Summary Report of the Fourth Meeting of the Steering Panel on The International Action Plan for the Radiation Protection of Patients

この会合で立案された計画が実行されています。

IAEA Headquarters, Vienna
22 – 24 March 2010

Steering Panelとは何か?

患者の放射線防護の国際的な行動計画に関するIAEAの立案会合では、定められた計画が機能しているかを確認するために、その実施状況を継続してレビューしています。
すなわち、ガイダンスの提供も視野に入れつつ、定期的に、行動計画の遂行状況を確認し、必要な場合には再調整を提案します。
この第4回の立案会合では、2008年2月に開催された第3回の会合以来の進捗状況をレビューし評価しました。
そして、最近の情勢も考慮し、今後の取り組み方策を提言しました。

Steering Panelは何を討議しているか?

立案会合は、患者の放射線防護をよくするための国際的な展開のあり方や(それがどんなものであるとしても)行動計画に影響を与える要因に関することや行動計画に関する組織を形成するために何らかの修正が必要かどうかを討議しています。

問題の概要

全世界で一人あたりの実効線量は急激に増えており、その増加のほとんどが医療での放射線利用に由来します。
医療で受ける線量はいくつかの国々では自然から受ける線量と同等かそれを超えるレベルになっています。
原子力施設での職業被曝が、ここ数十年の間一定に保たれるか減少しつつあるのに対して、医療で受ける線量は著しく増加しています。
これらの増加は医療技術の普及を示すポジティブな面(例えば放射線を用いた医療サービスへのアクセスの改善などを示す)もありますが、多くの放射線診断が不必要であることや多くの診断で最適化が果たされていないことが示されています。

患者への不必要な放射線曝露とは?

ある調査によると、放射線診療では無視できないシステム的な不適切さがあり、多くの患者に不必要な放射線曝露をもたらしていることが示されています。
このため、個々の放射線診療が適切に行われるために事態を改善させることが絶対的に必要であると強調されています。
この問題には効果的な解決が求められます。

放射線診療の発展

放射線を用いた医療技術は、急速に発展し続けており、新しい技術や手法が次々に取り入れられています。
この技術は今やインフラが十分整っていない途上国にも到達しています。
CTスキャン装置の世界での年間の売り上げは、1998年と比較し、倍になり、このままのペースで増大すると予想されています。
CTスキャンでの線量は、患者が受ける線量の構成要素として無視できなくなってきています。
最近の大規模な医療センターを対象にした調査では、放射線診断件数の10%から35%がCTスキャンで、線量としては60%から70%をCTスキャンが占めるとされています。
X線CT装置の導入台数、CT検査の頻度や種類、一回の件数あたりの線量の全てが、世界中のどこでも増加しています。
さらに、患者を対象にした調査では、同じ検査であっても患者への線量の範囲(=最大値と最小値の差)が大きいことが明らかになっています。
このため、患者への放射線照射の最適化を継続して改善させることが必要です。

IVRの発展と放射線安全の課題

放射線透視ガイド下の治療手技が増加しています。
このようなIVRと呼ばれる手技は外科的な治療手技に置き換わるものです。
IVRの中では患者に注意に値する線量(=確定的な障害を与える可能性がある)をもたらしえるものがあります。
また、最近の調査ではこのような手技を行う医療従事者で確定的な放射線障害のリスクが増加することが示されています。
このため、IVRでの患者と医療従事者の放射線防護のさらなる最適化を図ることの緊急性が増しています。

放射線治療での課題

放射線治療での意図しない照射例は、今なお相次いでいます。
意図しない照射例には過剰照射だけでなく、多くの患者に同じような誤りによる過小照射する場合があります。
このため、過去の事故照射に学ぶための国際的な努力を強めるだけでなく、放射線治療での安全性の評価をあらかじめ行い、その評価に基づき適切な対策を講ずることが求められています。
この安全確保へのアプローチとして、原子力施設導入のような高度に信頼性の高い活動から放射線治療分野は学ぶことができます。

まとめ

国際機関と専門団体は、現在進行中の国際的な患者の放射線防護に関する行動計画に基づき共同での取り組みを深め、医療での全ての電離放射線利用における放射線防護を強化します。

勧告

BSSの改訂版が刊行された後に、患者の防護に留意しBSSの適用を促進するために適切に行動すること。
その中には、BSSでの要求事項をサポートする安全ガイドを作り上げることが含まれる。

IAEAのRPoPサイトが既に利用している電子的な社会メデイア(Twitter, Facebook, Flickr, YouTube それに携帯アプリ)に加えて他の電子的なツールの可能性や利用・導入を試験するグループを形成すること。

特別な課題に対する小規模な専門家会合を立ち上げ、立場表明を迅速に作成するための相談に応じられるようにすること。
作成された立場表明は、適切であればRPoPサイトや専門家や社会的なネットワークを介して人々に伝えることができる。

