リスクコミュニケーションを取り入れることの意義と今後の課題

納得できる判断のためにできることを考えましょう。

これまで診療での放射線リスクの説明は、無害原理に基づき、心配ないことを強調するものでした。
多くの放射線診療のリスクはほとんど無視できるものであり、その方針が間違いであるとは考えられないでしょう。
しかし、それがIVRでの放射線皮膚炎の遠因になったとも考えられます。
このような症例が存在することが医療現場で知られたことやIVRに従事するスタッフの白内障のリスクが高いかも知れないというRSNAでの報告やX線CT検査をはじめとする放射線リスクの定量的な見積もりの研究とその報道は、その見直しを余儀なくしたものとも言えそうです。

この状況は食品など環境リスク一般とも共通します。
これまで環境リスクに対し、行政側は「安全ですから心配しないでください」とアナウンスしていたのが、「すべてのものにはリスクがあります」と国民に判断を預けられ、それぞれのリスクリテラシーが問われているのと構造が類似しているのです。

また、放射線手技の発展とともに、放射線科以外の臨床医のリスクリテラシー(リスク情報を読み解く能力)が問われるのではなく、主体的に医療に参加すべきとされる患者のリスクリテラシーまでが問われるようになってきました。
環境リスク問題を正しく理解するには、メデイアの質の高い解説が有用であるように、放射線診療は医療に欠かせないことから、医療関係者や患者など関係するすべての当事者への支援が求められていると考えられます。
幸い、リスクが曝露量に依存するというアイデアはかなり浸透しており、患者が(ごくわずかであれ)前向きにリスクテイクできるような環境整備が求められているのです。

これらの判断は患者さんが受ける放射線によるリスクだけではなく、医療従事者が放射線診療に関わることで受ける線量によるリスクの管理とも共通します。診療放射線技師よりも、放射線部以外のスタッフが受ける線量の方が多いこともある状況では、「医療被ばくハンドブック」のQ&A[i] にあるように単に説明して理解を得るだけではなく、関係スタッフ間で合意して放射線防護のルールを定めることが求められるのです。


[i]日本放射線公衆安全学会.医療従事者のための医療被ばくハンドブックより良いインフォームド・コンセントのために.文光堂.2008年

International Action Plan for the Radiological Protection of Patients

Summary of the report of the Steering Panel meeting
The third meeting of the Steering Panel on the International Action Plan for the Radiological Protection of Patients (IAPRPoP) was held in Vienna at the IAEA headquarters on 25-27 February 2008.
この研究班からの提案を受けてまとめに以下の文章が追加されました。
There is a need for additional education on appropriate ordering of procedures involving radiation by referring clinicians. There should be appropriate communication with the patient as well as consideration of the patient’s doses, needs and requests.

難しい課題への患者会の貢献

All.can

Driving sustainable healthcare solutions for everyone affected by cancer We imagine a world in which patients are always at the heart of cancer care

2018年4月27日 第5回医療放射線の適正管理に関する検討会

○大井参考人 大井です。先ほどの説明の中でフットスイッチといろいろあったと思うのですけれども、患者さんが被ばくするのは、動けば撮影回数がふえて、ふえてくるという問題があると思うので、それをどう抑えるかということの一つだったと思うのです。ただ、先生方や技師の方たちが中に入られると、またそれも被ばくすることになったりする。イギリスのNICEなどでは医療を評価していこうということで、国民も参加してAll.Canというプロジェクトの中では、例えば子供たちが動かないでいられる方法はないかということで、CTの中にフィルムでジャングルの絵を書いたりして、子供が楽しんでその時間を過ごせるようにしようとか、違った形の工夫に取り組まれて、そこに国民の目線が入ってくる、子供の目線が入ってくるということがあると思うので、患者の被ばくをできるだけ抑えていく、あるいは医療者の被ばくを避けていくということの中で、ぜひそういった、もっと総合的な議論の中で検討をいただけたらと思いました。

八木絵香「対話の場をデザインする」(大阪大学出版会)

科学技術、特に、リスクに関するコミュニケーションは、情報を専門家が管理し、それを市民に提示するという枠組みから、リスクの評価や管理にかかわるすべてのプロセスに、市民を含むすべての利害関係者を関与させ、リスク管理に関するあらゆる場面において市民が参加する方向へ変化してきた。単なるコミュニケーションを超えて、専門家と市民が科学技術の問題の解決に協働で取り組む方向へ変容してきたのである。
(p19)

電磁界でのリスクコミュニケーションの取り組み

長田徹.電磁界のリスクコミュニケーション
WHO.電磁界のリスクに関する対話の確立
WHO handbook on
“Establishing a Dialogue on Risks from Electromagnetic Fields”
倉成祐幸(財団法人電気安全環境研究所 電磁界情報センター情報提供グループ).「電磁界情報センター」この一年を振り返って

放射線科学.特集「放射線防護研究は今」

リスクコミュニケーション.
放射線医学総合研究所規制科学総合研究グループ リスクコミュニケーション手法開発チームリーダー 神田玲子

虎の巻 低線量放射線と健康影響

虎の巻 低線量放射線の健康影響に関する一問一答
2011年4月30日までの期間限定公開されていました。

東北大学未来科学技術共同研究センター「組織マネジメントプロジェクト」

原子力問題に関する新しい対話方式の可能性

政策立案のあり方の議論

リスクと向き合う政策立案(神里達博)

第17回日本臨床救急医学会総会・学術集会

市民公開シンポジウム 「立ち上がったお母さんたちーお母さんが救急医療を変える!-」

保育の場面でのリスク・コミュニケーションの実践

特定非営利活動法人(NPO法人) 保育の安全研究・教育センター

安全文化の規制整備

環境行政及び原子力規制行政等における諸課題

US FDA

Radiation Risk Communication

The Society and College of Radiographers

Communicating Radiation Benefit and Risk Information to Individuals Under the Ionising Radiation (Medical Exposure) Regulations (IR(ME)R)

WHO

Chapter 3: Risk-benefit dialogue

記事作成日:2010/02/24 最終更新日: 2020/03/19