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No. 293 治験に用いる薬剤の放射線管理

医師主導型臨床研究で用いる薬剤は、放射線障害防止法で規制されますか?

記事作成日:2015/04/03 最終更新日: 2023/11/05

医療法施行規則の改正により「未承認放射性医薬品」が医療法の規制対象となりました(2019年3月11日公布(2019年4月1日施行))
放射性同位元素等の規制に関する法律における未承認放射性医薬品等の取扱いについて
「未承認放射性医薬品」に関してもRI規制法の対象外とするための手続が進められていますました。
第56回原子力規制委員会
放射性同位元素等の規制に関する法律施行令の改正案及び告示案(未承認放射性医薬品等の二重規制の解消等)に対する意見公募の結果について
放射性同位元素等の規制に関する法律における未承認放射性医薬品等の取扱いについて
未承認放射性医薬品等の二重規制の解消等に係るRI令改正等

以下は省令改正以前の情報です

医師主導型研究のうち医師主導治験で用いる放射性薬剤の放射線管理は、RI規制法ではなく医療法により規制されると考えられます。

臨床研究法

臨床研究法について

H17.6月の省令改正

旧薬事法(現薬機法)に規定する医薬品は、放射線障害防止法(現RI規制法)の施行令で適用除外とされていましたが、治験薬や臨床研究に用いる薬剤は薬事法(現薬機法)で定める医薬品ではないため、放射線障害防止法で規制、管理されている時代がありました。
このため、同じ医療機関で同じ放射性の薬剤を投与した場合であっても、治験・臨床研究である場合には放射線障害防止法に基づく規制が適用となり、廃棄物等についても医療法の廃棄物と分別する必要が生じていました。
このため、H17.6月に省令改正され、治験に用いる放射性薬剤は医療法により規制されることになりました。

医療法施行規則の一部を改正する省令の施行について(平成17年6月1日)(医政発第0601006号(医政発0315 第4号通知に置き換わっています))

第一 改正の趣旨

2 治験の対象とされる薬物に係る放射線の防護に関する法令上の整理
密封されていない放射性同位元素であって薬事法(現薬機法)(昭和35年法律第145号)第2条第15項に規定する治験の対象とされる薬物について、医療機関において使用する際の放射線障害の防止に関し、法令上の整理を行ったものであること。

第二 改正の要点

3 治験薬に関する事項(新規則第24条第7号)
放射性同位元素であって薬事法(現薬機法)第2条第15項に規定する治験の対象とされる薬物のうち、陽電子放射断層撮影装置による画像診断に用いるものについては陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に、その他のものについては診療用放射性同位元素にそれぞれ追加されることとなったこと。
なお、病院又は診療所の管理者が、治験の対象とされる薬物について、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る医療法(昭和23年法律第205号)第15条第3項に基づく届出を都道府県知事に行う場合には、薬事法(現薬機法)第80条の2第2項に規定する治験の計画の届出の写(受領印があり、厚生労働大臣又は独立行政法人医薬品医療機器総合機構によって受領されたことが明らかであるもの)又は治験の依頼をしようとする者と締結した医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)第13条の規定に基づく治験の契約の写等、当該届出に係る診療放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が薬事法(現薬機法)第2条第15項の治験の対象とされる薬物であることを証明できる書面の添付が必要であること。

