検査を繰り返しても大丈夫?

これまでの検査は無駄ではなく意味があったのではないでしょうか。

まとめ

日本医学放射線学会

診療用放射線に係る安全管理体制に関するガイドライン

(7) 線量記録における留意事項

小児では年齢及び体重を被ばく線量と照合可能な形で記録し、線量の評価に活用することが望ましい。 成人においても線量評価に活用できるように体重を記録することが望ましい。再撮影の実施等で診療に寄与しなかった放射線照射についても被ばく線量の記録に含めること。 線量記録の保管期間は、他の医療記録の保管期間を参考にするなどして各病院等で決定する。

診療放射線技師の方に質問してみたい?

そんなあなたに対応することを準備した例です(様々な率直な議論がありました。患者会からは、病気を抱えていることでのリスク認知の特性の説明がなされ、リスク情報を公平に伝えることの重要性が訴えられていました)

2019年度 第1回 放射線被ばく相談員 フォローアップセミナー

放射線のリスクを知りたい場合

Loss of life expectancy

検査を繰り返しても大丈夫?

やれやれやっと退院できたわ。放射線の治療って、熱いんじゃないかって心配してたけど、まったくわからないものだねえ。
主治医は結構イケメンだから通院が楽しみだわ。
でも、これからも肺のCT検査するですって。また、放射線あびちゃうのかしら。

何、放射線のことが心配なの?

だって、考えてみれば、これまでもたくさん検査を受けたんだもの。
あびちゃった放射線が多いはずだから、これからは、できるだけ少なくしたいわ。
放射線一杯浴びると白血病になっちゃうんでしょ。

そんなことを考えていたんだ。
一回のX線CT検査だと受ける線量は10 mSvだから、平均余命の短縮は多く見積もっても2日間だとして、これまでの検査や治療の線量を考えたらどうなるのかなあ…。

レント博士に聞いてみよう。

おばあちゃん。退院おめでとう。
放射線科が役だってわしもうれしいよ、
何々、これまでたくさん浴びたから放射線ことがちょっと心配になったのじゃな。
放射線で透視しながら、治療する方法のことは知っているかな。
この治療では、同じ場所に繰り返し長い時間、放射線をあてて、放射線皮膚炎になってしまった患者さんもおった。
しかし、今では、どこにどの程度あたったかが簡単に分かるから、このようなことはなくなったんじゃ。

放射線で色が変わるシートは小児科の看護師さんが手放せなくなったんだって。
がんのリスクは、どうなの?

がんのリスクは若いときより、小さくなっていると考えられておる。
細胞の入れ替わりが少なくなっているし、放射線で誘発されるがんは、小児期の特別なものを除ければ、病気になるまで時間がかかるからじゃ。

放射線の影響はすぐには現れないということね。

リスクの考え方だとそうなるということじゃな。
でもわしよりも長生きしそうじゃ。
放射線の検査は、放射線のリスクとそのメリットを比べてから行うものなのじゃ。リスクよりも検査で得られる情報の方が重要ではないと行われないということじゃな。意味なく放射線を照射するのは避けなければならぬのじゃから、これは大切な考え方なのじゃ。
つまり、これまで検査には全て意味があるということじゃ。
それに、医師は、これまでの検査のことも念頭に入れて、検査プランを最適化しておる。

それに、私たちは、患者さん一人一人の、その検査の意味合いを考えて、どこまで見えればよいかなあって考えて検査している。

病院の人って大変なんだねえ。

でも、放射線のリスクと検査のメリットを比べるってどういうことなの?
病院ではお金儲けのために、意味がない検査をさも必要だと嘘付いて行っているじゃないのかなあ。

疑り深いなあ。いい加減な検査プランを作ると恐ろしいカンファレンスで叩かれてしまうし、診療報酬だって請求できない。
そもそも、お金儲けだけのためにこんな大変な医療で働いている人なんていないと思うけど。

まぁまぁ。冷静に考えてみよう。
放射線による発がんリスクは、60歳だと放射線防護上の仮定では1.2E-2/Svじゃ(=リスク係数)。
つまり1Svの線量だと百人に1.2人が、これからの生涯でその1Svの放射線によりがんを発症して、それが原因で死亡することを意味する。

