費用効果分析ってなあに?
ある効果を得るために、どの対策が効率的かを調べる方法じゃ。
効率的ってどういうこと?
同じ効果を得るには安い方がよいということじゃ。
じゃあ。かかる費用を効果で割って比較すればよいんだ。
その通りじゃ。
できるだけ安いコストでよい結果を得るにはどうすればよいかを考えるということじゃな。
でも、検診だと感度と特異度で評価できるんじゃないの?
【注:感度は疾患を正しく検出する確率です(検査機器などが提示している「感度」は、「ポジティブコントロール」を陽性と判定する確率であることもあるそうです)。
特異度は正常者を疾患なしと正しく検出する確率です。】
じゃ、考えてみよう。
条件はこうじゃ。
感度 | 0.9 |
---|---|
特異度 | 0.9 |
有病割合 | 1/1,000 |
検診コスト | 5,000円/人 |
精密検査 | 10万円/人 |
早期発見治療費 | 200万円(+10年寿命延長) |
通常発見治療費 | 500万円 |
受診者が1万人の町長になったつもりで検診を導入すべきかどうか考えてみよう。
町長だなんて、いきなりスケールが大きいなあ。
スケールをでかくしすぎると、宇宙の熱的死は訪れるかどうかをお風呂に入っても考えなくてはならなくなるから、とりあえず、この程度でよいじゃろ。
それよりも娘さんと仲良く過ごすにはどうすればよいかを考えた方がよいと思うけど。
まずは、検診の費用を計算してみます。
検診コスト:5千円/人×1万人=5,000万円
過剰検査による精密検査のコストは?
過剰診断される人数が必要だな。
患者数:1万人× 1/1,000=10人
発見患者数:10人×0.9=9人
過剰診断:9,990人×0.1=999人
陽性反応的中率:9/(9+999)=0.89%
陽性でも本当に病気なのは1%もないのか。
過剰精密検査コストは、
精密検査:10万円/人×999人≒1億円
じゃな。
過剰精密検査でトラブルがあるともっとコストが嵩むが、ここでは面倒だから無視しよう。
本当は、またパラメータを変化させ感度分析で結果の妥当性を検証することが必要じゃ。
治療費はどうかな?
早期発見が9人で通常発見が1人だから
早期発見治療費:200万円×9=1,800万円
通常発見治療費:500万円×1=500万円
だな。
総費用は1億7380万円じゃな。
検診を導入しない場合の費用はどうじゃろか。
通常発見治療費:500万円/人×10人=5,000万円
う〜む、検診しないと1億2380万円浮くのか。
検診をしない場合のほうが、費用が小さくなったな。
自治体としては検診をしないほうがよいのじゃろうか?
騙されないぞ。
検診で救命される利益を考慮すべきじゃないか。
では、検診で寿命が延長される利益を考えてみよう。
余命延長のメリットだから、
早期発見した9人の余命が10年延長
余命延長の価値:5百万円/年
余命延長の総価値:4億5千万円
になるな。
放射線のリスクは、なんだかどうでもよくなってきた。
きちんと効果がある検診プログラムじゃと、とんでもなく大きな線量でなければ検討する意義は乏しいそうじゃな。
でも頑張りやさんだから、計算する。
検査での線量:1 mSvだとすると、
リスク係数:0.05/Sv
発症者は1人か。
この不利益はどうやって計算すればよいのかな。
寿命延長1年のためにかけられるコストを支払意思額(WTP)として調べたデータがあるから、これを使ってみてはどうじゃろか。
平均600万円、中央値100万円、割引率2%(大日,2003)
発症で20年寿命が短縮とすると、
平均値で計算して1億円、中央値で計算して1千7百万円か。
この場合だと余命延長の総価値の方が大きいようじゃな。
このようなアプローチを中学校や高等学校の授業で扱って住んでいる自治体の施策を生徒さんに考えてもらうのもよいのではないかなあと思いました。