まらないので(=被写体は厚みを持ち、可変)、明示して欲しいとの現場からのご意見に基づいています。
(従来の評価法が非安全側だったので改めたということではありません)
d2の始点を評価点側の受像面にするなどして、計算結果が不適になり、追加工事が求められた事例があれば情報ご提供頂けないでしょうか。
Shielding for Multislice CT Scanners