医師主導の臨床研究として実施している例

国立国際医療研究センター

オクトレオスキャン

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解説記事

国内未承認放射性医薬品の現状

3.2 未承認薬使用

 欧米で承認されているものの日本では未承認医薬品のうち,既に,欧米で承認を得たものについて,早期承認が要望されている.また,海外からの個人輸入による治療では保険診療が認められず,医療費全額が個人負担となることから,治験による特定療養費制度の拡大を求める意見がある.
 これらの問題の解決を図るため厚労省は「未承認薬使用問題検討会議」を設置し,早期の適切な治験促進を図るための措置を検討することとした.この会議では,関連する課題として,治験終了後(エンロール後)の患者への治験薬の供給の仕組みなども掲げている.この会議で検討が想定されている早期に承認が必要とされる薬剤は,欧米で新たに承認された新薬で重篤な疾病に用いるもので,医療上特に必要性が高いものである.
 この会議を利用した新しい仕組みとして導入されつつあるのは次のような制度である.すなわち,未承認薬使用問題検討会議の決定をうけて,「承認のための治験」,「追加的治験」および「安全性確認試験」が行われる.「承認のための治験」は薬事法(現薬機法)上の承認申請を目的として実施されるものである.また,既に治験へのエントリーが終了した場合であっても,承認のための治験の一環として実施される「長期投与試験」に患者をエントリーすることが想定されている.更に,治験の対象条件に合致しない患者であっても,「追加的治験」として治験薬の投与が受けられることになる.また,治験が終了した後も継続して患者が治験薬を使用できるよう,承認後の使用実態を想定して市販後試験の前倒しとして実施する「安全性確認試験」を承認申請後に行えるようになる.これらの治験や試験はGood Clinical Practice (GCP)が適応され,承認審査評価の対象となる.Ibritumomab Tiuxetanとtositumomabは,ともにこの会議で検討対象とされており検討が継続されている.
 また,これまで治験は原則的には企業が行なうものであったが,企業での実施が困難である場合は医師主導による治験が実施できるようになった.この場合,検査および画像診断などが保険給付の対象となる.
 一方,海外で承認された薬を個人輸入する場合には,混合診療の対象となりうること想定されている.ただし,これらの薬の個人輸入は,放射性物質の管理の観点から,放射線障害防止法の所持制限(第30条)事項の法令適用など,様々な課題があると思われる.また,カウンターフェイトドラッグ(偽造医薬品)問題も無視できない.このため,放射性医薬品の適切な使用という観点からは,この方策を検討する意義は小さいと思われる.

3.3 PETを用いた薬効等評価

 独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センター画像医学部は,陽電子放射断層撮像(PET)を用いて,新しい抗うつ薬(LY248686)の適切な用法・用量の設定に参考となるデータを得るための治験を既に平成16年度に実施している.これは,塩野義製薬株式会社からの受託で株式会社エクサムの治験コーディネーター支援により行ったものである.放医研では分子イメージング研究センターを2005年11月1日に発足させこの領域の研究を推進している.既に,抗うつ薬では,SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)などの効果判定のためにセロトニンを再び神経細胞内に取り込むたんぱく質の働きを調べることができる分子プローブの臨床研究が開始されている.また,肺がん治療薬ゲフィチニブが上皮成長因子受容体(FGFR)に結合して作用を発揮することを利用し,そのたんぱく質に結合するプローブ薬剤も開発されている.PETの機能診断を用いて薬剤の有効性を検証することは優れた方法であり,その普及のための環境整備が求められる.
 また,中性子捕捉療法では,中性子の捕獲断面積が大きいボロンを腫瘍内にいかに効率的に取り込ませるかが重要な課題である.ボロンを腫瘍細胞に取り込ませるために,ウイルスのエンベロープを使う方法も模索されているが,現在,実用化しているのは,bonorophenylalanine(BPA)を用いる方法である.BPAはアミノ酸輸送系を介して細胞内へ取り込まれるため,腫瘍細胞内へのホウ素の取り込みは周辺の血管増生に依存する.このため,治療計画には腫瘍細胞内のホウ素濃度を把握することが必要となる.そこで,18Fを標識したFBPAを用いて,PET検査によりホウ素濃度を推計する方法が注目されており,その法令適用が今後課題となりうると思われる.

