目的
クローン病の患者での模擬低線量MDCTによる画質と診断成績を評価する。
材料と方法
25人のクローン病と診断がついているか疑われている患者(男性14、女性11;年齢範囲16-86歳)を対象とした35回のMDCTの検査がレトロスペクテイブに評価された。MDCTの画像(5 mm スライス厚)にノイズ指標 (NI) が18-35の低線量MDCTを模擬するようにvolume CT noise simulation softwareにより人工的にノイズが加えられた。175の MDCTの画像セットが作成され、2人の読影者によりランダムにレビューされ、主観的な画質や自信を持ってクローン病の所見を検出できるか5点法(1.明らかに所見がない;5.明らかに所見がある)で調べた。オリジナルのMDCT検査の画質、診断成績、線量が比較のための参照標準とされた。
結果
NIを18-25に高めた模擬低線量MDCTの画像は、画質と診断の正確さ(accuracy)が望ましいレベルにあり、平均のベースラインCTDIが16 +/- 3.34 (SD) mGyの標準線量スキャンと比べ、画質スコア4-4.9 vs 4.95と差がなかった(p = 0.4)。
NIを30-35に模擬した画像は、画像ノイズが過剰で診断成績が劣るため (range of image quality score, 3-3.6; weighted kappa = 0.25-0.37; p < 0.001)、望ましくないと考えられた。診断成績や参照標準で陽性の場合に読影者がクローン病と診断できる自信は、NIが25以下では30である場合(読影者の自信スコアは 4.5 vs 3.6, respectively; p < 0.05)やNIが35である場合(読影者の自信スコアは 3.2, p < 0.05)に比べて高かった。標準線量の検査に比べて、NIレベルが18-25である場合は、線量が31-64%に低減し、画像ノイズは皮下脂肪で19-27 HUであった。
結論
NIレベルが18-25の低線量MDCTを模擬したノイズを加工したMDCTの画像を用いたこの研究はクローン病の診断成績を低下させることなく線量を低減させることを示した。
内蔵脂肪測定の場合
筆谷 拓, 伊藤 良剛, 吉川 秋利, 大竹 正一郎.CTを用いた腹部内臓脂肪測定における撮影条件の検討
原子力施設等における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針
イ 肺がん検診における胸部 CT 検査は、当該検査による被ばく量を考慮し、低線量 CT 検診によることが推奨される。