ICUに鉛ガラスは必要?

トータルに考えよう

大変よう。職場でもめ事発生だわ。

何々どうしたの?

看護部でICUの鉛ガラスの予算要求したら、必要なしってカットされちゃったのよ。
放射線防護にはしゃへいが有効って聞いたけど、あれは嘘だったのかな。

診療放射線技師さんにはICUから鉛ガラスを要求されたことなんて聞いたことないって言われたけど。

何!私たちだけわがまま言っているというの?
放射線部の人は、私たちの本音をちゃんと理解してくれているのかなあ?

まぁまぁ。
予算は限られておるから、優先順位を考えたり有効性を吟味することも必要じゃろ。

あら。私たちが放射線にさらされてもよいってこと。

ICU勤務だと、どの程度の線量になるのかな。

救命救急センターのある日のポータブル撮影の例じゃ。

撮影部位部位詳細撮影角度枚数管電圧kV撮管電流mA照射時間sec
膝関節右側1501000.16
胸部1802500.02
膝関節側面1501000.16
膝関節側面1501000.16
骨盤1652500.25
骨盤1652500.4
骨盤1702500.2
骨盤1802500.4
骨盤1662500.2
下腿右側1542500.12
下腿右側1542500.12
足関節右側1542500.12
胸部1542500.02
骨盤1702500.25
骨盤1652500.16
頚椎2652000.16
頚椎1652000.16
腹部1702000.25
足関節左側1501000.12
足関節左側1501000.12
膝関節両側1501000.16
手関節右側2501000.05
膝関節左側2501000.16

放射線部のスタッフも大変ね。

その施設での6週間の撮影部位別検査件数記録じゃ。

項目検査件数
胸部Sit76
胸部SU176
頚椎正面,1
頚椎側面74
骨盤正面72
小児胸腹部SU1
足関節(正面)1
足関節(側面)1
頭蓋正面2
頭蓋側面2
腹部SU29
総計435

平成18年度厚生労働省科学研究費補助金 医療技術評価総合研究事業「医療放射線分野における法令整備等含めた管理体制に関する研究(案:最終的には報告書に含まないことになりました)」(主任研究者:油野民雄)分担研究「救急救命診療での放射線診療の安全確保に関する検討」(分担研究者:山口一郎)

線量はどうだったの?

6週間の測定結果じゃ。
ベッド側の壁:490 μSv
隣のベッドとの間:150 μSv

ベッドの壁の線量が高かったのはどうして?

側面方向への照射が多かったようじゃ。
初療室の頚椎側面では、一次線錐のシールドが求められそうじゃ。

医療スタッフの線量は大丈夫なのかしら。

この医療機関では、水平方向の照射時には距離を保つだけでなく、退避場所も診療放射線技師が指示しておるそうじゃ。
退避がちゃんとしておれば、線量は小さいと考えられる。

実際に個人線量をモニタリングしている例はないの?

スタッフの線量をモニタリングしている例では、最大でも0.4 mSv/5年とあるから、きちんと対応しておれば問題はない。

総合的に考えて防護するのがよいのじゃないかな。

うちのICUだとここまで下がれば大丈夫ラインが代々先輩の看護師から受け継げられているみたい。

どの程度の放射線検査があって、どの程度介助業務に従事するかで線量は決まる。
このように、事前に予測できるので、心配であれば、放射線部に相談するとよいじゃろ。
放射線部のスタッフは看護師さんから質問がないのはどうしてだろうと疑問に思っているそうじゃ。

お互いプライドがあるからかなあ。
心配なことがあれば率直に相談すべきね。

日本診療放射線技師会では、このような講習会を開催している。

ICUでのポータブルX線検査で、どの程度の放射線を受けるの?

近い距離での繰り返し介助を仮定すると、
患者さんから50 cmの距離で介助した場合、検査の条件にもよるが、1週間の線量は0.6 mSv程度になりえそうじゃ。

女性の放射線診療従事者の線量限度はいくらだったかしら。

5 mSv/3月間じゃ。

超えるかもしれないね。

近くで繰り返し介助するのであれば、適切な防護が必要ね。
でも、近くで繰り返し介助するのは考えがたいわね。

患者さんからの距離を4 mにすると1週間の線量30 μSv程度に過ぎん。

これなら、どうでもよい線量ね。

厚さ1.0 mmの鉛衝立を設置すると1週間の線量は1μSv程度になりだね。
バックグラウンドが0.05μSv/hの場所だと、ただいるだけで1週間 8μSvの線量を受けることになるので、衝立の意義は乏しいから、予算の有効活用という観点からは疑問が残りそうだ。

この推計では、
・ 1週間の検査件数を60回と仮定
・ うち20回の検査を介助
・ 距離が取れる場合は全例の介助を仮定
しておる。

ICU

計算は結構大変なのかなあ?