でも、検査で1Svというのはいくら何でも多すぎではないかなあ。

そうじゃな。検査で受ける実効線量が1Svになるものは考えられん。
それと、リスク係数は、正確にリスクを見積もりものではなく、その推計には限界があることを忘れないように。
で、検査の種類や目的で線量は異なるが、次のCTの検査は5 mSvと考えてよいじゃろ。

おばあちゃんがかかっている病院の技師さんに尋ねた方が確実だけど、まぁそんなものね。

5 mSvだとすると、リスクは、100万分の60じゃな。

でた!確率的表現。これじゃ訳が分からない。

可能性が小さくても、それにあたると思うと耐えられなくなるのもわからなくはない。ごくたまにだけど弾が入っている鉄砲を撃つ気分になる人もいるみたい。

検査をしない場合の不利益が大きいことがまず前提じゃ。
確率でリスクを示して考えるというのは、人間の感性にあっていないので、受け入れがたい。
ゼロリスクを目指すと色々と不都合があることを学んだ後で、指標を変えて考えてみるとよいのではないかな。
治療後の平均余命が20年だとすると、100万分の60の確率でその半分になると考えてもよいじゃろ。
これだとだいたい1.1時間の余命短縮じゃ。

数字で示されると小さいね。
でも理屈で示すよりも医師が大丈夫ですよって説明した方が信頼されると思う。

この部分は医師が自信を持って患者さんに説明できるようにするための基礎的なお話しじゃ。
余命の短縮が小さいのは、2年間分の自然放射線の量じゃからな。
それに引き替え、利益は、
再発の可能性:0.1
検査を受けずに再発していた場合の死亡率:0.9
再発していて検査を受けた場合の死亡率:0.4
とすると、
検査を受けない場合の損失余命:1.8年
検査を受ける場合の損失余命0.8:年
だから、
検査で得する損失余命:1年
となるな(とナプキンの裏で計算している)。

じゃあ、利益が1年で不利益が1.1時間になるな。

う〜む。検査は病院の陰謀による金儲けではなく、(当たり前ですが)患者のためだったのだな。
おばあちゃん、よかったね。

…。途中からくうくう寝ていたのであった。

細かいことのくよくよしない性格は、本当にうらやましい。
言うまでもないが、このリスク推計は不確かさが大きいのでだいたいの目安に過ぎない。

医療従事者向け情報

IOMP-ICRP Webinar: Are radiation risks below 100 mGy for example through recurrent CT procedures of real concern for radiological protection?
Organizer: Madan Rehani, IOMP
Moderator: Christoper Clement, ICRP
Speakers: Werner Ruehm, Dominique Laurier, and Richard Wakeford

Recent studies suggest that every year worldwide about a million patients might be exposed to doses of the order of 100 mGy of low-LET radiation, due to recurrent application of radioimaging procedures. This webinar provides a synthesis of recent epidemiological evidence on radiation-related cancer risks from low-LET radiation doses of this magnitude. Specifically, reviews of recent results are given with respect to a) the atomic bomb survivors (by W. Rühm), b) low dose-rate exposures during adulthood (by D. Laurier), and c) in utero and childhood exposures. (by R. Wakeford). Taken together, substantial evidence was found that ionizing radiation causes cancer at acute and protracted doses above 100 mGy, and growing evidence for doses below 100 mGy. It is concluded that doses of the order of 100 mGy from recurrent application of medical imaging procedures involving ionizing radiation are of concern, from the viewpoint of radiological protection.

2022年4月20日 09:00 PM 大阪、札幌、東京

Radiation risk communication and justification of medical exposures

出典情報

IAEA RASSC46

医療放射線の適正管理に関する検討会に関する分析例

齋藤 祐樹,徳重 佑美子,丸山 星,岩井 譜憲,加藤 英樹,星野 修平.医療放射線の適正管理に関する検討会議事録に関するテキストマイニング分析

議事録の分析例

政策判断での善悪基準

放射線治療を受けた場合に放射線業務に従事できませんか?

一律には判断できません。

IAEA GSG-7

10.17.

There is no inherent reason why a worker who has previously undergone radiotherapy should be excluded from work with radiation. Each case should be evaluated individually, by taking into account the outcome of the radiotherapy treatment, the general prognosis and other health considerations, the understanding and wishes of the worker, and the nature of the work.

医療機関等での相談窓口例

愛知県診療放射線技師会

被ばく相談について

山陰労災病院

医療被ばく相談を開設しました。

記事作成日:2010/01/20 最終更新日: 2023/08/28