診療放射線技師や放射線科医は、かつては放射線リスクが高いことが知られていました。
しかし、近年では、そのリスクが確認出来ない程度に小さくなっていると考えられます。
ただし、IVRに従事する臨床医では、線量低減の工夫をしないと、放射線リスクが高くなることが考えられますが、きちんと対応すれば線量を減らすことができます。
線量の可視化に興味がある方はこちらをご覧下さい。
日本学術会議
見解「医療従事者の職業被ばくに係る放射線管理の改善に向けて」を公表しました。(令和5年9月19日)
見解「医療従事者の職業被ばくに係る放射線管理の改善に向けて」
セミナー
放射線診療における看護に必要な基礎知識2020
職場での放射線防護のあり方に関して話し合えるとよいのではないでしょうか。
第 60 回日本核医学会学術総会
核医学看護フォーラム
核医学看護におけるネットワーク~井の蛙大海を知らず されど空の青さを知る~
ガイドライン
令和元年度放射線の安全規制研究戦略推進事業費(円滑な規制運用のための水晶体の放射線防護に係るガイドライン作成)事業「医療スタッフの放射線安全に係るガイドライン」
医療機関での対策支援
令和6年度 放射線被ばく管理に関するマネジメントシステム導入支援事業
MS導入支援事務局
【令和3年4月1日施行】改正電離放射線障害防止規則及び関連事業について
令和2年度厚生労働省委託事業 放射線被ばく管理に関する労働安全衛生マネジメントシステム導入支援事業
放射線被ばく管理に関する労働安全衛生マネジメントシステム導入支援事業
資料1:放射線防護マネジメントシステム(個別支援研修会):序論 欅田教授
改正電離則広報事業お役立ちコンテンツ
補助金
厚生労働省 被ばく線量低減設備改修等補助金のご案内
入札公告(「放射線被ばく管理に関する労働安全衛生マネジメントシステム導入支援事業」 一式)
令和2年度 被ばく線量低減設備改修等補助金(間接補助金)に係る補助事業者(執行団体)の公募について(公募要領)
被ばく線量低減設備改修等補助金
JART
労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)導入のための調整が負担?
指定発言「労働安全衛生マネジメントシステムを適応させた職業被ばく管理の紹介」さいたま赤十字病院 北山 早苗
理化学研究所、琉球大学.いつでもどこでも血管内治療トレーニングが可能に
整形外科医での問題指摘例
Increased cancer risk among surgeons in an orthopaedic hospital.
平泉裕.整形外科分野における従事者防護の状況.医療放射線防護.(81):19-21,2019上記以外にも、脊髄神経の痛みを遮断する目的で施行する透視下神経根ブロックや脊髄造影検査等でも多くの被ばくを受けることになる。繰り返し長期間にわたって被ばくを受けた整形外科医(特に脊椎外科医)の多くが放射線皮膚炎に罹患しており、重症者では皮膚癌を発症することがある。
検討例
宇都宮 健, 山下 彰久, 池村 聡, 原田 岳, 渡邊 哲也, 上田 幸輝, 小薗 直哉, 白澤 建藏.脊椎手術の透視時間に関する検討―四肢外傷との比較―
加藤 清信, 古賀 崇正, 松崎 昭夫, 城戸 正喜, 佐藤 哲紀. 整形外科医師の放射能被曝量についての検討
整形外科医における誘発皮膚癌の被曝線量の推定
整形外科医師の放射能被曝量 についての検討
長崎大学病院 外傷センター 宮本俊之.整形外科における被ばく リスクと最新技術
第26回メディアレクチャー 医療現場における放射線の影響と最新技術による被ばく量低減策
症例報告
橋本 裕之, 市川 弘城, 倉田 荘太郎, 佐藤 治明, 寺師 浩人, 渋谷 博美.手の放射線癌の1例―再発を繰り返し6年経過した症例―
佐藤 隆弘.整形外科医が医療被曝により皮膚癌に罹患した経験 ―労災認定から手術,職場復帰まで―
職業被曝による皮膚がんから学んだ日々の取り組みから公務災害認定まで
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線量推計
姿勢の考慮
New mesh-type phantoms and their dosimetric applications, including emergencies
Presentation
放射線モニタリング
手指の放射線モニタリングでの過小評価
リングが手背側にあると手掌側の線量の半分しか示さないので注意が必要です。
実態調査例
リスクが小さくなっているとあるけど、どのデータによるのですか?と質問がありました。根拠を示すべきだと思う。
たとえば、こちらの文献(澤田 昭三.生物学的線量計による診療放射線技師の被曝線量の推定)は、いかがでしょうか?
