それぞれの患者にとって必要な放射線診療は、病状などにより大きく異なります。
このため、作業者のように患者の個人線量に限度を設けることは適切ではありません。
何故なら、線量限度を設けることは、あるべき診療を妨げることになりかねないからです。
診断参考レベルは、放射線診断で通常用いられる標準的な線量を調査し、これに基づいて導入されるものです。
導入された診断参考レベルは、それぞれの医療機関で診断に用いる放射線量と比較され、それと大きく違わないことを確認することにより最適化を進めるツールとして使用されます。
もちろん個々の患者ではその体格や病態によって用いる放射線量が大きかったり小さかったりするのは当然ですが、その医療機関の平均的な放射線量が理由もなく診断参考レベルと隔たっているとすれば改善すべきであると考えられます。
診断参考レベルの設定、臨床線量の診断参考レベルへの適合性の検証には、被検者の状態、診療の目的、線量測定、画質の担保、撮影機器の設計、品質保証・保守管理などの多くの要素が関わってきます。
例を挙げると、X線CTで表示される撮影線量CTDIの扱いが機器メーカによって様々であり、撮影条件自動適正化機能を搭載したX線CTでは、機器メーカの設計・初期設定・チューニングに撮影線量が依存し、各医療施設だけでは診断参考レベルに対応しきれないことが判明してきました。旧世代のCT装置で撮影条件が固定的であった時代とは診断参考レベルの概念が大きく変貌しつつある現在では、適正な撮影線量の実現には機器の設計・品質保証・保守管理が鍵となるのです。このように診断参考レベルは医療放射線に関わる他の要素と切り離すことができません。
本研究班では、国内における歯科領域・医科領域の診断参考レベルの具体的な値を提示するとともに、診断参考レベルの設定や運用に関する重要な事項を解析し考察しました。
UNSCEAR
UNSCEAR Global Survey On Medical Radiation Usage and Exposure from 2005 onwards
オーストラリア政府の取り組み例 Australia
Monitoring Radiation Doses From Diagnostic Radiology
オーストラリアでの頭部X線CTによる線量は 2002年に0.8 mSvであったのが、2008年には1.2 mSvと50%と増加しました。
このため、The Australian Radiation Protection and Nuclear Safety Agency (ARPANSA)では、2010年の前半に一般的なMDCTの手技と線量をWebを用いて調査することを計画しています。
この調査の主な目的は新しい技術がX線CTで患者さんが受ける線量のインパクトを明らかにすることです。
この調査の結果は、国内での診断参考レベルの設定に活用されるでしょう。診断参考レベルは、負担なく計測できる量を用いており、各医療機関でのレベルをそれぞれ確認できるので、結果として、もしも不適切な手技であったとすると、それを改善できる可能性があります。
日本 Japan
DRL 2020Japan
DRL 2020 English version
厚生労働科学研究班
J-RIME
「最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定」(平成27年6月7日)
医療放射線防護連絡協議会、日本医学物理学会、日本医学放射線学会、日本核医学会、日本核医学技術学会、日本歯科放射線学会、日本小児放射線学会、日本診療放射線技師会、日本放射線影響学会、日本放射線技術学会、医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)は共同で、CT、一般撮影、マンモグラフィ、口内法X線撮影、IVR、核医学検査の診断参考レベルを設定しました。
参加報告
診断参考レベルに係る調査
J-RIME DRL-WG CTプロジェクトチーム:診断参考レベル改訂へ向けたCT線量調査実施のお知らせ
IVRに関する医療被ばく実態調査及び線量評価
日本医学放射線学会
愛知県放射線技師会の取り組み
診断領域X線装置の出力測定(患者被曝の最適化)についてのアンケート調査
放射線医学総合研究所の取り組み
関連した取り組み
平成27年度 日本放射線技術学会 中国・四国支部 夏季学術大会
画像情報研究会 教育講演
奥田 保男.放射線医学総合研究所.ついに公表された診断参考レベルと
我々に課せられた役割
山本勇一郎.大阪大学大学院.医学系研究科医療情報管理の立場から 現場での患者被ばく線量管理システム構築の実践に向けて ~診療放射線技師は、誰に何を伝えるべきなのか~(2015.7.5)
データの取得
多施設間IVR被ばく線量解析研究を支援するためのシステム構築
固体線量計を用いた頭部IVR診断参考レベルの策定と術者水晶体被曝の評価
研究倫理審査
オプトアウトの利用例
(5)研究成果の公表について
:日本国内の脳血管内治療に関する診断参考レベル構築のための調査研究
本研究で収集されたデータ(連結不可能匿名化されたもの)の一部、ないしは全部を将来、1)日本脳神経血管内治療学会と日本放射線技術学会の共同管理下に、外部閲覧が可能なアーカイブデータとして公表します。2)国際放射線防護委員会(ICRP)、国際原子力機関(IAEA)、世界保健機関(WHO)、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)、国際放射線単位測定委員会(ICRU)などの国際機関で行われる国家間比較世界調査のための基礎的データとして供与するなどの二次利用を想定していますが、これに対する対象患者のオプトアウトも保証します。
注:国際放射線防護委員会や国際放射線単位測定委員会は国際機関ではありません。
末梢動脈疾患に対する血管内治療の医療被ばくに関する多施設共同後ろ向き観察研究
施設によって手続の実態は異なっています。
日本CT検診学会(大腸CT部会)DRL設定プロジェクト
日本救急撮影技師認定機構.外傷全身 CT 撮影における被ばく線量(CTDIvol と DLP)の実態調査
我が国の小児CT検査で患児が受ける線量の実態調査
その他
当病院でCT検査を受けた皆様へ (臨床研究に関する情報)
研究者:福田 晋久.診断参考レベル導入を目指した CT 検査患者被ばく線量の推定」
診断参考レベル設定のためのX線CT検査に関する医療被ばく実態調査及び線量評価
脳血管造影における患者被ばく分布および線量に関する検討
臨床画像を用いた核医学画像評価用ファントムの開発に関する研究
Yiming Gao, Brian Quinn, Neeta Pandit-Taskar, Gerald Behr, Usman Mahmood, Daniel Long, X. George Xu, Jean St. Germain, Lawrence T. Dauer,Patient-specific organ and effective dose estimates in pediatric oncology computed tomography,Physica Medica,Volume 45,2018,Pages 146-155
Alshamrani K M, Alkenawi A A, Alghamdi B N, et al. (May 13, 2021) Patient-Based Dose Audit for Common Radiographic Examinations With Digital Radiology Systems: A Retrospective Cross-Sectional Study. Cureus 13(5): e15005.
