日本核医学会からの情報提供
看護スタッフのための核医学Q&A
放射性物質の基本的なことがわかりやすく解説されています。
吸入による内部被ばく
空気中の放射性物質を吸入することによる線量を教えてください。
A.公表されているデータを用いて計算してみます。
これまでに公表されているデータでは,ダストサンプリングで計測されたヨウ素131とセシウム137の濃度が最も高かったのは、伊達郡川俣町山木屋です。
ヨウ素131は2011年3月25日の555 Bq/m3が最も高く、セシウム137は2011年3月30日の140 Bq/m3が最も高くなっています。
なお、2011年4月10日にはいずれも検出限界未満となっています。
ちなみに東京都の観測によると大気浮遊塵中の放射性物質の濃度が最も高かったのは、3月15日の午前10時から午前11時で、ヨウ素131は241 Bq/m3、セシウム137は60 Bq/m3でした。
一時間吸入あたりの預託実効線量は、
ヨウ素131:7.6E-03 mSv/h摂取
セシウム137:5.0E-03 mSv/h摂取
となり、もしも、この濃度が続いた場合には、1年間の吸入による預託実効線量は、
ヨウ素131:2 mSv/y摂取
セシウム137:43 mSv/y摂取
となります。
東京都の観測では4月28日には、都内での大気浮遊粉塵中のヨウ素131は0.1 mBq/m3、セシウム137は0.3 mBq/m3に低減(pdf file, 94kB)しています。
一日呼吸量を22 m3/dayとすると、一時間吸入量は0.92 m3/hとなりますので、この年間の吸入量に基づく線量計算は正しくありません。
この計算では、
・測定時刻以前の濃度が把握されていない
・ガス状のヨウ素131が加味されていない
・他の核種が考慮されていない
・環境中での低減では物理的減衰のみを考慮
・持続的な放出や環境挙動中での集積を考慮していない
という限界があります。
計算の過程
I-131濃度:555 Bq/m3
一日呼吸量
22 m3/day
一時間吸入量
0.92 m3/h
一時間摂取量
510 Bq/h
実効線量換算係数
1.5E-05 mSv/Bq
一時間吸入あたりの預託実効線量
7.6E-03 mSv/h摂取