過大視されるリスクとか過小視されるリスク

放射線リスクも、リスクの種類によって過大視されたり、過小視されたりする。
リスクを正しく認識してもらうには様々な工夫が必要。

放射線リスクは、リスクの種類によって過大視されたり、過小視されたりします。

一般には放射線リスクは過大視されていると思われがちですが、透視下手技での放射線皮膚炎やそれに従事しているスタッフの手指の放射線皮膚炎はリスクを過小視した結果とも思われます。
また、放射線の加齢促進作用による眼の白内障への影響も最近の疫学研究の知見が医療現場に十分に浸透しているとは言えないことがインタビュー調査から伺えました。
リスクを過小視しないために、リスク情報を適切に提供することが必要であり、その活動が、知識不足に基づくリスク過大視の修正にも資すると考えられます。
また、リスク認知は主観的で、それを受け入れることの利益があることが理解できるかどうかなどで決定されるとされます。
また、より親しみがあり、自己選択でき、倫理的に問題がないリスクほど、受け入れやすいことが知られています。
IVRでの放射線リスクを事前に説明することは、診療に悪影響を与えず、むしろ患者の満足度を上げていることが関係者へのインタビューから伺えました。
このため、これから受ける、あるいは受けた放射線診療が有益なことの理解を促進することが適切なリスク認知に有効であると考えられます。
また、自然放射線である航空機中の宇宙線被ばくやラドンによる被ばくは、より日常生活に近いものであることから、放射線のイメージを修正させることが期待されます。
その上で、患者やその家族が臨床での意志決定に参画しているという実感を増やすことや 、その診療が社会的な指針に沿っていることを示すことも有益であると考えられます。

リスクコミュニケーションに関する研究成果

このサイトの構築に貢献された西澤真理子先生の業績へのリンク
西澤真理子(2010)「欧州におけるリスク評価とリスクコミュニケーションの現在」「イルシー」No. 101
西澤真理子.過大視されるリスクと過小視されるリスク.公衆衛生 2006;70(8):80-85.
西澤真理子 (2003) 「社会土壌が参加型リスクマネジメントに与える影響:ドイツでの事例を基に」『社会技術研究論文集』1 (1),133-140.(pdf file, 152kB)

関連読み物

甲斐倫明.リスクコミュニケーション
情報の送り手である”専門家”のリスク認知のスペクトルの幅を取り上げています。

記事作成日:2010/02/24 最終更新日: 2016/11/11