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No.165 排水への混入割合

他の国では、患者への投与量に対して、排水への混入割合は、どのように設定していますか?

記事作成日:2011/03/10 最終更新日: 2024/04/18

EUでは、100% of administered activity (in patients), 30% (out patients)となっています(以下にリンク先を示す資料の16枚目)。

排水の放射線安全評価の対象労働者

10%を超える事例で排水の放射線安全評価で以下の方々も考慮しています(以下にリンク先を示す資料の11枚目)。
• Sewage workers
• Waste disposal workers

出典はEUのMediwasteのセミナーの資料です。
Management of radioactive waste arising from medical establishments in the European Union, Proceedings of a workshop on 16 and 17 February 1999
患者に投与された放射性核種は下水処理場に集まらないのですか?

国内での調査例

砂屋敷 忠, 星野 光雄, 井原 智, 垣内 詔二, 河原 泰人, 菊地 透, 佐々木 功, 中村 豊, 藤田 賢二.医療用放射性同位元素使用事業所における排水施設, 設備モデル

平成15年厚生労働省科学研究費補助金(医薬安全総合研究事業)「医療行為に伴い排出される放射性廃棄物の適正管理に関する研究」医療行為に伴い排出される液体状放射性廃棄物の合理的管理
《技術報告》核医学診療施設における放射線管理状況のアンケート調査
『核医学治療を行っている13施設では5施設が検出限界以下であった.一方,3施設が1%以上』であったとされています。
『排気/排水への放射性同位元素の混入率についての意見では,51%の施設で現状の法規制は厳し過ぎると回答』とされています。
実測値からの混入割合の評価では、『インビボ核医学検査のみを行っている施設では,すべての施設で混入率は0.01%未満であった.』となっています。

現場からの意見例

①医療サイドと研究機関では,使用する核種,使用方法等が異なるため,法令上差別化して欲しい.特に一般臨床病院では規制が厳しすぎる.17件
②排水設備への混入率および排気設備への飛散率は,実際上はもっと小さな値だと思う(根拠を示して欲しい).17件
『添付文書上は1%ということはなく、実際にも投与したうちの少なくない量が排泄されています。その一方で、この調査では、「排水中の放射性同位元素の濃度と濃度限定との比はいずれの施設においても1以内であり,11100以下が395施設(63%)」とあり、管理区域内のトイレを患者が使っていないのではないかと考えられます。』

Sr-89

核医学治療用放射性医薬品89Srの排水基準に関する検討
配水系統への混入割合が1%未満であったとしています。RIを投与された患者が用いるトイレの問題なのかもしれません。

排水中の放射性物質濃度の評価の考え方

排水設備に流入する放射性物質と排水設備内での減衰

排水設備に流入する放射性物質と排水設備内での減衰

流入した後に排水設備内で指数関数的に減っていく放射性物質を流入日別に合算

指数関数を積分することになる。
流入した後に排水設備内で指数関数的に減っていく放射性物質を流入日別に合算

流入日別での評価日における残存量

貯留槽満水時の放射能

評価期間内で排水設備に流入する回数

すなわち放射性物質を使う日数
排水設備に流入できる回数

より合理的に考えたい?

評価期間内での使用が等間隔である場合

平成28年3月31日付の通知で示されている考え方

満水になるまでの間に等間隔で投与する場合には、それぞれの間隔間での減衰を考慮し、それを等比級数の和の公式を使って合算することも考えられるでしょう(医政発 0331第 11号. 平成 28年 3月 3 1日. 厚生労働省医政局長. 「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行について」)。
等間隔に使用する場合

排水からのRIの回収?

