紫外線と放射線はどう違うの?

エネルギーは異なるが本質的な違いは乏しい(電離か励起かの違い)。

紫外線の方が波長が長い

紫外線と放射線はどう違うの?

同じところは、ラジカルを作ることで、違うことは、体内のどこまで到達しうるかじゃ。
X線やガンマ線と比べると紫外線は波長が長すぎて深部までは到達できない。

表面だけ影響を与えるとするとα線放出核種が体表面に付着したときの影響と似ているのかな。
波長がもっと長い可視光は、水分中だとよく透過するから、相互作用は単純じゃなくてややこしいね。
ラジカルを作るものは,他にもたくさんあるし、励起による化学反応など結果としてDNA損傷をもたらすものも色々あるから、それぞれの特異的な性質が何かというのが直感的に理解しがたいように思う。

クリアーカットには区別できない

DNA損傷の観点からはUVBの波長はDNAにエネルギー与えやすいことがポイントして考えられる。
紫外線殺菌は、この性質を利用しておる。

放射線が特殊ということでもないようですね。
放射線の定義はどうなっているのですか?

放射線安全を考えた規制対象という観点からは、わが国では、X線装置で規制対象になっているのは、10kV以上の加速電圧の装置じゃ。
国際原子力機関では、5 keVを免除レベルとしておる。
紫外線と比較するために、波長を計算してみるとよいのではないかな。

波長は2桁程度異なる

日本のルールが国際ルールと異なるのも考えてみれば不思議ですね。
では、波長を計算してみます。
5 keVの光子のエネルギーは8.0×10-16[J](∵ 5×103[eV]×1.60×10-19[J/eV])だから、
振動数は1.21×1018[s-1](∵ 8.01×10-16[J]÷6.63×10-34[J s])となるから、
波長は0.25[nm](∵ 3.0×108[m/s]÷1.21×1018[s-1])ですね。
UV-Cでも波長は200nm程度だから、結構,エネルギーは違いますね。

だから、通常は、それをわけるために基準を適用するというセンスはないようじゃ。

でも、真面目な学生さんだと、どこが境目か気になりそうだ。

行政官も気になるという説がある。
いずれにしても、紫外線と放射線は明確に分けるのが困難な面があってクリアーカットな峻別法がないようじゃ。
波長や振動数としては、だいたい2桁程度以上違うが、境界のものは明確な定義が見当たらない。

紫外線発光と蛍光X線の違い

水銀ランプを用いた紫外線発光と蛍光X線は、何が違うのかな?

紫外線発光は、基底状態から励起した原子が、もとの基底状態に戻るときのエネルギーの差が放出されるもので、いわゆる蛍光のうち波長が短いものじゃ。
軌道間の電子の遷移では、より外側の軌道間の方がエネルギー差が小さく、起こりやすい。
つまり紫外線でも励起できる。
この励起では、エネルギー差が小さくて、もっともエネルギーが高い電磁波であっても紫外線に限られる。

蛍光X線は、紫外線照射じゃできないんだね。

それに対して蛍光X線は、より内殻の電子が放射線によってはじき飛ばされたことに起因するから、よりエネルギーの高い電磁波が放出されておる。

健康影響

紫外線はたくさんあたると害が多くなるけど、その一方で、あたる量が少ないとよくないと聞くけど、放射線はどうなのかな。

放射線は適度にあたった方が健康によいかどうかはよく分かっておらん。

放射線はそれほど特別ではないと言うことだね。

人工日焼け機器に関するリスク分類の見直し

30歳未満から人工日焼け機器の利用を開始した場合に皮膚の悪性黒色腫のリスクが75%高くなることがメタアナライスにより示されたことにより、国際がん研究機関(IARC)は、人工日焼け機器をヒトに対する発がん性を認める Group 1 に再分類しました(それまではGroup 2Aとされていました)。なお、わが国の環境省は、「紫外線環境保健マニュアル 2008」で、WHO が 18歳以下に人工日焼け機器の使用を禁止するよう勧告していることや、欧米の多くの国々が法律による規制を始めていることを紹介しています。

情報源

IARC NEWS

IARCのMEDIA CENTREからの2009.7.29付けIARC NEWS

IARCのreview

本件のIARCのreviewはLancet Oncologyに掲載されています。
IARCの決定はIARC Monographsの第100巻part Dに収載されています。
IARCが人工日焼け機器により悪性黒色腫の発生の増加を認め、ヒトに対する発がん性を認めるGroup 1と分類したことで、国内での利用も広がっている人工日焼け機器の利用における安全性の評価が改めて望まれます。

WHO

Ultraviolet radiation (UV)

クリプトスポリジウム対策での利用

水道における紫外線処理に関する Q&A

紫外線照射による塩基の励起による接合の解説

中田 敏夫, 田隅 三生, DNAの光化学反応, 有機合成化学協会誌, 1974, 32 巻, 6 号, p. 419-434

波長分布

Reference Air Mass 1.5 Spectra

記事作成日:2010/03/06 最終更新日: 2021/02/26