Coronary CT angiography radiation dose trends: A 10-year analysis to develop institutional diagnostic reference levels
Patient-specific organ and effective dose estimates in pediatric oncology computed tomography
研究の対象外であるとしている例
Alessio AM, Farrell MB, Fahey FH. Role of Reference Levels in Nuclear Medicine: A Report of the SNMMI Dose Optimization Task Force. J Nucl Med. 2015 Dec;56(12):1960-4. doi: 10.2967/jnumed.115.160861. Epub 2015 Sep 24. PMID: 26405164.
X線診断透視領域での診断参考レベル設定に向けた全国実態調査
尚、今回の調査で収集される値は、医療法施行規則に定められた業務であるところの患者線量データの集計から得られるものであり、倫理指針における「研究」には該当しない1)こととして、第 5 回 J-RIME DRL WG 会合 (2019 年 7 月 13 日開催)にて合意が得られましたので、各施設で倫理審査を受審していただく必要はありません。
JSRTが提供している外部からの倫理審査を受け入れる機関の情報
企画委員会 倫理審査支援に関する検討班.外部からの倫理審査を受け入れる機関(2022年9月現在)
医師から定期的なフィードバックを求められている例
東京慈恵会医科大学附属病院 阿部 由希子先生. 「DRLs2020公表前後における当院の血管内治療の被ばく線量に関する検討」
巻頭言
放射線防護委員会&日本の診断参考レベル元年
報道の検証
「医療被曝抑制へ基準」で訂正あり 関係団体も指摘
画質の評価
エネルギー差分低コントラスト強調CTシステムの開発‐フィルタ材料の特性測定・低コントラスト分解能ファントムの作製‐
日本学術会議
救急撮影
外傷全身CT撮影における被ばく線量 (CTDIvolとDLP)の実態調査
厚生労働省.医療放射線の適正管理に関する検討会
画像診断管理加算3
公益社団法人日本医学放射線学会.画像診断管理加算3及び頭部MRI撮影加算の届出に関して
(9) 関係学会の定める指針に基づいて、適切な被ばく線量管理を行っていること。その際、施設内の全てのCT検査の線量情報を電子的に記録し、患者単位及び検査プロトコル単位で集計・管理の上、被ばく線量の最適化を行っていること。
線量を患者単位で管理する場合の問題点
厚生労働省.医療放射線の適正管理に関する検討会
○青木構成員 今おっしゃったことはまさに重要な点で、その場でどのくらい被ばくしたかを記録することと、それからそれをいかに後に外に出しやすくするか。外に出すのは結構大変なところがあります。放射線の検査は今、想像以上に多いわけで、月に数万件になってしまうので、それをどうやってハンドルするかというのが現場の負担になるのだと思います。 一つ、今、画像診断管理加算という保険の仕組みで放射線の管理もしていこうという動きはあると思いますので、そこをうまく利用して管理を進めていけばいいのではないかというのが、特に大きい病院に関しては可能なのではないかと思います。ソフトがありますので、そういったものを導入できるように加算がついていけば導入して。そういうものを導入しないと、一例一例どのくらい被ばくしているかというのは、そこでは出てきても、それを統計的に使う、取り出して統計的に使っていくということは、何らかの専用のソフトなどシステムがないと、今、数が多いので難しい状態だと思います。
課題
情報を患者の利益にどう還元するか?
ICRP
ICRP Publication 135 Diagnostic Reference Levels in Medical Imaging, Ann. ICRP 46 (1), 2017
JIRA
放射線・線量委員会
UK NICE
Radiation dose monitoring software for medical imaging with ionising radiation
持続的に投与する放射性物質の量の扱い
国際比較
放射線治療での利用
宮岡 裕一.放射線治療における被ばく線量を考える IGRTの線量測定及び管理技術
放射線治療における CT と位置照合および位置確認用 X 線に対する医療被ばくの多施設実態調査
画像誘導放射線治療における CBCT の撮影線量評価および治療線量との合算線量評価に関する研究
これらの研究でもオプトアウトが利用されています。
放射線治療かたろう会.IGRT QA/QC Working group report Supplement – Imaging Dose –
AAPM
2016 AAPM Annual Meeting – Session: TG180: Imaging Dose During RT