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No. 244 複合遮蔽での透過割合設定

複合遮蔽の場合、複合遮蔽としての透過割合は、それぞれの遮蔽体の透過割合の積を用いてよいですか?

記事作成日:2014/07/10 最終更新日: 2020/08/20

A君

2つの遮蔽体を組み合わせて使う場合に放射線の透過割合は、どう設定するのがよいのかな?

Bさん

このような場合ね。

スライド21

旧通知

スライド20

A君

コンクリートの前に0.1mm鉛をおいて0.4に減らした場合は、1cmのコンクリートでおよそ半分になるからだいたい1/5程度になるのではないかな。

Bさん

X線が遮蔽体をどの程度突き抜けるかは、エネルギーも関係するのじゃないかしら。

スライド22

A君

そうだった。最初の遮蔽体を透過するとX線が硬くなるから、次の遮蔽体は通りやすくなりそうだ。

Bさん

どの程度、変わりそうかしら?

A君

125kVのX線だとコンクリートで半分になるのは、硬くなる前はだいたい1cmだけど、硬くなった後は2cm程度必要になるのか。

Bさん

複合遮蔽では、それぞれの遮蔽体を通過するときの放射線の変化にも配慮が必要ね。

関連資料

『改訂版 医療放射線管理の実践マニュアル』p75

一次X線の利用線錐方向のしゃへいには、対向板に鉛が用いられ、その後のコンクリート等でしゃへいされている場合がある。
このような複合しゃへい体が用いられている場合は、それぞれの透過率を掛け合わせる乗積法で求めると過小評価されることがある。
したがって、この場合は、対向板のような一次しゃへい体によるX線のしゃへい効果は透過率を、その後のしゃへいは、一次しゃへい体で大幅に減衰した後なので、(大幅に減衰したX線の広いビームに対する)半価層または1/10価層を用いて計算する。

80kVのX線を1cmのコンクリート(密度2.35g/cm3)に照射した場合

通知に示された透過割合

そのまま照射:0.22
遮蔽体を透過した後0.36(半価層:14.7mm)

計算での透過割合

タングステンターゲットに80kVで加速した電子を衝突させ発生したX線を2.7mmのアルミニウムで濾過した場合(比較的細いビームを模擬)

そのまま照射:0.25
0.4mmの鉛を透過した後0.6

125kVのX線を2cmのコンクリートに照射した場合

通知に示された透過割合

そのまま照射:0.22
遮蔽体を透過した後0.51(半価層:19.7mm)

計算での透過割合

タングステンターゲットに125kVで加速した電子を衝突させ発生したX線を0.2mmの銅と1mmのアルミニウムで濾過した場合(比較的細いビームを模擬)

そのまま照射:0.30(コンクリートの比重を2.2g/cm3とすると0.32)
0.4mmの鉛を透過した後0.44(コンクリートの比重を2.2g/cm3とすると0.46)

考察

照射の幾何学的条件はビルドアップなどに影響する。
フィルタの条件は透過度に影響する。

トレードオフ

遮へい体の透過後の線量の決定要因

1.距離のファクタ
2.透過割合のファクタ(一次遮蔽も通過して硬くなるかそうでないか)
3.一次遮蔽も通過するかどうか
の組み合わせで計算することになります。
2と3はトレードオフになります。

ガントリ外の経路の一次遮蔽を通過させない経路を律速と考えた場合のピットホール

・一次遮蔽体での減弱の程度
・一次遮蔽を通過させた後のスペクトルの硬化による遮へい体の透過割合の増加
のバランスで大小関係が決定されることになります。

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