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No. 369 X線CT装置の遮へい計算

ビル診療所でのX線CT装置の設置で、事前放射線安全評価をより合理的に行うにはどうすればよいですか?

記事作成日:2018/07/19 最終更新日: 2024/01/31

NCRP Report.147の方法を用いることが考えられるでしょう。

日本放射線技術学会

X線CT室の漏えい線量計算マニュアル第1版2019

一次線束の放射線の考慮をしないのですか?

X線CT装置ではガントリが厚く一次線束の放射線を十分に遮へいすると考えられます。
CT機能を持つ装置でも一次線束の放射線の遮へいが十分ではないものは、この方法を使うことが適切ではありません。

X線CT装置とは?

別表3-15 : 全身用X線CT診断装置基準

X線CT装置から放出されるX線の線質は硬くないですか?

NCRP Report.147では、X線CT装置に対して硬い線質を考慮しています。

X線CTでの鉛の透過
硬くなる前のX線に対して管電圧120kVでの鉛2mmに対する透過割合は、X線CT以外では8.03E-4としています。
NCRP Report.147のX線CTでの管電圧120kVでの鉛2mmに対する透過割合は、この値よりも大きく設定されています。

コンクリート

X線CTでのコンクリートの透過
遮へい体を通過し硬くなった後のX線に対して管電圧120kVでのコンクリートの1/10 価層は64.3 mmとしています。
NCRP Report.147のX線CTでの管電圧120kVでのコンクリート64.3 mmに対する透過割合は、1/10よりも小さく設定されています。

実効稼働負荷ではなくDLPを変数として用いるのは何故ですか?

X線CT装置ではDLPの情報が容易に得られるからです。
なお、NCRP Report.147ではビーム幅を実効稼働負荷では考慮していないのでDLPの方が適切と説明していますが、従来の方法を用いた場合、一次線束はビームサイズを考慮しておらず、散乱線は散乱線が発生する散乱面積を考慮しているので、この説明は必ずしも論理的とは言えないと考えられます。

一次ビームも包括的に評価していることの説明案

従来の評価

  • 一次線、散乱線、X線管容器からの漏えいの3つの成分で評価

新しく提案している方法での一次線の扱い

  • 「散乱線」として包括的に評価

従来法との比較

従来法

  • 一次ビームは対抗遮蔽物で遮へい

鉛2.5mmで1.47E-4程度に減弱←これを見込まないことでどの程度安全性が確保できているか(*)?

  • その後のシールドの透過は安全側に見込む(スペクトルが固くなる効果を考慮)

新提案

一次ビームは、独立した成分として考慮せず、散乱線として包括的に扱う。非安全側にならないように散乱線によるガントリ遮へいは0.1とみなす。
その後のシールドの透過は安全側に見込む(スペクトルが固くなる効果を考慮)と本文にはありますが、「Table 2エックス線診療室しゃへい計算表」ではガントリで減弱した成分の透過力が高まることが考慮されていません。

(*)
散乱線分だと1/1,000なので、安全側になり得ますし、これまでの研究成果で測定との比較で安全側であることを確認済みとなっていますが、その想定を超える場合には、改めて検討が必要になると考えられます。

  • 距離のファクター
  • 硬くなることにより二次シールドでの透過の扱い

コンクリートの透過割合

X線CT室の漏えい線量計算マニュアル第1版の8ページのコンクリートの透過率は実効エネルギーはどのくらいを想定して決められたのでしょうか。通知の表3で見ると140 kVに近い透過率のように思います。

P8の透過率は120 kVの17 cmを補間により求めています。
2.1 g/cm3のコンクリ厚20 cmの120 kVの透過率を2.35 g/cm3の表から密度補正で等価厚が17.8 cmと計算されたので、安全側にみて少し薄い17 cmと想定して密度が2.35 g/cm3の表から補間で求めています。

