頭のエックス線CT検査を受けました。
エックス線CT検査として、
・40 mGy
・1 mSv
という値を提示されました。
どちらが正しいのでしょうか?
値が大きい方を用いるべきじゃないかなあ。
その方が安全側ぽいし。
線量の種類が異なっておるのじゃ。
どういう風に?
40 mGyはエックス線ビームが直接あたった頭の部分の線量じゃ?
1 mSvは全身での線量の受け方を示しておる。
強いビームがごく局所にあたるのと弱いビームを全身に受ける場合を統一的に扱おうとしておるのじゃ。
リスクの評価は?
各臓器に受けた放射線の量を基に各臓器でのがんのリスクを考えてそれを全体で合算することがお勧めされておる。
面倒だね。
単純には実効線量を用いればよいじゃろ。
ただし、年齢によってリスク係数は最大で数倍異なっておる。
そんなの薬の影響と同じで臨床医は当然考慮するじゃん。
あまり複雑な指標を使ってもしょうがないと思う。
ところで、よく200 mGyを超えなければOKって聞くけど、
5回、エックス線CT検査を受けたら、駄目と言うこと?
そんなことはない。
200 mGyは、それだけの線量であれば事実上リスクは無視できるということで用いられておるようじゃ。
放射線診療は、多少リスクがあっても、有益性がそれを上回れば行うが合理的じゃ。
また、ここでの200 mGyとは低線量の上限という意味で用いられておるので、実効線量である200 mSvと考えてよい。
リスクが無視できるって本当かなあ。
きちんと疫学調査したらリスクを検出するんじゃないの?
かなり難しい話じゃ。
バックグラウンドでのがん死亡リスクが10%の集団で、
放射線の過剰リスクが10%/Gyであるとすると、
検出力80%、有意水準5%を確保するために必要な標本サイズは、
線量が100 mGyの場合6,400人とされておる。(ICRP Pub.99)
検出力ってなあに?
真の差をきちんと見つける確率じゃ。
80%だと10回疫学調査すると2回は本当にある差を見つけられん。
有意水準って何だっけ。統計の授業で聞いた気もするけど。
本当は差がないのに間違って差があるとする確率を5%以下にするということじゃ。
100個の研究があると5個も間違えちゃうのか。
なんだか疫学はいい加減だなあ。
例を示そう。
原爆被爆者における固形がん罹患率:1958-98 年
Radiation Research 第168 巻、2007 年7 月号
の表9じゃ。
5-100mGyだと過剰発症割合は81/27,789=0.3%じゃ。
なかなか微妙なデータだね。
この差を検出するのは事実上不可能じゃ。
やはり疫学研究の意義は乏しいのじゃないかなあ。
そんなことはない。
不確実性に伴う限界をきちんとわきまえて使えば有益な情報が得られる。
皆さんも質のよい疫学研究への協力依頼があったときには是非前向きに検討されてくだされ。