日本のIVR従事者と診療放射線技師それぞれの被曝線量のデータを載せるとよいと思う。ネット上で見たことがあります。
どのようなデータでしょうか?
最近の研究では,白内障・心筋梗塞・脳梗塞などが放射線被曝の晩発性障害という報告があること,これらに閾値がないという報告があることを紹介するとよいと思う。
足りない紹介論文としてはどのようなものがありますか?
職業被曝・診断被曝・治療被曝が統一的に管理されていない現状では、将来治療被曝を受ける可能性があるので,できる限り被曝量を抑える必要があることを指摘するとよいと思う。今の記述だと診療放射線技師の被曝は現在は小さいから大丈夫というように読めそうですので、ちょっと心配です。
放射線治療も含めて、生涯で受ける線量の上限を求めるべきでしょうか?
IVR従事者はもっと被曝を減らすために努力する必要があると思う。手術室の壁でX線がどのように反射をするかをシミュレーションした映像をネットで見たことがあります。被曝量の抑制を医療器具メーカーにまかせるのではなく、医療関係者みずからが考える気風をつくりたいですね。医療者にそのような気風が生まれれば、CT検査やX線診断の安易な使用に国民が曝されるということもなくなると思います。
こちらでしょうか?医療での放射線利用が安易かどうかは、利用時の吟味が十分かどうかで考えることができるのではないかな
当時の取り組み例
放射線量の測定を行うと被ばく線量を低減出来ます。約40 年前に日本に手指の被ばくを測定するリングバッジを導入した時の例が最も明解です。測定開始直後の線量は平均で月に6,000 mrem(60 mSv)でしたが、3ヶ月後の平均線量は 2,000 mrem(20 mSv)に激減しました。作業者が測定結果を知ることにより、自ら注意改善した結果です。
NLだより No.483平成30年3月発行
IVRでの放射線防護のポイント
(1)防護エプロンは2桁線量を低減する(ただし後方散乱が多い場では遮蔽効果が低くなる。また、効果はエプロンの向きにもよる)。
(2)患者が受ける線量(例:PTCR)が多い手技では術者の線量も大きくなる。
(3)防護エプロン外で線量が大きくなりやすいのは左手指で一回の手技で最大8 mSv(線量当量)に達しうる。
(4)手指以外で比較的高線量になりやすいのは頭部である。
出典
田中淳司.IVRにおける被ばく防護のノウハウ:患者と医療従事者の双方について.医療放射線防護.(58),47-53,2010
レビュー研究
Cancer Risks among Radiologists and Radiologic Technologists: Review of Epidemiologic Studies
かつて放射線科医と診療放射線技師は電離放射線の曝露集団として大きな部部分を占めていた。様々な国での合計27万人を対象として8つのコフォート調査をレビューした。もっとも一貫していた結果は、1950年以前に雇用された労働者で曝露線量が高い場合の白血病死亡の増加である。一方、いくつかの固形癌は、複数の研究で乳がんと皮膚がんでのリスクを示したいたが、結果の一貫性は低かった。現在の曝露レベルでは放射線診療従事者でがんのリスクが増えるとの明確な証拠は得られなかった。しかしながら、最近の労働者では観察期間が短いこと、放射線診療の利用が拡大していることから、診療放射線従事者の健康状態を観察することは重要である。
IVRに従事する医師の過剰被曝例
Assessment of a high occupational single exposure – false or true?
1回のERCPで年間の線量限度(50 mSv)を超える70 mSvの被曝があったとされるノルウェーの事例。Norwegian Radiation Protection Authorityが調査した結果を示しています。
放射線部から放射線防護の支援を受けていれば、このような事例は防げます。The high radiation dose to the surgeon can be explained by the obese patient, associated exposure settings and the working technique, in addition to the over-couch tube geometry. This case shows the necessity to pay special attention to staff doses, during situations like the one described. ERCP is not recommended to be performed with over-couch geometry.