アイデアの例(中沢 圭治, 石井 勝己, 1.2 病院施設, RADIOISOTOPES, 1996, 45 巻, 2 号, p. 137-142)

尿を含んだ活性炭廃棄物を日本アイソトープ協会では集荷していないので,実現には至っていない。

環状オリゴ糖

廣田 昌大.環状オリゴ糖を用いた新しい放射性ヨウ素回収・保持システム開発に向けた基礎的研究
佐瀬 卓也.診療用放射性薬剤の拡散前トラップ手法の開発

環境でのモニタリング

核医学検査に起因する一般排水中の放射性核種

ガイドライン

日本医学放射線学会、日本放射線技術学会、日本核医学会、日本核医学技術学会.排気・排水に係る放射性同位元素濃度管理ガイドライン及び参考資料

米国

§ 20.2003 Disposal by release into sanitary sewerage.
(a) A licensee may discharge licensed material into sanitary sewerage if each of the following conditions is satisfied:

(1) The material is readily soluble (or is readily dispersible biological material) in water; and

(2) The quantity of licensed or other radioactive material that the licensee releases into the sewer in 1 month divided by the average monthly volume of water released into the sewer by the licensee does not exceed the concentration listed in table 3 of appendix B to part 20; and

(3) If more than one radionuclide is released, the following conditions must also be satisfied:

(i) The licensee shall determine the fraction of the limit in table 3 of appendix B to part 20 represented by discharges into sanitary sewerage by dividing the actual monthly average concentration of each radionuclide released by the licensee into the sewer by the concentration of that radionuclide listed in table 3 of appendix B to part 20; and

(ii) The sum of the fractions for each radionuclide required by paragraph (a)(3)(i) of this section does not exceed unity; and

(4) The total quantity of licensed and other radioactive material that the licensee releases into the sanitary sewerage system in a year does not exceed 5 curies (185 GBq) of hydrogen-3, 1 curie (37 GBq) of carbon-14, and 1 curie (37 GBq) of all other radioactive materials combined.

(b) Excreta from individuals undergoing medical diagnosis or therapy with radioactive material are not subject to the limitations contained in paragraph (a) of this section.

[56 FR 23403, May 21, 1991, as amended at 60 FR 20185, Apr. 25, 1995]

医療機関での永久保管が想定されている例

日本アイソトープ協会編.医療用アイソトープの取扱いと管理 改訂2版
sludge

実態調査

日本核医学会分科会 腫瘍・免疫核医学研究会 甲状腺RI 治療委員会, 阿部 光一郎, 岡本 高宏, 金谷 和子, 伊藤 公一, 渋谷 洋, 内山 眞幸, 絹谷 清剛, 小泉 潔, 横山 邦彦, 東 達也, 戸川 貴史, 久山 順平, 伊藤 充, 吉村 真奈, 内田 健二, 池渕 秀治, 柳田 幸子, 甲状腺癌の放射性ヨウ素内用療法におけるRI 治療病室稼働状況の実態調査報告(第5 報), 核医学, 2019, 56 巻, 1 号, p. 107-116

『排水設備が改善されれば年間入院患者数を増やすことができるので,治療待機患者の期間短縮も可能となる.』

過去の検討

雫石 一也、渡辺 浩、成田 浩人、金谷 信一、小林 一三、山本 哲夫、塚田 勝、岩永 哲雄、池渕 秀治、草間 経二、田中 守、並木 宣雄、藤村 洋子、堀越亜希子、井上登美夫、日下部きよ子.核医学診療施設における液体状放射性廃棄物管理状況のアンケート調査.核医学 41: 109–121, 2004

放射性同位元素の使用量と事業所の 1 ヶ月排水量から排水中放射性同位元素濃度比を算出したところ,専用治療病室を有さない 499 施設のうち 473 施設において,放射性同位元素の使用量と事業所の 1 ヶ月排水量から算出した排水中濃度限度比の和は 1 未満であった.

診療用放射線の防護(1960年発行)

診療用放射線の防護
医療分野での患者の排泄物が課題であるとしI-131を例にして、一ヶ月減衰させ、医療機関全体で用いた排水で希釈する方法が紹介されています。
この考え方は、岩城勇著.診療用放射線利用施設のあり方.医学書院, 1965や1975年に発行された日本アイソトープ協会編.医療用アイソトープの取扱いと管理でも引き継がれています(1985年発行の第三版でも同様)。

その一方で厚生省国立病院管理共同研究関信班 (放射線部門) 編.医用放射線しゃへい計算指針 : 平成2年3月では、混入率が1/100とされています。

測定例

排水測定

出典

慶應大学義塾大学医学部・病院 放射線安全管理統計 平成19年度(2007年度)