国際行動計画に参加している団体は、RPoPを含むIAEAに信頼できる情報を提供し、RPoP とリンクを設けなければならない。

IAEAにより開発された教育的な報告システムの取り組みを継続すること。

卒前・卒後の医学教育での放射線防護教育の導入に向けてさらに努力すること。

教育プログラムでは、「患者の防護」、「正当性の確保」、「最適化」などの用語の使用法やその定義の説明の評価や放射線治療での安全性を損なわせる要因の評価を盛り込むこと。
放射線治療での患者の放射線防護のシラバスや教育コース(放射線治療技師を対象とした)を開発することも有用であろう。

(医師、技師、医学物理士)などのスタッフは、機器の種類や手技の複雑さや予想される作業量を考慮した資質が備わっていることが必要があるとの国際的な合意を緊急に得ること。
このような合意はBSSの要求を効果的に満たすために必要であろう。

国内規制は国際的なIEC基準の利用に合致し、それをサポートしなければならない。
科学的なプロジェクトへの参加者は、装置基準の標準化を進めることに積極的に寄与することが推奨される。

デジタルイメージでの線量データは、全てのモダリテイで統一して理解できる方法で利用可能となっていなければならない。
医療従事者に提供されるデータは実効線量の算出が可能なものでなければならない。
これを実現させるためには、IECと規制当局と専門家団体の協調が必要であろう。
さらに、データは自動的に表示され画像とともに保存されることが推奨される。
これが実現すると、臨床的に重要なデータと線量データがリンクされ、集計報告や臨床での意志決定、患者の予後など追跡や疫学的な研究での分析に利用することが出来る。

2009年のフランス原子力安全機関の会合「患者の放射線防護の進歩と挑戦」この会合に関するIAEAのサイトの記事)での知見や学び/結論に基づく適切なフォローアップが必要である。
特に、新しい技術では製造者と独立した評価システムが必要である。

新しい技術に関する研究プロジェクト(あるいは現在行われている研究での分析)では、吸収線量の評価、防護の最適化や線量の制御が求められる。
IAEAのウエッブサイトの情報は更新し続ける必要がある。
これらの新しい技術に関連した事象や事故の評価がなされなければならない。
高い線量を繰り返し行う手技では、患者への線量を推計したり記録するシステムが構築されなければならない。

放射線安全だけではなく、電気的なあるいは機械的な安全性の問題や信頼性の問題は、中古装置に関する文書草稿でも考慮される。
中古装置に関する文書草稿では、European Coordination Committee of the Radiological, Electromedical and Healthcare IT Industry (COCIR) が出版している「医療電子機器のGood refurbishment practice」を参照したり、そこでの議論を展開させる必要があるかもしれない。

放射線を用いた画像診断で科学的な根拠に基づく参照ガイドラインの利用推進が推奨される。

放射線診断やIVRだけでなく核医学でも、特に放射線画像のデジタル化による新しいデータを考慮して、診断参考レベルの定期的な見直しや修正がなされるべきであることを強く強調する。

医療センターは線量の内部比較に定期的に参加すべきである。外部監査は国際的にも国内的にも不必要な重複を避けるよう調整されなければならない。

様々な電子的な事故学習システムのデータが少なくともその意味合いが理解されるように異なった分野間で比較され、グローバルな経験から学ぶ多くの機会を得ることができるように、線量投与(prescription)、治療の前処置(treatment preparation)、治療の提供( treatment delivery)、verificationなど放射線治療での高度なレベルの手順マップで通常使われる用語に明解な定義が与えられ、それにコンセンサスが得られるよう専門家集団は作業することが考慮されること。

放射線画像診断での放射線曝露の正当性を確保するために、鍵となる当事者や利害関係者で協調して、国際的なキャンペーンを展開すること。
このキャンペーンは当初は、患者、公衆、関係する専門職、政策決定者、メデイアの関心を高めることを目指さなければならない。
関心を高める際には、便益とリスクの適切なバランスを保ったものとすること。
ツール/解決策で利用できるのは、Awareness, Appropriateness と Auditの 3A’sである。

患者の放射線防護に関する第二回の国際会議が組織されなければならない。
この会議は準備計画や会場や現在の資金状況から2012年に開催されるのが最適であろう。
この会議では、この分野での新しい進展や挑戦、見込みが取り上げられるべきである。
患者、規制当局、政策決定者だけでなく、電離放射線を利用し、患者に放射線を照射する様々な職種の医療従事者からの意見も求められなければならない。

この記事の出典(この記事の著作権はIAEAにあります)

Summary Report of the Fourth Meeting of the Steering Panel on The International Action Plan for the Radiation Protection of Patients, IAEA

外部監査

特定機能病院における医療安全対策等のガバナンスの強化
医師等だけでなく、法律家や一般の立場の者等も含め構成

記事作成日:2010/07/01 最終更新日: 2018/10/16