【結論】
外科医の線量が高かったのは、肥満患者であったこと、照射の条件、作業の手技、照射がover-couch(=X線がテーブルの上から照射すること。テーブル下の防護板が効果を発揮できず術者の線量が大きくなる)であったことが考えられる。
このような事例ではスタッフの防護に特別な注意が必要であることをこの症例は示している。
ERCPはover-couchで照射すべきではない。
防護ツールを開発した例
Chen MY, Van Swearingen FL, Mitchell R, Ott DJ. Radiation exposure during ERCP: effect of a protective shield. Gastrointest Endosc. 1996 Jan;43(1):1-5.
栗原 俊夫, 糸井 隆夫, 胆道系IVR・IVEにおける患者・医療従事者の放射線被曝の軽減について―Pulse透視とERCP時の防護シールドの有用性―, 胆道, 2014, 28 巻, 2 号, p. 193-199
糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 糸川 文英, ERCP関連手技の指導と教育, 胆道, 2006, 20 巻, 5 号, p. 587-596
ERCP 検査時の放射線防護具の作成とその効果について
散乱線発生部位やそこからの従事者への曝露を考えた最適化の工夫の余地があるかもしれません。
奥山 祐右, 奥山 智緒, 川上 巧, 中津川 善和, 山田 真也, 鈴木 隆裕, 戸祭 直也, 佐藤 秀樹, 吉田 憲正.ERCP施行時の被曝線量評価と放射線防護教育
内視鏡担当看護師6名中2名が水晶体線量 20mSv/yを超えていたのが、放射線防護に関する研修会を行うことで、大幅に低減したことを示しています。
平千亜紀.検査看護における放射線被曝低減への試み 〜看護師に不必要な被曝を回避するために〜
看護師が主体となった検討がなされており、学習会を実施することで、内視鏡検査担当看護師が受ける線量(実効線量)が1/3程度に低減したことを示しています。
Tomoyuki Minami, Tamito Sasaki, Masahiro Serikawa, Michihiro Kamigaki,Masanobu Yukutake, Takashi Ishigaki, Yasutaka Ishii, Teruo Mouri, Satoshi Yoshimi,Akinori Shimizu, Tomofumi Tsuboi, Keisuke Kurihara, Yumiko Tatsukawa,Eisuke Miyaki, and Kazuaki Chayama. Occupational Radiation Exposure during Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography and Usefulness of Radiation Protective Curtains
ERCP検査中の患者の体動に対応すると看護師の被ばくが3倍近く増えますが、このような場合でも防護カーテンは一定の効果を示しています。
Yoshiaki Morishima, Koichi Chida, Takayoshi Meguro.Effectiveness of additional lead shielding to protect staff from scattering radiation during endoscopic retrograde cholangiopancreatography procedures
オーバーチューブ用防護カーテンをしていない場合、防護衣外の線量当量で4名中1名の看護師が20 mSv/y超でしたが、カーテンを使うことで半減以下に低減しています。
A. Zagorska’Correspondence information about the author A. ZagorskaEmail the author A. Zagorska, K. Romanova, J. Hristova-Popova, J. Vassileva, K. Katzarov. Eye lens exposure to medical staff during endoscopic retrograde cholangiopancreatography
内視鏡検査に携わる医療従事者における透視被ばく線量の検討
木曽 まり子, 古川 善也, 篠原 芙美, 齋 宏, 坂野 文香, 松本 能里.ERCP検査時の放射線防護具の作成とその効果について
奥山 祐右, 奥山 智緒, 川上 巧, 中津川 善和, 山田 真也, 鈴木 隆裕, 戸祭 直也, 佐藤 秀樹, 吉田 憲正.ERCP施行時の被曝線量評価と放射線防護教育
池澤 和人.消化器内視鏡検査および治療における医療従事者の被曝線量に関する基礎的検討
JED用語解説2
ERCPの検査時情報
全照射時間:多くの施設において、被ばく量管理のためにも注目されている項目です。
ERCP検査時における被ばく防護への認知と啓発 ~JG(ジャングルジム)法による室内散乱線量測定~
内視鏡業務における放射線防護への取り組み~職業被爆(被曝)への理解を深める~
消化器内視鏡技師
第74回 日本消化器内視鏡技師学会
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
IVRでの手指の曝露
IVR中に術者がもっとも被ばくするのは手指です。
特に、ビーム内に手指が入るとその被ばくが多くなります。
しかし、それが全てではありません。
診断領域のX線では、透過率が比較的低いために、患者を透過したX線の量は相対的に小さくなります。
その一方、患者で散乱されたX線の量は相対的に大きく、例えば、FSD(エックス線管の焦点からエックス線が入射する前の皮膚の距離): 100 cm、患者を40×40×20 cmの水、ビームサイズを入射面で20×20 cm、線質を管電圧125kV、フィルターをCu0.2 mm+Al2 mmとした場合、入射面の組織吸収線量と比較し、術者の手を照射野外で患者に近づけた場合の組織吸収線量は15%程度になります。
この線量は、患者のビーム出射側でビーム内に手を入れた場合の線量よりも大きいものです。
また、患者への入射側でビーム内に手を入れた場合と比較してもオーダーが一桁しか変わりません。
誤って、ビーム内に手指を入れることを防ぐことは重要ですが、それだけを考えればよいという訳ではありません。
作業の内容を考慮した作業環境管理を実践しましょう。
論文
Cancer mortality among radiological technologists in Japan: updated analysis of follow-up data from 1969 to 1993.
