核医学検査を受けた患者の病棟でのケア

管理区域外での放射線安全にも配慮しよう。

最近、病棟の患者が核医学検査を多く受けるようになりました。
心配になって放射線部から線量計を借りて測定したら、1年間換算で3 mSvになっていました。
放射線部からは心配しないでよいと説明されていますが、
家族がとても心配しています。
どうすればよいですか?


ポータブルと同じで放射線部以外での放射線管理のお話しね。

放射性物質を投与した患者さんが集中する病棟という設定ですね。

様々な事情で、ある場所に患者さんが集中するというのがあるようじゃ。

どんな事情?

検査後の静養場所に使われる施設や患者さんが集中するホテルなどじゃ。

すぐに家に帰ればよいのに。

人間関係や家庭の事情で、外で減衰させてからとなることもあるようじゃ。
投与後のホテル利用は、比較的投与量が大きい場合には明確に制限されておる(I-131講習会応用編Q&A)。

でも、普通は管理区域からの退出後の行動を考えて安全評価していると思うけど。

3 mSvは基準値と比べてどうですか?

公衆の線量限度は1 mSv/yじゃ。

線量限度を超えているのか。
自発的介助者の線量拘束値はもうちょっと大きかったと思うけど。

自発的介助者の線量拘束値は一回のエピソードで5 mSvで、そのエピソードを繰り返すことは想定しておらん。

そもそも一般病棟で年間の線量限度を超えることってあるのかな?

131Iの退出基準は体表から1 mで30 μSv/hだから、1週間、一般病棟に入院したとすると、患者さんからの距離1 mで170 μSvになる。
距離1 mで換算して毎日1時間滞在すると仮定すると、7μSv程度じゃ。

1000/7=134だから年間134人の患者さんが131Iを投与された後に病棟に来ると、年間の線量限度を超えそうね。

ちょっと話が合わないなあ。
まさか3μSvの間違いだったというオチだったりして。
(そんなことはないと思うので質問された方もう少し詳しい情報を教えて下さい)

バックグランドの線量率は50nSv/h程度あって年間で線量限度の半分程度になるが応答がよい線量計で計測すると年間3 mSvになるかもしれん(?)。
バックグランドを差し引いても3 mSv/yであったとすると、線量率での評価値に従事係数を考えないので、単純に年間の時間をかけているかもしれん(?)。
もしかしたら、患者さんのベッドサイドで測定したのかもしれない(?)。
あるいはナース控え室の薄い壁の反対側に病室があるか、蓄尿容器があるかのかもしれない(?)。

管理区域外での放射線防護のルールはどうなっているの?

管理区域外での曝露は公衆の線量限度である1 mSv/yが適用される。

病室を管理区域にしなくてもよいの?

患者さんに投与した後は法令上は放射性物質ではないと聞いたけど。

患者に投与した後も放射性物質であることにかわりはなく、リスクの程度で求めるられる管理が変わってくる。
管理区域は3月間で1.3 mSvを超える場合には、設定しなくてはならない。
もっとも核医学検査では投与量が少ないので、一般公衆の被ばく防止のための特別な措置はほとんど必要ないとされておる(ICRP Pub.94)。

RIの投与を受けた後の採血だとかエコーなどの臨床検査は安全なの?
RIの投与を受けた直後の患者さんの採血やその検体検査を妊娠を考えている看護師や臨床検査技師に行わせてもよいのかしら?
汚染防止の工夫が必要と書かれているけど。

400 MBqのTc-99mを患者さんに静脈投与した場合の投与直後の平均血中濃度は400 MBq/5kg=80kBq/gだから、10 ccの血液中には0.8 MBqのTc-99mが含まれることになる。
もっとも投与されたTc-99mは血液中からは速やかに失われる。
ありえることではないが、それを誤って全量摂取しても受ける線量とは実効線量として、2.2×10-11[Sv/Bq]×0.8[MBq]=18μSvに過ぎない。

年間の線量限度が1,000 μSvだから、その検体一つを扱うことのリスクはとても小さそうね。
でも、そこまで気を遣うべきかどうか微妙だけど、他に問題がないのであれば、検査の順番は工夫してもよいような気もするわ。

小さいリスクをどう扱うかというお話に共通する課題であるようじゃが、関係者がよく理解して認識を揃えておいたり、合意を得てルールを決めておくのがよいのではないかな。
それが、患者さんの身になって考えることにもつながるように思う。

測定した値が本当だとするとなかなか微妙ね。
管理区域にしたらずっと管理区域のままなの?

一時的に管理区域に設定することが可能じゃ。

他の患者さんの防護はどうなっているの?

