原子力発電所事故後の現存被ばく状況での放射線防護のカテゴリーの記事は、保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイトに移行中です。
報道されている専門用語の解説です
ベクレル
放射性物質の量は一秒間の崩壊数で示します。
1Bq(ベクレル)は毎秒1個のペースの崩壊を示します。
Ciも同じ次元です。1Ci=3.7×1010Bq
計数率
放射性物質から放出された放射線は、ある確率で測定器に入ってきます(測定器の大きさなどにより確率が異なる)。
測定器に入ってきた放射線は、ある確率で測定器内でエネルギーを失います(放射線の検出器の種類により異なる)。
エネルギーを失った(=放射線のエネルギーが検出器に与えられる)場合に放射線が計数されます。
GM計数管は比較的エネルギーの高いβ線を効率よく測定することができます。
CPMは一分間あたりの放射線の計数率です
CPSは一秒間あたりの放射線の計数率です(1CPM=60CPS1CPS=60CPM)。
1 Bqの放射性物質から毎崩壊時に1個の放射線が放出されて、その放射線を検出器全て捕まえている場合には、60CPMの計数率が1 Bqの放射能の量であることを示します。
シーベルト(Sv)
体が受けた放射線の量を示します。
同じ個数の放射線が体に入射しても放射線粒子のエネルギー(核種に依存します)によって線量は異なります。
サーベイメータの単位
計数率であるCPMか線量率である毎時シーベルトで表示されています。
少し細かい説明
放射性物質は崩壊時に一定の確率で放射線を放出します(核種によって特異的です)
I-131は約9割の確率で最大0.6 MeVのエネルギーの電子を崩壊時に放出し、約8割の確率で0.4 MeV程度のガンマ線を放出します。
Cs-137は崩壊時に1個の電子(最大0.5 MeVか1.2 MeVのエネルギーを持ちます)と約9割の確率で0.7 MeVのガンマ線を放出します。
より細かい説明
青いところは細かすぎるので医学生の方は無視されて下さい。
放射線とは
放射線とは電子をはじき飛ばす能力を持つ高いエネルギー(粒々)の流れというのはよいかな。
電子をはじき飛ばしてラジカルを作るのが放射線の生体影響の元ということだね。
個々の放射線粒子のエネルギー
だから放射線の基本単位は、 「光子や電子などの1つ1つのエネルギー」である「放射線のエネルギー」じゃ。
教科書に書いてある「1eV=1.6×10-19J」というのが関係しそうだね。
でも、放射線はいくつもの粒々が飛んでくるのでしょ?
放射線粒子の束としてのフルエンス
これに対応するのが、「フルエンス」じゃ。
単位面積(体積のこともある)当たり入射する光子や電子などの数(個)だね。
数と言えばCPSとかCPMって用語があるみたいだけど、何のこと?
計数・計数率
CPSやCPM 単位時間当たりの計数じゃ。時間の要素があるから計数率にあたる。
CPS: count per second
CPM: count per minute
それぞれ、検出器面積と計数効率(入射粒子をどの程度拾えるか(逆に放射線が検出器まで到達できるか);粒子エネルギーに依存)に依存する。
電離量を基にした照射線量
放射線の測定では、どのような単位が使われていますか?
放射線ははじき飛ばした自由電子が作る電流で計測されてきたので、
照射線量が基本となる量として使われきた。
二次電子が電離作用を持つのはクーロン力からわかるけど、放射線そのものは電離作用を持たないってこと?でも、二次電子は放射線が作るんでしょ?
光子や中性子による放射線は、間接放射線と呼ばれておる。電離作用の主役は二次電子じゃ。
じゃあ二次電子そのものの電荷は照射線量の計算には含めないってこと?
軟X線などによる気体の電離を考えると少しは効いてきそうだけど。
細かすぎる質問じゃな。空気カーマの定義では、分子の荷電粒子の運動エネルギーの総和に光電子やコンプトン電子、それらを発生したイオンの運動エネルギーは含まれないが、そのことがICRU60の改訂では改めて明確にされたそうじゃ。照射線量の定義でこの問題を気にする人は珍しいと思う。
真面目な学生は色々考えて勝手に混乱してそうだ。
では次の疑問です。
二次電子が遙か彼方まで飛んでいく場合にはずっと追いかけて考えるのかなあ?よく「空気中で完全に静止する」までに電離するイオンの電荷で書かれているけど、そもそも電子って室温で「完全に静止」するのかなあ?
イオン化エネルギーよりも低速になったら止まったも同然じゃ。
電離エネルギーを基にした吸収線量
どうして放射線の量では電荷を用いる照射線量とエネルギーを用いる吸収線量があるの?
電離する電子の数(=電離する電荷量)は照射される総エネルギーに依存する(=一つの電離を起こすためのエネルギーが決まっている)ので統一的に扱うには電離に費やされるエネルギーを用いた方が便利なんじゃ。
エネルギーと言っても温度を上げるのとは違うんだね。
放射線治療でも温度の上昇はないに等しい[1]。
温度上昇を問題にしているのではないから特別な単位としてGy(グレイ)を使っておるのじゃ。
吸収線量:放射線により単位質量に与えられたエネルギー(Gy:グレイJ/kg)
ということですね。
この他にもあるってどういうこと?学生への嫌がらせですか?
[1] 1Gy(=[J/lg])の吸収線量は水1リットルに1Jをエネルギーを与える。
1[J]=0.24[cal]なので、水が1gであれば0.24度上昇させる。
水は1,000[g]あるので、温度上昇は、
0.24×10-3となる。
つまり、1万分の2度程度なのでヒトは感じることができない。
防護、発がんなど確率的影響の生体影響に関連した指標
放射線の影響の視点から統一的に扱おうとしておるのじゃ。
吸収線量だとどんな問題があるの?
同じ吸収線量でも局所の電離密度が異なったら生体影響が異なりそうじゃろ。
密に不対電子を多く作った方が生体影響は大きいが、不対電子の作るパターンが放射線によって異なるのじゃ。
例えばα線とβ線を比べると、同じ総運動エネルギーで照射すると、物質に与える総電離するためのエネルギーは同じだから、総電離量は同じで全体としての平均吸収線量は等しくなる。
しかし、α線はβ線よりも重くてまっすぐ飛ぶが、止まる際により多くの不対電子を作るのじゃ。
このため、α線では局所の電離密度が高くなる。
それじゃα線はβ線に比べて同じ線量でも生体影響が大きいってこと?
それを放射線加重係数で表現しておる。
光子(X線やγ線)や電子はエネルギーにかかわらず1とされておるが、α線は20とされているのじゃ。
だから単なる組織の平均吸収線量ではなく等価線量を使っているのか?
等価線量:ある臓器の平均吸収線量(放射線の種類を考慮) (Sv:シーベルト)
最後は実効線量
さらに実効線量という同じ単位の線量があるのはどうして?
臓器によって放射線への感受性が異なるからじゃ。
確かに細胞分裂が盛んな臓器の方が放射線の影響を受けやすそうだ。
実効線量:各臓器の放射線感受性を考慮した等価線量の加重平均 (Sv:シーベルト)