Cancer incidence in the U.S. radiologic technologists health study, 1983-1998Linet MS, Kitahara CM, Ntowe E, Kleinerman RA, Gilbert ES, Naito N, Lipner RS, Miller DL, Berrington de Gonzalez A; Multi-Specialty Occupational Health Group. Mortality in U.S. Physicians Likely to Perform Fluoroscopy-guided Interventional Procedures Compared with Psychiatrists, 1979 to 2008. Radiology. 2017 Aug;284(2):482-494.
Roguin A, Goldstein J, Bar O, Goldstein JA. Brain and neck tumors among physicians performing interventional procedures. Am J Cardiol. 2013 May 1;111(9):1368-72
Roguin A, Goldstein J, Bar O. Brain tumours among interventional cardiologists: a cause for alarm? Report of four new cases from two cities and a review of the literature. EuroIntervention. 2012 Jan;7(9):1081-6
Little MP, Lim H, Friesen MC, et al. Assessment of thyroid cancer risk associated with radiation dose from personal diagnostic examinations in a cohort study of US radiologic technologists, followed 1983–2014.BMJ Open 2018;8:e021536
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妊娠中にRIの静注業務を行っていました
放射線の白内障発症リスク
ガイドライン
循環器診療における放射線被ばくに関するガイドライン
これでいいのか循環器内科の職業被ばくに対する放射線防護(企画:片岡明久)
本学の研究グループがSHD治療における心エコー医と麻酔科医の放射線被ばくの実態、新開発の放射線防護板の効果について明らかにしました
帝京大学と株式会社エムエス製作所が、SHD治療専用放射線防護板を共同開発しました
解説記事
過去の日本の放射線技師の疫学調査
石坂 正綱, 遠藤 幸一, 放射線業務従事者の障害に関する調査研究, 日本放射線技術学会雑誌, 1970, 26 巻, 3 号, p. 280-290, 公開日 2017/06/25, Online ISSN 1881-4883, Print ISSN 0369-4305
女性の放射線科医から放射線科の勤務を考えている人へのメッセージ
医療従事者の妊娠と放射線防護について(加治屋より子 先生)日本放射線科専門医会・医会
大野和子.放射線検査による胎児被ばくと女性従事者の被ばく
日本放射線科専門医会・医会 女性医師のためのコミュニケーションスペース
X線CT透視
CTガイド下IVR用針穿刺ロボット:Zerobot (Projected by Okayama University)
4列Multislice CTによる穿刺支援システム guideShot の開発
CT 透視における angular beam modulation (ABM) と放射線防護ドレープ併用による術者の被ばく低減効果─ファントム実験─
医療用具回収の概要(クラスII)1. 一般名及び販売名 一般的名称:全身用X線CT装置のオプション品ファームウェアの不具合が原因で、超高速画像再構成装置(通称CT透視システム、以下CT透視)の増設操作パネルのX線曝射用フットスイッチ(以下、フットスイッチ)を離してもX線曝射が止まらないという現象が発生することが判明しました。
宮島 隆一, 藤淵 俊王, 宮地 優介, 立石 哲士, 宇野 善徳, 天川 一利, 大浦 弘樹, 折田 信一.X 線CT 撮影の介助時における医療従事者被ばくの効果的な防護方法について
藤淵 俊王.医療分野における職業被ばくと放射線防護(令和2年12月作成)
ガントリは従事者の遮へいを目指しているものではないので、それを遮へい体として用いる場合には、健全性の確認が必要かもしれません。
IVRの介助業務に従事する看護師が受ける線量
IVR看護研究会 JSIRN
高橋明美 種田憲一郎.カテーテル室看護師の放射線の意識と安全管理
トレンドが記録できる線量計で線量の推移を看護師の方が計測され、院内の学習会で結果を示された例です。
out-of-specification (OOS)
deviate from…
- expectations (OOE)
- trends (OOT)
- calibration values (OOC)