3月間で1.3 mSvを超えてはならない。

測定したら年間で3 mSvになったというのがよくわからない。
作業する場所では滞在(従事)係数を考えて管理区域設定の基準を超えていなくて、管理区域にする必要がないのであれば、年間1 mSvを超えることは考えがたいと思うけど。
もし、測定値が本当に線量限度を超えているとすると、どういう管理が必要なのだろう?

この病院の放射線部は文部科学省の通知をもとに、管理区域に立ち入らないから、1 mSvを超えることはなく放射線業務従事者にする必要はないとしているそうよ。

この通知で、管理区域に立ち入らない場合は放射線業務従事者としてカウントしないというのは、単に数え方の問題だと思うけど、そもそも、測定値が年間の線量限度を超えているのであれば、安全評価上は、管理区域設定の基準を超えているのではないかなあ。

確認したら、その基準は超えていないって。

なんだか訳がわからない。

この病院の放射線部では、本人が納得しているので問題はないが、次々と看護師が線量計を求めてくるので対応に困惑されているようです。

測定して安全を確認するのは悪いことではないと思うけど、本人はなんとか納得していても、家族が理解できていないと何かあると紛争化しそうだ。
そもそもきちんと教育すべきだし、患者さんが集中するのであれば、事前・事後の安全評価をしておくべきだと思う。

日本看護協会

核医学検査(アイソトープ・RI)の影響

RIを投与された患者の超音波検査を行う臨床検査技師の被ばく線量

放射性医薬品投与後の超音波検査における 従事者の被ばくについて
RI投与後のエコー検査時における臨床検査技師の被ばく線量の測定

EXPOSURE FROM RADIOACTIVE PATIENTS

ARPANSA. Radiation Protection in Nuclear Medicine
In clinical practice a patient may be required to undergo a number diagnostic imaging or other procedures in addition to the nuclear medicine test. These procedures may include X-ray or ultrasound investigations or radiotherapy planning. As a general rule, whenever practicable, other procedures should be performed before the administration of the radiopharmaceutical, mainly to minimise radiation exposure of staff outside the nuclear medicine facility (refer to Table 8 for advice concerning the need to restrict close contact with a child).
There may be occasions when a patient who has already been administered a radiopharmaceutical is then required to undergo another medical procedure. A radioactive patient presents a source of radiation exposure to other staff, but the risk to others may be small. It is important to note that the prior administration of a radiopharmaceutical to a patient is not of itself a contraindication to performing X-ray, ultrasound or other procedures. The decision to proceed with the other test should be made based on clinical need. A decision about what precautions should be adopted depends upon an assessment of the amount of radiation exposure to others from the patient as a result of the nuclear medicine procedure. Application of the ALARA principle requires that steps should be taken to reduce radiation exposure to staff to the minimum reasonably achievable level.
The following procedures should be adopted to inform and minimise radiation to staff in other areas of the hospital:
• a prominent radiation sticker should be attached to the patient’s file or notes. The sticker should state the radionuclide, the activity, the time that the radiopharmaceutical was administered and the route of administration. The sticker should also state that the patient is radioactive and the time after the administration that the patient will remain a source of radiation exposure;
• in order to reduce patient radioactivity, the patient should be asked to empty his/her bladder prior to other medical procedures;
• staff should avoid any unnecessary proximity to the patient;
• staff performing other procedures on the radioactive patient should be made aware of the contamination hazard that may arise from the excretion of body fluids, in particular from incontinent patients. Any such spill or excretion should be immediately referred to the RSO for measurement and decontamination; and
• the nuclear medicine department should have a designated person to whom queries can be directed; who is able to answer questions from staff outside the nuclear medicine department about the radiation that they may be exposed to from the nuclear medicine procedure and the risks, and about any precautions that may be needed.
Some other imaging procedures may interfere with nuclear medicine procedures. Barium X-ray contrast media can attenuate the photons emitted from the administered gamma-emitting radiopharmaceutical, and hence, if the patient requires barium contrast studies the nuclear medicine study should be performed before the barium contrast studies. Administration of iodinated contrast media may interfere with some iodine nuclear medicine procedures, by blocking uptake of radioactive iodine in the thyroid.

PET検査における従事者

FB news 第482号

D−シャトル(D-shuttle)を用いた18F-FDG/PET検査における従事者の被ばく要因分析の試み  -トレンド機能による検討-

ポーランドの例

Occupational exposure at the Department of Nuclear Medicine as a work environment: A 19-year follow-up

核医学検査の意義

IAEA: How Radiopharmaceuticals Help Diagnose Cancer and Cardiovascular Disease

記事作成日:2010/03/06 最終更新日: 2018/09/10

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