IVRでの放射線皮膚障害発生の原因
2009年3月31日に開催された医療放射線防護連絡協議会の第28回「医療放射線の安全利用」フォーラムで、昭和大学藤が丘病院の加藤京一さんが話された内容をご紹介したいと思います。
加藤さんは、IVRでの放射線皮膚障害発生の直接の原因は、IVRの普及に伴い放射線への知識が不十分なスタッフがIVRに従事することになったことであり、間接的には、画像を優先するあまり線量の把握が疎かになり、診療放射線技師の油断につながったことがその原因であるとされている。
わが国では、
1995年:医学放射線学会放射線防護委員会から警告
2003年:ICRP pub.85(2001年)が日本語に訳され出版
2004年:医療放射線防護連絡協議会が中心となりガイドラインと測定マニュアル発行
2006年:日本循環器学会がガイドラインを発行
という取り組みがなされており、そのインパクトが発表されています。
まずは、このような取り組みを現場の診療放射線技師がどの程度知っているかが気になるところです。
ガイドラインの認知度
この調査はメールを使ったもので調査期間は1週間で回収率は3割じゃったそうだ。79の施設から回答が得られておる。
より熱心な層が回答した可能性がありそうですね。
医療放射線防護連絡協議会は9割が知っていて、そのうち9割が協議会でガイドラインを作成されたことを知っていた。
日本循環器学会がガイドラインは7割が認知し、うち4割は、このガイドライン作成に診療放射線技師も関与していたことを知っていたそうじゃ。
日本循環器学会のガイドラインが臨床医向けであるとすると、診療放射線技師向けのガイドラインはほぼ認知されていたという結果ですね。
測定マニュアルは実行されていましたか?
ガイドラインに基づく線量測定
IVR基準点の放射線計測は8割で実施されておった。を行っていても、ガイドラインに沿った運用(=線量が高くなった場合に術者に注意を促す)がなされているのはわずか6%であるそうです(加藤京一.医療放射線防護.54)
皮膚障害防止にもっとも重要な線量計測はほぼ行われていたということですね。
このガイドラインでは、
1Gy以上のレベル1では、線量と部位の記録
3Gy以上のレベル2では、患者に説明するとともに経過観察をスタッフ間で申し送りする
とされていますが、これは実行されていますか?
ガイドラインに基づく患者対応
残念ながら、回答のあった熱心と思われる施設でも、このルールが運用されていたのは6%に過ぎなかったという結果じゃ。
この状況に対して、加藤さんはどうすべきというご意見でしたか?
患者と医療機関スタッフとの信頼関係を築くこと大切であり、術者の放射線安全にも配慮すべきと言うご意見じゃ。
まさに、リスクコミュニケーションのお話になりそうだね。
一歩、前に出た対応では、リスクコミュニケーションの実践が求められるということだと思う。
出典
加藤京一.診療放射線技師の立場から「ガイドラインに基づいた放射線の管理はなされているのか?」
測定装置の例
SOF線量計
小型・軽量なX 線線量計~SOF 線量計
平成 25 年度課題解決型医療機器等開発事業「晩発性放射線障害予防のための X 線線量計の開発」