- process parameters (OOL)
IVRの術者の放射線防護の総説
増島 ゆかり, 野戸 結花.IVRに従事する看護師の職業被ばくに対する認識と放射線教育に関する調査
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 木村真三先生(現:獨協医科大学)による講演資料
不均等曝露時の手指の線量
放射線診療における手指の不均等被ばく線量の推計(第39回日本保健物理学会研究発表会のポスター発表、山口 一郎(国立保健医療科学院)、大西世紀(海洋技術研究所 ) )
滅菌処理によるガラスリング線量計への影響
測定の注意例
ガラスリングは、放射線を手の甲側から受ける場合は手の甲側にラベルを向け、手の平側から受ける場合は手の平側にラベルを向けてください。
わが国の実態
実効線量
個人線量測定協議会のデータによると、実効線量で線量限度を超える50 mSv以上曝露した一般医療での放射線診療従事者は、2006年: 10人, 2007年:12人, 2008年:14人, 2009年:11人, 2010年:29人, 2011年:18人, 2012年:13人, 2013年:9人, 2014年:11人となっています。
また、 20 mSv以上曝露した放射線診療従事者は、2008年:110人, 2009年:203人, 2010年:359人, 2011年:329人, 2012年:304人, 2013年:294人, 2014年:312人です。
個人線量測定協議会によるとこのデータは吟味されたものであり線量計のX線診療室内への置き忘れではないとされています(協議会に加盟している会社による測定値吟味の差があるようです)。
線量限度を超える労働者の曝露は他の分野ではなく、他の国でも最近は見られなくなっています(線量限度を超える事例があると必ず対策が取られているので)。
このため、わが国でも取り組みが求められます。
対策を考える上では実態の正確な把握が求められることから、実効線量限度を超えた事例で線量計のつけ間違えがないかどうかなどを吟味する必要があります。読み取られた線量値が実効線量限度を超えた場合に、線量計の装着部位の誤りが判明した事例はありませんか?
年齢別の実効線量
年齢階級別の医療従事者の算術平均実効線量
※ 獣医療従事者を含む。
出典:千代田テクノル社.平成29年度年齢・性別個人線量の実態.FBNews No.503
男性では20歳代で算術平均実効線量が最も高いことの理由は不明であるようです。
手指への線量
長瀬ランダウア社によると平成21年度、手指への線量が500 mSvを超えた放射線診療従事者は4人とされています。
千代田テクノル社の発表データでは、線量限度を超えた放射線診療従事者の数は把握できない。
令和元年度のデータ
平成30年度のデータ
平成29年度のデータ
平成28年度のデータ
平成27年度のデータ
平成25年度のデータ
- 0.1Gy以上は50人(長瀬ランダウア.平成25年度)
- 0.5Gy以上は3人(長瀬ランダウア.平成25年度)
眼の水晶体の線量
放射線診療従事者の白内障のリスク
研究の目的
診療放射線技師の職業上と日常生活での放射線曝露や個人の特性と白内障リスクの関係を明らかにする。
方法
研究デザインは前向きコホート研究。
研究対象者は白内障を罹患していない米国の24-44歳の診療放射線技師35,705人。
追跡期間はほぼ20年間(1983-2004)。
追跡の方法は2回の質問紙調査。
結果
追跡期間中に2,382例の白内障と647の水晶体除去例があった。
5 pack-years以上の喫煙、BMIが25 kg/m2以上、ベースライン時に糖尿病、高血圧、高脂血症、関節炎のいずれかの既往歴有りは白内障のリスクを増加させた( p<0.05)。
多変量解析では、顔面や頚部への3回以上のX線検査の白内障に対するハザード比は1.25 (95% 信頼区間: 1.06, 1.47)であった。
最も多く被ばくした群(平均 60 mGy)に比べて最も少ない被ばく線量であった群 (平均5 mGy)では、調整したハザード比は1.18 (95% 信頼区間: 0.99, 1.40)であった。
考察
NCRPやICRPでは、進行性の白内障を引き起こす最小の集積線量を2Gyとしているが、それとは一致しなかった。
これまで考えられていたよりも白内障を誘発する線量が小さいとする仮説をこの研究結果は支持している。
出典
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日経メディカル
医療者の被曝リスクはこう減らす
造影時の放射線防護具で散乱線を50分の1に低減
放射線安全フォーラム
第 40 回(通算第 165 回)放射線防護研究会「眼の水晶体の放射線防護のあり方を考える」の概要報告
放射線安全フォーラムが水晶体被ばくに関する研究会を開催
防護眼鏡の効果
Interventionalists’ exposure doses to the eye lens measured with small dosimeters worn on both surfaces of radiation protection glasses
2012年10月から2014年3月までの間、透視業務に従事する5人の医師を対象に防護眼鏡内外などの線量を測定し、防護眼鏡(回り込みによる線量を小さくするように配慮されたタイプ)により線量が4割程度に低減することが検証されています。一月間の眼の水晶体の等価線量は、0.03 から 1.39mSvであったとのことです。
