アイソトープ手帳10版ではI-123の項で娘核種がTe-123 mと記述され、Te-123 mの主な生成反応でI-123→Te-123 mとあります。I-123を投与されるとTe-123 mが壊変する際に放出される放射線エネルギーにも曝されるのでしょうか?
99.9956%のI-123は、半減期が119.25日のTe-123 mを介さずにTe-123になります。
アイソトープ手帳11版ではTe-123 mの主な生成反応が修正されています。I-123の娘核種としてTe-123が明示されました。
アイソトープ手帳11版でも、I-123の項で娘核種がTe-123 mと記述され続けているのは何故ですか?
Te-123 mには、いくつかの種類があり、半減期が119.25日のものではないと考えられます。0.0044%のI-123は、Te-123 mに壊変するからです。
I-123の娘核種であるTe-123により被ばくするのでしょうか?
被ばくします。
I-123がすべて壊変すると1.53E+13個のTe-123ができます。
一方、Te-123の半減期が1E+13[y]であるために、100年間生きたとして、その間に壊変する数は110個となります。
それらの壊変時に放出される放射線に曝されます。
I-123の娘核種にであるTe-123により被ばくは、「ジワリジワリの線量」と考えてよいでしょうか?
I-123の壊変数に比べると、1E-11の割合なのでそう考えられてもよいと思います。
Te-123に関しては、実質的には安定同位体と考えてもよいのかもしれません(=被ばくするが実質上は被曝しないと考えてもよいと思われます)。
I-123の娘核種であるTe-123 mにより被ばくするのでしょうか?
被ばくします。
I-123の線量に対して最大で10万分の4程度の寄与があると考えられます。
壊変図
http://www.nucleonica.net/wiki/index.php?title=Decay_Schemes
アイソトープ手帳第11版
より詳しい壊変図
INDESでの計算例(成人・血液注入)
I-123
Te-123m
Te-123
製剤中の不純核種
I-123製剤に含まれるI-124やI-125による放射線にも曝露しますか?
曝露します。不純核種の量が多かったり、半減期が長かったり、臓器への集積性が高いと、それだけ曝露する量が多くなります。医療機関ではそのような曝露も十分に考慮しています。
製薬会社による説明例
放射性医薬品基準 解説書
ヨウ化ナトリウム(123I)カプセル
異核種 本品について、ガンマ線測定法の Ge 半導体検出器による測定法の放射能の定量により放射能を測定するとき、検定日時において、ヨウ素 123 以外(注 5)の放射能は総放射能の 0.3%以下である。
I-124のクリアランスレベルは?
廃棄物管理を考えた場合のTe-123mの寄与
国全体
日本での年間のI-123の使用数量はアイソトープ流通統計(2016年)によると34 TBqとされているので、Te-123mに換算すると 7 MBq程度になります。
事業所
5 GBqのI-123に対し1kgを超える程度の廃棄物の量であれば、その後、生成されるTe-123mの濃度は、IAEA RS-G-1.7で示されているTe-123mのクリアランスレベルである1 Bq/kgを超えません。
同様の相談への対応例(WBC検査の希望に対応なさっています)
取扱主任者になった診療放射線技師(この人,こんな所:平田 誠氏)