MELODI 宣言
2010年11月18日
以下に示すMELODI理事会の宣言は研究の優先順位を示すものである。この研究の優先順位は、HLEGにより仕込まれたコンセプトに基づき作り上げられたMELODIの戦略的研究アジェンダの初版としてまとめられつつあるもので、 Network of Excellence DoReMiによる過渡的な研究アジェンダや 第1回 MELODI workshop (28-29 September 2009, Stuttgart)と第2回MELODI workshop (18-20 October 2010, Paris)のproceedingsをまとめたものでもある。
EURATOMによる R&T projects(研究とトレーニング)に関する研究提案募集は、ヨーロッパの放射線防護基準を改善し、科学的な知見への最大のインパクトを獲得するためのヨーロッパでの研究労力を順位付けし集中させ、研究の重複を避けるという政策ゴールにより導かれたものであり、ICRPにより勧告され(国際原子力機関の)基本放射線安全指針で規定されているように、放射線防護システムのために、現在の科学的な知見の基盤を整理するという位置づけの中にある。これらのゴールはMELODIによって全面的にサポートされる。
現在の放射線防護システムは主に疫学研究に基づく科学的知見をベースにしている。疫学研究は、約100 mSvを下回る範囲の線量に対する放射線リスクの大きさの評価に重要な役割を演じてきた。特に、長期間の低線量率曝露によるリスクや、内部被ばくによりリスクや発がん以外のリスクに関して、疫学研究は、低線量リスク研究にこれからも継続して貢献する。
しかしながら、低線量リスク推計のさらなる精度の向上は、疫学的な研究だけでなく実験的な機序を明らかにする研究をきちんと組み合わせて考える必要があるだろう。例えば、適切な分子や細胞のバイオマーカーを用いることで、放射線リスク研究のための将来の疫学研究(分子疫学)の価値を最大とすることが期待できる。
研究の成果を最大とするために、頑強で信頼できるバイオマーカーを曝露や細胞や組織レベルでの影響、もっとも重要なのは放射線関連疾患の指標として用いられることが必要である。研究は、常に現実を推計するにあたって関連する不確かさを含んでいる。
実験的な研究成果は、標的細胞での影響と組織環境(microenvironment)での影響と応答が放射線誘発疾患に関連していることを示唆している。異なった線量レベルや照射の条件(急性、慢性、分割)を考慮した異なる放射線の諸量に対する、異なった疾患を考慮した前述した影響の相対的な重要性は、現在のところ、よく解明されたとは言えない状況にある。実験的な研究は、標的細胞と組織環境の双方やそれらを総合したシステム(組織や臓器、個体)において、疾患関連影響がある線量レベルやそれが観測されない線量レベルはどの程度であるかに関して、もっとも貢献しうる。
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出典
MELODI Statement on a Short- to medium-term research agenda for R&T projects to improve the scientific basis for radiation protection in Europe(pdf file, 52kB)
(18 November 2010)