CT検査における患者制御時の介助者の線量評価
Author:鈴木 昇一(藤田保健衛生大学 衛生大学診療放射線技術学科), 南 一幸, 浅田 恭生
Source: 医学と生物学 (0019-1604)150巻10号 Page360-365(2006.10)
Abstract:頭部CT検査を想定して、患者抑制時の介助者の線量を個体検出器、電離箱サーベイメータを用いて、体幹部、手指の線量測定を行った。防護エプロン着用の有無で評価も行った。その結果、介助者はガントリ近傍の線束側で30-50%線量が増加した。介助者の胸部、腹部正面での線量は、防護無しで0.22mGy、防護衣着用で0.05mGyとなった。介助者の水晶体の線量は0.15mGy程度、防護眼鏡の使用により0.07mGyとなった。介助者の甲状腺の線量は0.19mGy程度、ネックガードの使用により0.04mGyとなった。介助者の手の表面線量は線束内で37mGy、線束外で1-4mGyとなった。線束内から4-5cm離れると線量が1/10程度になった。動きを伴う患者に対する頭部CT検査において介助者の線量を把握することができた。
Interventional radiology(IVR)における放射線防護眼鏡の比較検討
Author:磯見 正美(鳥取赤十字病院), 西村 昭二, 佐藤 潔
Source: 鳥取赤十字病院医学雑誌 (0917-2556)8巻 Page22-25(1999.08)
Abstract:1)正面からの散乱X線による水晶体被曝は,防護眼鏡を使用しない場合に比べ,遮蔽体が鉛ガラスの「眼鏡タイプ」を使用した場合で15%に,含鉛アクリルの「ゴーグルタイプ」を使用した場合で39%に低減することができる. 2)「ゴーグルタイプ」は,「眼鏡タイプ」に比べて水平方向では顔の向きによる防護能の違いが少ないが,垂直方向では両者共斜め下方における防護効果が低い. 3)「ゴーグルタイプ」に鉛ゴムを付加するなど,防護効果の低い部分に遮蔽体を追加するのは,防護眼鏡の性能を向上させるのに有効であった
医療における放射線防護と関連法令整備に関する研究(課題番号H26-医療-一般-019)
文献番号 201520014A
水晶体線量の評価手法に関する研究(分担研究者:赤羽正章)
また、放射線防護の国際動向に関しては、水晶体の等価線量限度引き下げの動向を受けて、本研究の放射線診断領域における放射線防護に関する課題において、水晶体等価線量を評価する手法を確立することを検討した。IVRにおける術者の水晶体等価線量は手技のありかた、防護メガネの装着のしかたによって、かなりの幅を生じることが明らかになり、その管理の確立にあたって、きめ細かな個別的な評価法が必要になることが示唆された。
韓国でのX線診断領域の医療従事者の職業被曝の実態
従事者の放射線診療従事者の循環器系疾患のリスク
Incidence and mortality risks for circulatory diseases in US radiologic technologists who worked with fluoroscopically guided interventional procedures, 1994–2008
全米での90,957人の診療放射線技師のうち、追跡できた63,482人を解析した結果、脳卒中罹患のリスク増加が見出されたとしています(HR=1.34, 95% CI 1.10 to 1.64)。
海外の取り組み
ORAMED
ORAMED, Optimization of RAdiation protection for MEDical staff is a collaborative project funded in 2008 within the 7th EU Framework Programme, Euratom Programme for Nuclear Research and training
OECD/NEA
Information System on Occupational Exposure
ISOE network
Guidelines
放射性医薬品
公益社団法人日本アイソトープ協会
医学・薬学部会 放射性医薬品専門委員会
エックス線診療室内の放射線の飛跡
鉛1.5 mmの厚みの防護版を置いた場合
エックス線診療室内からの放射線の測定
測定デモ例:管電流を低下して照射しています
嚥下の造影
嚥下ビデオ透視検査時の放射線被曝線量
嚥下ビデオ透視検査時の放射線被曝による被検者の臓器線量
嚥下造影検査における患者被曝線量の低減と画像の計測精度向上に関する研究
防護衣の利用実態
全循研
放射線防護衣アンケート報告
IVRにおける術者負担の少ない防護用具の開発(第2報)-試作機(前回)の見直しと改良型防護用具の開発-
韓国政府の取り組み
Analysis of occupational radiation exposure doses at diagnostic radiology
過去の曝露
米国の放射線科医
Long-term Mortality in 43 763 U.S. Radiologists Compared with 64 990 U.S. Psychiatrists
日本看護協会
労災