茨城県立医療大学の佐藤斉先生が、計算条件の設定と計算結果の処理をエクセルで行うツールを作っておられるので、それを使えば容易にできる。
検出器応答でも同じようなものがあるぞ。

インターフェースはどんどん改善されそうだね。

理屈を理解して限界をわきまえて活用するとよいのではないかな。

なんでも総合的に考えるということかな。

この前の研修で習った、
安全な医療を提供するための10の要点
にも、
(5) 部門の壁を乗り越えて 意見かわせる 職場をつくろう
というスローガンがあったわ。
お互いに話し合うことが大切ね。

感度のよい環境放射線モニタリングでのX線検診車からの放射線検出例

自動観測局近傍におけるX 線発生装置使用の影響調査
中俣宏二郎(鹿児島県川内環境監視センター).環境放射線調査における結核検診車の影響.平成15年度放射能分析確認調査技術検討会.2004
中谷 光(石川県保健環境センター).空間放射線の変動について−レントゲン検診による影響−.第45回環境放射能調査研究成果発表会.2003
検出された放射線はいずれも極微量で健康への問題は無視できます。
モニタリングポストで検知された集団検診時の X 線の特徴

感度のよいシンチレーションサーベイメータによる測定例

エックス線検診車室内
漏えいする放射線を検診車の操作室や検診車の外側で検出できますが、極微量で健康への影響は無視できます。
放射線は一般に測定が容易です。
医療機関では放射線管理測定を行い、放射線をきちんと管理しています。
百瀬琢麿さんの指摘
ここで、サーベイメータの計数音について若干お話をしたいと思います。法令に定める退出基準の4Bq/cm2の汚染であっても、指示値は測定レンジのほぼ中央、計数音はほぼ連続的に鳴ると言われています。放射線測定に関する知識が少ない一般の方は、サーベイ実施中の大きな針の振れや連続的な計数音で不安になる恐れがあります。そのため、医療関係者は、患者やその家族の不安を軽減できるように、サーベイメータが放射線に対して極めて敏感であること、計数音が連続的に鳴るような汚染密度であっても、被ばく線量の観点からは微量なレベルであること、そして本人とその家族への健康の影響がないことを十分に理解しておくことが必要であると考えています。
木下冨雄先生の指摘
それから第4に、先ほどどなたかがおっしゃったサーベイメータの感度の問題があります。お話のように、現在のサーベイメータの感度は非常にいいようです。プロ仕様とすれば、当然それでいいわけですが、一般の公衆は、針が振り切れたり、音が連続音として強く出てくると、非常に怖いという感情を持つわけです。耳から来るような音とか、皮膚に来るような感覚に由来する不安のほうが、頭で感じる不安よりもレベルが高いことが知られていますので、このような問題もあろうかと思います。

平成21年度の日本公衆衛生学会の発表から

飯島 純夫.環境測定実習結果からみた病院環境の評価(第1報:測定結果の概要)
環境測定実習結果からみた病院環境の評価
環境測定実習結果からみた病院環境の評価
MRIは電離放射線を発しないので、この例では、MRI室では自然放射線のレベルが高いと考えられます。
環境測定実習結果からみた病院環境の評価
資料

検診車のしゃへい構造を考慮した安全評価

事例の概要

検診車であるため床・天井部分には鉛・コンクリートといった遮蔽物を設けることが難しい(特に、天井は重さに耐えることが出来ない)ため遮蔽計算では、遮蔽が全くないものとして計算し提出されておりました。実測では、(1回曝射あたり0.05μSvぐらい)の漏洩がありました。届出に、実測値を3ヶ月あたりの線量値を算出してもらっているのですが、1検診会場あたりの受診者数を500人(最大予定検診者数)・出動回数週5日として算出されていたため、 1.625 mSvとなり管理区域の線量限度を超え、計算値・実測値ともに不可となっておりました。

NCRP法とモンテカルロ法の比較

【計算の条件】
検診車の幅: 2 m
検診車の遮蔽高さ: 2 m
 天井の開き角度: 2.0 ラジアン
一人あたり実効稼働負荷: 3 mAs/人
1日あたりの人数: 500 人/日
患者入射面ビーム強さ: 160 μGy/mAs
散乱線の強度: 360 μGy/d(散乱係数0.15%)

【計算結果】

評価点までの距離(m)24
線量(μSv/d)
NCRP法5614
モンテカルロ法 20.4

散乱線の強度
検診車の天井から放射線漏えい

類題

透視中に造影剤を投与する場合に看護師の立ち会いが必要か?

医療安全上、立ち会いを求める場合があるとしている例
その考え方は望ましくないのではないかとされた例(リンク切れです)
造影剤注入時などX線照射中に撮影室内へ入る場合は、適切な放射線防護を行う。

最適化と監査

東京都

平成24年監査結果に基づき知事等が講じた措置(第1回)
公共建築工事標準単価積算基準との比較検討がなされている例があります。

業務の手順を見直した例

上江 孝典. ECPR 施行時において X 線防護具を用いた被ばく低減効果について
救急救命士の研修対応としての放射線防護策の検討を行うことで放射線防護への関心が高まり、看護職からの提案に基づきエックス線診療室内での待機を取りやめ室外に退避なさることになったそうです。

女性の線量限度

放射線審議会

第144回総会

記事作成日:2009/12/15 最終更新日: 2023/05/08

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