厚労科研

H29年度の厚労科研の報告書(平成29年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「新たな治療手法に対応する医療放射線防護に関する研究」(H28-医療-一般-014)(研究代表者:細野 眞)分担研究報告書「医療放射線防護の国内実態に関する研究)にDLPを用いたX線CT装置の事前放射線安全評価法を掲載しています。

X線装置に関して、他の手技も含めてJIRAから発行される放射線安全評価のガイドラインに盛り込むことが計画されています。

参考

No.173 H22年度の厚労科研で示されたX線装置の遮へい計算の考え方

遮へいの工夫例

Mobile CT: Novel shielding and quantification of tertiary scatter
Matthew C DeLorenzo, Kai Yang, Dee H Wu, Weiyuan Wang and Isaac B Rutel. Comparison of computed tomography shielding design methods using RadShield

パラメータを見直す

Simpkinの方法

・空気カーマ
・透過率
・半価層
・散乱係数
をSimpkinの方法でより合理的に推計する。

ガントリの遮へいを合理的に設定する。

一次線が過大すぎる評価である場合に有効。

モデルを見直す

DLPなどを変数にしたNCRP Report No. 147の方法を用いる。
この方法はわが国への適用の方策を厚生労働科学研究細野班で弘前大学の大場さんがまとめています。

厚労科研の報告書で提案された方法

昨年度の厚労科研の報告書(平成29年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「新たな治療手法に対応する医療放射線防護に関する研究」(H28-医療-一般-014)(研究代表者:細野 眞)分担研究報告書「医療放射線防護の国内実態に関する研究)の報告書
X線装置に関して、他の手技も含めてJIRAから発行される放射線安全評価のガイドラインに盛り込むことが計画されています。

文献

Comparison of the CT scatter fractions provided in NCRP Report No. 147 to scanner-specific scatter fractions and the consequences for calculated barrier thickness
David John Platten. A Monte Carlo study of the energy spectra and transmission characteristics of scattered radiation from x-ray computed tomography

論文

A new shielding calculation method for X-ray computed tomography regarding scattered radiation

FAQ

DLP法では、「ビーム幅1 cm当たりの散乱係数」を用いています。ここでのビーム幅の評価位置をどう設定すれば良いですか?

NCRP Report147だと
In this Report, the peripheral phantom axis 1 cm below the surface is used as the reference axis. The scatter fraction per centimeter(κ) for the peripheral axis of the FDA (2003d) head and body phantoms has been measured and the following values were obtained:
となっています。

計算例

ビーム幅を1.2cmとしているようです。

品質管理用の照射も見込んでいる例

No.11 X線CT室からの漏洩線量

従来法の解説

鈴木 昇一, 浅田 恭生, 中井 隆代, 竹内 吉人, 木下 一男, 渡辺 信行, 古賀 佑彦.CT室の管理区域境界の遮蔽評価

歯科用CT装置

加藤 二久, 新井 嘉則, 岩井 一男, 川嶋 祥史, 杉原 義人, 桐村 晋.頭頸部用小照射野CT装置を使用するエックス線診療室画壁の遮蔽計算

検討のポイント

  • 一次線と散乱線の透過割合の違いは、一次線のフィルトレーションの違いにも依存するのではないか。
  • 単位実効稼働負荷あたりの一次線の空気カーマの量は一次線のフィルトレーションの違いにも依存するのではないか(この例では3.1 mmAlを想定)。

施設の建築の観点からのLCA

Gonzalo Sánchez-Barroso, Manuel Botejara-Antúnez, Justo García-Sanz-Calcedo, Francisco Zamora-Polo,A life cycle analysis of ionizing radiation shielding construction systems in healthcare buildings,Journal of Building Engineering,Volume 41,2021,102387

IAEAのORPASでの指摘例

S7: Suggestion: The license holder should consider developing shielding design procedures based on the realistic assessment of the actual practice.

The shielding calculation and requirements are not specific to the particular medical radiological facility.

JIRA

TR-0046 エックス線しゃへい計算マニュアル 2019年4月1日