医療従事者でのDNA損傷
准看護師
RI法
取扱いの制限
第三十一条 何人も、次の各号のいずれかに該当する者に放射性同位元素又は放射性汚染物の取扱いをさせてはならない。
一 十八歳未満の者
二 心身の障害により放射線障害の防止のために必要な措置を適切に講ずることができない者として原子力規制委員会規則で定めるもの
2 何人も、前項各号のいずれかに該当する者に放射線発生装置を使用させてはならない。
3 前二項の規定は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)により免許を受けた准看護師その他の原子力規制委員会規則で定める者については、適用しない。
産業保健の視点から
2.レントゲン撮影等の放射線被ばく対策
◆コラム 放射線単位のいろいろ
◆コラム 診断参考レベルを用いた患者被ばく防護の最適化
◆コラム 診療放射線技師さんとの立ち話で役立つ線量値あれこれ
◆コラム 水晶体等価線量限度(20mSv/年)引き下げの経緯
◆コラム いろいろな放射線防護装具
かつての状況
石坂 正綱, 遠藤 幸一.放射線業務従事者の障害に関する調査研究
IAEA
Person-Specific Organ Dosimetry in Radiation Protection: Do We Have the Necessary Computational Tools for a Paradigm Change?
ORPNET
一般撮影の介助でのピットホール指摘例
廣澤 文香.第 7 回放射線防護セミナーを受講して放射線防護に関する講義の中で特に興味深かったのは五十嵐先生が「透視系だけではなく CT や一般撮影にも防護メガネが必要ではないか」と話されていたことです。
総説
藤淵 俊王.医療分野における職業被ばくと放射線防護―放射線診療従事者の不均等被ばく管理―
実態調査
放射線業務手当
RIKEN. 放射線業務手当に関する不適切な支給について
鳥取県.特殊勤務手当見直し案に対する各部局意見への対応について
JAEA. 放射線業務手当等に関する調査結果について
砂田 毅, 木下 正弘, 木下 商策, 服部 恵子, 加藤 智雄.放射線手当の評価について—特殊環境手当の評価の試み
IAEA GSR part3
Requirement 27: Conditions of service
Employers, registrants and licensees shall not offer benefits as substitutes for measures for protection and safety.
3.111. The conditions of service of workers shall be independent of whether they are or could be subject to occupational exposure. Special compensatory arrangements, or preferential consideration with respect to salary, special insurance coverage, working hours, length of vacation, additional holidays or retirement benefits, shall neither be granted nor be used as substitutes for measures for protection and safety in accordance with the requirements of these Standards.
人事院規則
放射線取扱手当(第14条)
環境省が発注する除染特別地域(参考)における除染関連業務
除染特別地域内における除染作業員に対する特殊勤務手当について
Q1除染作業員に特殊勤務手当が支払われていないとの報道がありましたが、事実ですか?
電力会社各社の扱い
放射線への被ばくに対する「放射線手当」の位置づけのものではない。
- 放射線作業者に対する手当としては、「管理区域内作業(汚染のおそれのない区域を除く)」に対する作業手当がある。
- これは、放射線のレベルではなく、管理区域服への更衣、防護具の装着などの作業負荷の大きさに応じて支給されるもの。
- このため更衣の必要がないという理由から、「(汚染のおそれのない区域を除く)」とされている。
放射線業務従事者登録
英国:Health and Safety Executive
Using ionising radiation
Apply to notify, register or get consent
防護具と健康診断
GSR part3
3.108. Programmes for workers’ health surveillance as required in para. 3.76(f):
(a) Shall be based on the general principles of occupational health [19];
(b) Shall be designed to assess the initial fitness and continuing fitness of
workers for their intended tasks.
