International Conference on Radiation Protection in Medicine (RPM2010)

ヨーロッパでの診断参考レベルの設定および更新が進んでいるようです。

2010年9月1日から3日まで、ブルガリアのヴァルナで”International Conference on Radiation Protection in Medicine (RPM2010)”が開催されました。


International Conference on Radiation Protection in Medicine (RPM2010) at varna, Bulgaria 参加報告

放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター
医療放射線防護研究室 藤井啓輔 赤羽恵一

2010年9月1日~3日、ブルガリア東部・黒海西岸に位置するヴァルナ市内のリビエラ ビーチホテルで開催されたRPM2010に出席した。本会議の運営主体はNational Center of Radiobiology and Radiation Protection (NCRRP)およびBulgarian Society of Biomedical Physics and Engineering (BSBPE) で、支援組織はICRP, IRPA, IOMP, ISRRT, EC, EFOMP, ESTRO, ARSPI, AAPMである。54か国、260名程度が参加し、その多くがヨーロッパからで、日本からの出席者は4名であった。RPM2010では、Scientific Session, パネルディスカッション、教育講演が行われた。

概要

Scientific Session

Scientific Sessionでは、招待講演、口頭発表、ポスター発表で総数180を超える発表があり、次の9項目に分けて行われた。
1.高線量を伴うX線診断検査(CT, PET/CTなど)、IVRにおける患者および医療関係者の放射線防護
2.放射線影響とリスク
3.放射線治療における放射線防護と品質管理
4.核医学検査における患者および医療関係者の放射線防護
5.X線診断検査(主に単純撮影および透視)における正当化、最適化および患者線量の測定、品質管理
6.Clinical Audit (臨床監査)
7.放射線防護に関する教育と促進
8.線量調査、診断参考レベル(DRL)、患者線量の追跡
9.X線集団検診における正当化、最適化

パネルディスカッション

パネルディスカッションは、次の6項目が行われた。
1.ICRP, EC, WHO, IAEA, IOMP, IRPAなど各組織による医療放射線防護に関する活動内容
2.患者に対する放射線防護
3.放射線防護の教育と促進に関する専門組織の役割
4.診療行為の正当化
5.リスクコミニュケーション
6.将来(10年後)の医療放射線防護

教育講演

教育講演では、
1.放射線治療における事故から学んだ教訓
2.診断参考レベルは現在および将来にどのように役立つか
について話された。

主な発表テーマ

Scientific Sessionでは一般撮影、透視、CTなどのX線検査およびIVRにおける患者および医療従事者の放射線防護に関する内容が多く見られた。その一部では、小児患者に対する放射線防護について発表があり、以下の内容が紹介されていた。
・ 小児放射線科医や医学物理士の利用
・ 担当医に対する教育訓練
・ ガイドラインの導入、更新および使用の促進による担当医の正当化意識の向上
・ 小児体型に応じたプロトコールの使用
・ AEC(自動露出制御機構)等の使用の最適化
・ 患者線量の評価および記録
・ 患者線量評価の精度向上 (患者それぞれの体型に適した線量評価)
・ 小児診断検査に適した診断参考レベルの設定およびその更新
・ 最適な撮影条件の選択
・ 小児患者の両親へのインフォーム (Image gently ガイダンス)
・ 特定の臓器(水晶体や甲状腺など)に対する放射線シールド

全体を通じての所感

今回の会議を通じて、診療行為は放射線防護の基本となる正当化、最適化に基づいて行われる必要があり、正当化には、ICRP, IAEAをはじめ様々な機関から出されている報告書およびガイドラインが参考となり、教育訓練による担当医の放射線防護に対する意識の向上が必要である。また、線量の最適化では、AECなど最新の線量低減技術を適切に利用すべきであることを再確認することができた。
また、より良い放射線防護の鍵となる項目として、以下の内容が挙げられた。
・ 医療従事者(医師、看護師、放射線技師他医療スタッフ)との連携強化
・ 規制当局や保健当局等ステークホルダーとの協調
・ 診断装置のQA/QC
・ 教育訓練
・ 患者線量の評価および記録 (Smart Card)
・ 診断参考レベルの設定および更新
特に、診断参考レベルについては、ヨーロッパ諸国においてRISやPACSを利用した線量調査が積極的に行われ、各国の診断参考値が紹介されていたことから、ヨーロッパでの診断参考レベルの設定および更新が進んでいる印象を受けた。

IRPAのKenneth R. Kase会長による報告

President’s Report on the International Conference on Radiation Protection in Medicine

記事作成日:2010/07/10 最終更新日: 2013/03/24