整形外科医と放射線防護

臨床整形外科で整形外科の職業被曝が特集されています。

臨床整形外科 55巻2号 (2020年2月)

特集 整形外科の職業被曝

三浦 富智.整形外科医の超局所慢性被曝による染色体異常

整形外科医の方々の職業被ばくによる染色体異常が報告されています。

整形外科医の末梢血リンパ球では,二動原体染色体および環状染色体などの不安定型染色体異常が他の医療職者よりも高頻度に認められた.さらに,安定型染色体異常である転座も高頻度であった.

さらに,われわれが解析した医師 1 名において,経験年数が 24 年と長いにもかかわらず二動原体染色体頻度が 1.50/1000 細胞,年齢補正後の転座頻度が 0 と非常に低いことに着目しなければならない.この医師は X 線透視下での検査や手術の際,放射線防護対策を早い段階から取り入れていた(私信による).被曝防護の徹底が,被曝線量を軽減することができる事例としてとらえることができるであろう.

整形外科医での染色体異常

浅利 享 , 和田 簡一郎 , 熊谷 玄太郎 , 田中 直 , 石橋 恭之.整形外科医師における放射線職業被曝に関する実態調査—自己記入式アンケート調査からの検討

整形外科医の方々の職業被ばくによる放射線障害の状況などが調べられています。

慢性放射線障害の症状として,手指の爪の変色,変形を来している割合は 33.6%(37 名/110 名)と高く,手指の部位別では右母指が 56.8%と多かった(表 1).
皮膚障害に対する加療歴は 5.5%(6 名)に認め,その治療として 3.6%(4 名)ががん切除術を受けていた.白内障の加療歴は 4.5%(5 名)に認めた.

整形外科医の爪の変形

船尾陽生、石井 賢.低侵襲脊椎手術における職業被曝の実態と対策

診療放射線技師への啓発の必要性が述べられています

照射時間による被曝量の相違は,医療従事者の意識によって最も差が生じやすい因子の1つと考えられる.術者のみならず放射線技師への啓発や,各手技における具体的な照射方法の指示など綿密なコミュニケーションも大切である.
術者のみならず助手や看護師,また放射線技師などにおいても,放射線被曝の認識が大切であることを強調したい.

山下一太.X 線透視による脊椎外科医の職業被曝の実際 未固定遺体より学ぶ

診療放射線技師への啓発の必要性が述べられています

旧式の X 線透視装置では,より鮮明な透視画像を得るために,透視装置の管電圧と管電流を高く設定する必要があり,それに伴い被曝量も多くなっている28).職業被曝による労働災害による疾病を防ぐために,病院管理者・責任者は適切な機器配置と機器のメンテナンスを怠ってはならない.

石垣 大介.手外科手術における手指職業被曝と対策

放射線の照射野に入っている整形外科医の手指

整形外科学会

第91回日本整形外科学会

シンポジウム 10 整形外科医の医療被曝の現状と対策

労働安全衛生マネジメントシステムの応用

平成30年度労災疾病臨床研究事業 分担研究報告書

不均等被ばくを伴う放射線業務における被ばく線量の実態調査と線量低減に向けた課題評価に関する研究

医療従事者の放射線防護への労働安全衛生マネジメントシステムの応用

研究分担者  森 晃爾(産業医科大学産業生態科学研究所産業保健経営学研究室教授)
研究要旨
【目的】労働安全衛生マネジメントシステム(Occupational Health and Safety Management System: OHSMS)の導入を前提として、医療従事者の放射線防護への応用について検討することとにした。
【方法】 他の分担研究で検討されている不均等被ばくのモニタリングや被ばく管理等の知見をもとに、医療従事者の放射線防護のための管理手法への労働安全衛生マネジメントシステムの応用のあり方を検討した。
【結果】まず、放射線防護へのマネジメントシステムの応用において、その前提となるマネジメントシステムの骨格を整理した。マネジメントシステムの骨格は、基本方針、体制、目標、計画、評価、監査、マネジメントレビュー、改善である。次に、マネジメントシステムを利用した安全衛生リスクの管理手法について整理した。マネジメントシステムは、目的を達成するために必要十分な事項を確実に実行するために、継続的改善を図る仕組みである。したがって、目的を達成のための必要十分事項が明確であれば、いくつかの条件を整えればマネジメントシステムの運用によってその目的は達成することができる。
医療従事者の放射線防護は、作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育の労働衛生管理の基本を応用することによって、必要十分事項を明確にできるため、マネジメントシステムの応用が有効であると考えられた。併せて、法令順守のための仕組みと必要十分事項および法令事項の調整について検討した。その上で、医療従事者の放射線防護のためのマネジメントシステムの構築について、①基本方針の策定と宣言、②手順および基準の策定、③体制の構築、④計画の策定、⑤目標の設定、⑥実行と記録、⑦目標および実施状況の評価、⑧システム監査、⑨継続的改善ごとに整理した。
【考察】放射線防護を対象としたマネジメントシステが確実に実行されるためには、リーダーシップの存在とPDCAの運用、関係者の連携が可能となるような体制の整備が必要であると考えられる。また、放射線防護システムのOHSMSや医療機関の経営管理の仕組みとの統合を検討する必要があると考えられる。
【結語】組織トップのリーダーシップや関係者の連携を前提とすれば、管理方法が明確である放射線防護にはマネジメントシステムが有効に働くことは明らかである。今後、マネジメントシステムを利用した放射線防護の好事例の集積が待たれる。

防護手袋の添付文書例

防護手袋の添付文書例
放射線防護の要求事項として整合性がとれていないようにも見受けられますが、それ以下にはならないように性能が担保されているとのことでした。

操作法による線量の違いの検証

Roukema GR, De Jong L, Van Rijckevorsel VAJIM, Van Onkelen RS, Bekken JA, Van der Vlies CH, Van Lieshout EMM. Radiation exposure during direct versus indirect image acquisition during fluoroscopy-controlled internal fixation of a hip fracture: Results of a randomized controlled trial. Injury. 2019 Dec;50(12):2263-2267.

記事作成日:2020/02/23 最終更新日: 2022/10/01