GSG-7
9.54. Examples of personal protective equipment include reinforced clothing, ventilated suits, protective glasses and respiratory protective equipment. Workers who may have to use such equipment should be properly trained in its use, operation, maintenance and limitations. It should be ensured that personal protective equipment correctly fits the wearer.
労働安全衛生法制度
淀川亮 & 三柴丈典. リスクアセスメントを核とした諸外国の労働安全衛生法制度の背景・特徴・効果とわが国への適応可能性に関する調査研究の紹介. 労働安全衛生研究 advpub, (2020).
拘束力を持たせるべきとの議論例
医療分野はその他の分野とは放射線業務従事者の放射線防護に関する認識に大きな差があるため、医療従事者対象の「教育用マニュアル」ではなく、出来るだけ拘束力のある「ガイドライン」としてまとめられたい。
労働基準監督署
医療機関における放射線管理に関する説明会
インターネット監視による労働条件に係る情報収集事業
労働衛生の3管理
防護具に関する法令
防護具の開発例
東北大学
画像下治療(IVR)術者用の新しい放射線防護具を開発 放射線白内障等の発生リスク低減へ
リソース情報
出生性比
線量評価
線量計を用いない場合
New technology measures radiation doses without a dosimeter
Using cameras and computers to accurately measure radiation for doctors
「第14次労働災害防止計画」について労働政策審議会が答申
安全衛生関係統計・災害事例について
個別分野
出典
疫学研究
リスク推計
Case report
看護師教育の課題
成人看護2-3 放射線診療と看護、新看護学5 .医学書院.1990

課題
- 最適化分析のための定量的な判断材料の提供
- X線管からの漏えいは少ないので「エックス管(球)」から遠ざかるようにとあるのがミスリーディング
医療従事者の臓器線量
Choi Y, Shil Cha E, Jin Bang Y, Ko S, Ha M, Lee C, Jin Lee W. ESTIMATION OF ORGAN DOSES AMONG DIAGNOSTIC MEDICAL RADIATION WORKERS IN SOUTH KOREA. Radiat Prot Dosimetry. 2018 Apr 1;179(2):142-150. doi: 10.1093/rpd/ncx239. PMID: 29106680; PMCID: PMC6257005.
Lee WJ, Ko S, Bang YJ, et alOccupational radiation exposure and cancer incidence in a cohort of diagnostic medical radiation workers in South KoreaOccupational and Environmental Medicine 2021;78:876-883.
ガイダインスリポート
最適化
Final Report Summary – ORAMED (Optimization of radiation protection of medical staff)
泌尿器科
線量拘束値
設けるべきとの示唆例
BASIS
GSR Part 3 Requirement 21 Para. 3.77 and GSG 7 Para. 3.29 state
that: “Dose constraints are set separately for each source under control and they serve as boundary conditions in defining the range of options for the purposes of optimization of protection and safety. Dose constraints are not dose limits: exceeding a dose constraint does not represent noncompliance with regulatory requirements, but it could result in follow-up actions.”
OBSERVATION
Dose constrains are not used in the hospital.
S19: Suggestion
The dose constrains should be established, with the guidance of SLAERC.
SLAERCはSri Lanka Atomic Energy Regulatory Council
出典
線量分布把握からの設定の模索例
Tsapaki V, Kottou S, Vano E, Komppa T, Padovani R, Dowling A, Molfetas M, Neofotistou V. Occupational dose constraints in interventional cardiology procedures: the DIMOND approach. Phys Med Biol. 2004 Mar 21;49(6):997-1005. doi: 10.1088/0031-9155/49/6/010. PMID: 15104322.
中央値と算術平均値の比較から分布特性の情報が得られるでしょう。
労災疾病臨床研究事業費補助金
放射線防護マネジメントシステムの適用と課題解決に関する研究(研究代表者:欅田 尚樹)
過去の放射線曝露
我国診療放射線技師の死亡調査(1973-77年)ならびに蓄積線量と死亡率の関連
X線以外を用いる方法
近赤外線(脱X線型観察装置)
カテーテル血管内手術シミュレーションのための脱X線型シミュレータ