3.4 薬物代謝試験

 新薬の開発において薬物代謝試験を行うことは不可欠であり,薬物代謝試験におけるトレーサーとして放射性物質が一般に使用されている.このため,倫理上の問題を解決した上でボランテイアにRI標識薬物を投与するようなヒトhotADME試験することも,社会的にも有益であれば認めるべきであると思われる.
 他方,加速器質量分析法 Accelerator Mass Spectrometry(AMS)の導入により少量の14Cを使って試験する試みも模索されている.ただし,装置が高価であり簡便に実施できない欠点を現段階では有する.現在,日本には加速器質量分析に用いられる加速器が5台あるが,いずれも年代測定などに利用しており,医療機関での利用は困難であると推測されている.また,今回の法令改正で,非密封放射性同位元素の規制対象下限量が大きくなったのでAMSの必要性は相対的には低下したとも考えられる.いずれにしても,を利用するかどうかは被検者の被ばくとAMSのコストのトレードオフになる.このように,放射線利用技術では,コストと線量低減のトレードオフが常につきまとう.このため,AMSの活用を促進するよう政策誘導をすべきか否かも課題になり得ると考えられる.

4. 参考になると考えられる先行例

 放射性物質・放射線を用いた治験の環境整備としては,血管内放射線治療の例がある.この事例は,冠動脈疾患の再狭窄防止のために32Pを用いたステント等の利用が検討されたもので,「血管内放射線治療の治験における安全管理に関するガイドライン」が,日本アイソトープ協会医学薬学部会,日本放射線腫瘍学会,日本血管造影・IVR 学会,日本医学放射線学会,日本心血管インターベンション学会,日本心臓病学会,日本循環器学会,医療放射線防護連絡協議会により作成された .このガイドラインでは,治験実施施設の条件として,
・ 法令上の手続きをおえていること
・ 放射線科医が常勤していること
・ 治験担当部門のスタッフが,学会等が主催する本治療法に関する教育講習を受講していること
が定められた.また,ガイドラインに基づき教育研修が行われた.さらに,この活動が基になり,臨床応用できるように医療法施行規則も改正された.ただし,血管内放射線治療は治験が行われ有効性が確認されたものの,その後,より優れた方法が開発されたため普及には至っていない.しかし,取り組みの手順としては,永久刺入線源の利用同様,参考になるものと思われる.

出典:山下孝.X線診療室(IVR)における血管内放射線治療の安全利用

科学技術・学術審議会

研究計画・評価分科会(第52回) H27.3.19

ライフイノベーションの創出 ~国際社会の先駆けとなる健康長寿社会の実現~

戦略的に推進すべき脳科学研究に関する懇談会

社会への貢献を見据えた今後の脳科学研究の推進方策について(調査検討経過報告)平成26年12月15日

PETマイクロドーズ臨床試験

科学技術振興機構(研究振興支援業務室)

分子イメージング研究プログラム

北海道大学

未来創薬・医療イノベーション拠点形成

大阪大学

創薬とPET-社会への貢献を目指して-

法令適用

マイクロドーズ臨床試験の実施に関するガイダンス

教育的な総説

「研究倫理」と「放射線防護」の接点を結ぶ―日本放射線技術学会 講演記録に代えて―

治験以外

治験以外の臨床試験

131I-MIBG内照射療法の適正使用ガイドライン案改訂
悪性神経内分泌腫瘍に対するI-131 metaiodobenzylguanidine (MIBG)を用いた内照射療法

臨床試験以外の臨床研究

医師の個人輸入

悪性褐色細胞腫へのMIBG治療
医薬品等の個人輸入について
医師・歯科医師の方へ 医薬品等の個人輸入についてのご注意
萱野 大樹, 稲木 杏吏, 若林 大志, 赤谷 憲一, 山瀬 喬史, 國田 優志, 絹谷 清剛.悪性褐色細胞腫へのMIBG治療
医薬品等輸入報告書(薬監証明)の発給を要せず個人輸入可能な医薬品等の数量について

研究

短寿命RI供給プラットフォーム

提言・提案

未承認薬・適応外薬の要望に対する学会見解
内用療法─我が国で展開するには─
未承認放射性医薬品を医療法で取り扱うための医療法施行規則の改正について

国会

わが国の放射性同位元素内用療法(RI内用療法)の現状及び今後の国の施策に関する質問主意書
臨床研究法案

IAEA

Draft Safety Guide DS434:(Radiation Safety of Accelerator based Radioisotope Production Facilities)

厚生労働省

医療放射線の適正管理に関する検討会

未承認放射性薬物について

過去の経緯

以前は治験薬もRI規制法で規制されていました。