NEJMに、Exposure to Low-dose ionising radiation from medical imaging proceduresという論文が掲載されています。
画像検査での低線量放射線曝露
背景
米国での画像検査の進展は一般集団への低線量放射線曝露への関心を高めている。
方法
米国の5つの地域(Arizona; Dallas; Orlando, Florida; South Florida; and Wisconsin)で、UnitedHealthcare社の健康保険商品を2005年1月1日から2007年12月31日の間に購入した18から64歳の非高齢者952,420人を特定した。
このデータを用い、画像検査での積算実効線量を推計し(その問題点や限界を考察で述べている)、人口ベースでの曝露率を計算した。年間の実効線量は、低度(3 mSv)、中度(>3 to 20 mSv)、高度 (>20 to 50 mSv)、極めて高度(>50 mSv)に分類した。
結果
調査期間に655,613人(68.8 %)が少なくとも一度放射線を用いた画像検査を受けていた。
年間の積算実効線量の平均値(±SD)は2.4±6.0 mSvであった。
分布の幅は大きく対象者の年間実効線量の中央値は0.1 mSvで、0.0 から 1.7 mSvに75 %のものが入っていた。
全体として年間で1000人あたり193.8人が中度の曝露を受けいていた。
一般に、画像検査による実効線量は加齢とともに増加し、男性よりも女性の方が大きかった(若年でも高い線量を受けるものがあり20 mSvを超えたもののうち、男性の30 %、女性の40 %は50歳以下)。
X線CT検査と核医学検査が積算実効線量の75.4%に寄与していた(最も大きいのは心筋灌流イメージングで22.1%)。
81.8%は外来での検査によるものであった。
結論
米国では画像検査が放射線曝露源として主要なものであり、大きな積算実効線量を与えうる。
これまで受けた線量を合計すると「大きな積算実効線量」になってリスクを心配するというのはありがちだと思うけど、これって正しいの?
放射線診療は、便益とリスクを比較して、行っているから、リスクだけ考えても意味はないじゃろ。
どれだけ、この検査が役だったかということも合わせて考えないといけないんだね。
個々の放射線診療でもたらされた便益がリスクよりも大きければ、それらを積み重ねたものも、放射線利用の観点からは正しい利用法だと言える。
これまでのリスクは、その時点でオフセットされているということだね。
いわゆる確定的影響は、細胞の欠落症状なので、組織として回復しておれば、それまでの線量はオフセットされておる。
少しのリスクで大きな便益を得ていることが納得できれば、不安の解消にも役立つのではないかな。