Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study

Mark S Pearce, Jane A Salotti, Mark P Little, Kieran McHugh, Choonsik Lee, Kwang Pyo Kim, Nicola L Howe, Cecile M Ronckers, Preetha Rajaraman, Sir Alan W Craft, Louise Parker, Amy Berrington de Gonzalez

要約

Background

CTスキャンは臨床的に非常に有用であるが、電離放射線からの潜在的ながんのリスクがある。成人よりもより放射線感受性が高い子どもにとっては、特にそうである。我々は、小児および若年者のコホートを用いてCTスキャン後の白血病と脳腫瘍の過剰リスクの評価を試みた。

Methods

研究デザインは後ろ向きコホート研究(コホート研究であるので、過去から現在へと前向きに解析はしている。後ろ向きとあるのは、既に起きてしまった事象のデータに基づいて解析することを意味している。つまり事後的なコホート研究)。研究地域は、イングランド、ウェールズ、スコットランド。対象者は、ナショナルヘルスサービス(NHS)センターで1985年から2002年の間に最初にX線CT検査を受けた患者のうち、以前にがんと診断されたことなく、22歳未満のもの。X線CT検査を受けた後、どうなったかを調べるために、1985年1月1日から2008年12月31日までのNHS中央レジストリを解析し、発がん、死亡率、そして追跡不良のデータを得た。CTスキャン1回あたりの、脳と赤色骨髄の吸収線量[mGy]を推定し、ポアソン相対リスクモデル(イベント発生がポアソン分布に従い、がん発症のリスクが自然発生に比例すると考えるモデル)を用いて白血病と脳腫瘍の過剰発生を評価した。がんの診断のために行われたCTスキャンを排除するため、白血病の追跡評価は最初のCTから2年後に、脳腫瘍では5年後に開始した。

Findings

フォローアップ中、178,604名の患者の中で74名が白血病、176,587名の患者の中で135名が脳腫瘍と診断された。CTスキャンの線量と白血病及び脳腫瘍には正の関連があった(白血病のGyあたりERRは0.036、95%CI0.005-0.120、p=0.0097)(脳腫瘍は0.023、0.010-0.049、p<0.0001)。5 mGy未満の線量を受けた患者に比べ、累積線量が少なくとも30 mGy(平均線量51.13 mGy)を受けた患者の白血病の相対リスクは3.18(95%CI1.46-6.94)、累積線量が50-74 mGy(平均線量60.42 mGy)を受けた患者の脳腫瘍の相対リスクは2.82(1.33-6.03)であった。

Interpretation

約50 mGyの累積線量を与える子どもへのCTスキャンは、白血病のリスクをほぼ3倍にし、約60 mGyの線量では脳腫瘍のリスクを3倍にするかもしれない。これらのがんは比較的まれなため、累積の絶対リスクは小さい:10歳より若い患者に対する最初のスキャン後10年で、頭部CTスキャン10,000あたり1例の白血病の過剰例が、脳腫瘍で1例の過剰例が起こると評価される。
しかしながら、臨床的な便益は小さな絶対リスクを上回るものの、CTスキャンで受ける放射線量は出来る限り低く抑えるべきであり、それが適切であれば電離放射線を伴わない代替の手技を考慮すべきである。

論文へのFAQ

症例対照研究との違い

これまでの症例対照研究とは、何が違いますか?

症例対照研究では、リコールバイアスが不可避ですが、それを避けることができます。

X線CTでの線量の大きさの推計

X線CT検査で受ける線量は、スキャン範囲、ピッチ幅、フィルタの性状、ビームの形状、実効稼働負荷、管電圧などに依存しますが、個々の検査で線量を再構築したのでしょうか?

いいえ。使える情報に限界があったので、個々の事例で線量は再構築されていません。
その当時にもっともよく使われていたと考えられる条件を採用して、主要な体格別にモンテカルロ法で線量を推計しています。

検査の目的別の解析

X線CT検査で受けた目的により、患者の属性が異なり、何らかの交絡因子になりえるのではないでしょうか?

検査の目的の情報は利用ができていません。

X線CT検査以外の線量

X線CT検査以外の線量は考慮されていますか?

いいえ、されていません。
他のX線検査はX線CT検査よりも線量の寄与が少ないであろうと述べられています。

がんの種類別の解析

がんの種類別に解析されていますか?

されています。
結果は表3にまとめられています。

推計された放射線のリスク

放射線のリスクは、これまでに得られていた知見と一致していますか?

著者らは概ね一致すると結論づけています。

過去の線量

2001年以前のX線CTによる線量はどのようにして推定されていますか?

1989年と2003年に英国で行われた調査を組み合わせています。
0歳男児の頭部と赤色骨髄[mGy]は以下の通りです。
2001年以前は2-3倍程度線量は大きかったと考えられています。
頭部CT28, 8
胸部CT: 0.4, 4
腹部CT: 0.2,3

2001年以前の線量が大きいのは、何故ですか?

当時は年齢に応じた照射条件の設定が希であったからです。

対象者

X線CT検査を受けていないものを対象に含めていないのは何故ですか?

A.この論文中では言及はありません。

偶然変動の制御

CT検査を繰り返し受けた集団のサイズが小さいと、偶然変動によりがん発症の確率を大きく見積もるのではないでしょうか?

ベイズ補正のような議論は、論文中にはありません。

発症が受けたX線CT検査の件数

白血病を発症したグループで、受けたX線CT検査の回数はどうなっていますか?

74人が白血病を発症していますが、1回のみが45人、2-4回が22人、5回以上が7人となっています。

文献情報

Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study

この論文への反応

AAPM

CT scans are an important diagnostic tool when used appropriately

その後の検討

Relationship between paediatric CT scans and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: assessment of the impact of underlying conditions

記事作成日:2012/06/08 最終更新日: 2016/02/27