原子力発電所事故後の現存被ばく状況での放射線防護のカテゴリーの記事は、保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイトに移行中です。
福島県内の水浴場や学校の屋外プールの放射能濃度
Cs-137の濃度が90 mBq/cm3と仮定した計算
EGSによる計算です。
計算結果の検証はなされていません。
線量推計部位 | 線量率 |
---|---|
皮膚基底細胞吸収線量 | 3nGy/h |
その奥の部位の吸収線量 | 2nGy/h |
体表面から深さ1cm程度の吸収線量 | 2nGy/h |
体の平均吸収線量 | 2nGy/h |
参考:β線による寄与
線量推計部位 | β線の寄与 |
---|---|
皮膚基底細胞吸収線量 | 26% |
その奥の部位の吸収線量 | 6% |
体表面から深さ1cm程度の吸収線量 | 0.01% |
体の平均吸収線量 | 0.00001% |
米国EPAの資料を用いた計算
Cs-137が一様に存在する水中での濃度での実効線量への換算係数は1.49E-20 {Sv/[Bq s/m3]}
この換算係数を用いるとCs-137の濃度が90 mBq/cm3の水中での実効線量率は5 pSv/h
Ba-137 mが一様に存在する水中での濃度での実効線量への換算係数は6.26E-17 {Sv/[Bq s/m3]}
(ICRP 60の係数を用いた場合の換算係数は5.83E-17)
この換算係数を用いるとCs-137の濃度が90 mBq/cm3の水中での実効線量率は分岐比を考慮して17 nSv/h
出典
EPA-402-R-93-081, Federal guidance report No.12(pdf file, 1.6 MB)
参考:同じ濃度の空気に囲まれている場合の外部被ばく線量
線量推計部位 | 線量率 |
---|---|
皮膚基底細胞吸収線量 | 160nGy/h |
その奥の部位の吸収線量 | 26nGy/h |
体表面から深さ1cm程度の吸収線量 | 2nGy/h |
体の平均吸収線量 | 2nGy/h |
参考:β線による寄与
線量推計部位 | β線の寄与 |
---|---|
皮膚基底細胞吸収線量 | 99% |
その奥の部位の吸収線量 | 91% |
体表面から深さ1cm程度の吸収線量 | 5% |
体の平均吸収線量 | 0.01% |
Cs-134の濃度が60 mBq/cm3と仮定した計算
上と同様の計算で4nGy/h
米国EPAの資料を用いた計算
Cs-134が一様に存在する水中での濃度での実効線量への換算係数は1.60E-16 {Sv/[Bq s/m3]}
この換算係数を用いるとCs-134の濃度が60 mBq/cm3の水中での実効線量率は35 nSv/h
FAQ
環境省が通知を出したと言うことは海水浴やプールでの遊泳は放射線被曝のリスクがあると言うことでしょうか?
海水やプールの水の汚染の程度は、十分に小さいので、海水浴などでの放射線被曝のリスクは、それをしない場合よりもむしろ小さくなると考えられます。
環境省の通知は、安全をアピールし、観光産業を守るためのものであると考えられます。
水中でのセシウム137が崩壊した後のBa-137 mから放出されるガンマ線の半価厚はどの位でしょうか?
30 cm程度で半分になります。
PETの防護とほぼ同じです。
汚染水表面での線量率はどの程度になりますか?
プール表面での線量率は降下量+プールへの流入量に水の自己吸収を考慮して推計することができます。
RI使用施設での貯留槽表面の線量率の評価で容器の遮へい効果を見込まない場合で考えることができるでしょう。
砂場に滞在する場合の線量も同様に推計することができるでしょう。
Cs-134: 60 mBq/cm3, Cs-137: 90 mBq/cm3の場合の水面上の空気吸収線量率の高さ分布
この例では水中よりも水面上に浮かんでいた方が線量率が高くなっています。
計算で用いた体系です。
プールの排水はどう考えるとよいですか?
まだ考え方が示されていません
(一般論です)
・関係者間で合意形成する必要がある。
・合意形成するには材料が必要(もっとも信頼関係が構築されていることが議論の前提になる)。
・材料の一つとして考えられるのが判断分析資料。
・いくつか考えられるプランに関して、それぞれのプランを実施した場合としなかった場合の良い点、悪い点(放射線リスクがどの程度増加するかなど)を整理して比較することが考えられる。
・環境負荷として増加分の寄与が小さい場合には、何らかの対策を講じることの意義が乏しくなるが、対策を講じないことに納得が得られるかどうかは別の問題。
放射性物質を含む水の中で泳ぐことによる線量としては、どのような経路が考えられますか?
以下の経路が考えられるでしょう。
・遊泳中の体外曝露
・遊泳後の体表面汚染による様々な経路による曝露
・経口摂取
・吸入摂取
放射性物質を含む水につかった場合の線量推計として、「放射性物質を含む水道水の飲用以外の利用に関するリスクについて」の入浴による線量の推定でEPAの資料(EPA-402-R- 93-081)を引用されていますが、Table III2を引用しているとすると数値が異なっているのではないですか?
「放射性物質を含む水道水の飲用以外の利用に関するリスクについて」で示されている考え方は、
EPA-402-R-93-081. FEDERAL GUIDANCE REPORT NO. 12. EXTERNAL EXPOSURE TO RADIONUCLIDES IN AIR, WATER, AND SOIL(pdf file, 1.6 MB)を参考にしています。
この係数は子孫核種の寄与を考慮していません。Cs-137は、蛍光X線以外の光子を出さないので水中では極端に実効線量への寄与が小さくなります。このため、Ba-137 mの寄与を分岐比を考慮して含める必要があります。また、I-131の計算ではXe-131mの寄与も考慮するとより正しい推定値になります。
EPAの資料(EPA-402-R- 93-081)で示されている実効線量はICRP1977年勧告に基づく実効線量当量の数値であり、現在の我が国の法令で採用されているICRP1990年勧告の実効線量とは異なるのではないですか?
上の計算例で示したように異なります。
ICRP1990年勧告で示された荷重(→2007年勧告からは和訳が加重に変更)係数を用いた計算は、電子化されたデータベースなどを用いて行うことができます。
このようなツールとして、RadToolBoxがあります。
海水中のK-40による線量はどの程度ですか?
海水のKの濃度を3.8E-04 g/gとすると、K-40の濃度は1.2E+04 Bq/m3となります。
EPA-402-R-93-081によると、線量換算係数が1.74E-17 Sv/[Bq s/m3]であるので、
線量率は、0.8 nSv/hとなります。
なお、海水中にはウランが3ppb程度含まれています。
EGS5による計算では制動放射は考慮されていますか。
Cs-137のβ壊変で放出される高速電子に由来した制動放射とBa-137mの核異性体転移で放出されるガンマ線だとどちらのインパクトが大きいですか?
後者です。
内部被ばく
Cs-134
60 mBq/cm3の水を100 ml飲んだ場合の摂取量は、6 Bqとなります。
経口摂取による実効換算係数を 1.9E-05 mSv/Bqとすると、線量は0.1 μSvとなります。
Cs-137
90 mBq/cm3の水を100 ml飲んだ場合の摂取量は、9 Bqとなります。
経口摂取による実効換算係数を 1.3E-05 mSv/Bqとすると、線量は0.1 μSvとなります。
報道例
海水浴場 放射線の基準検討へ
文部科学省
環境省
水浴場の放射性物質に関する指針について(pdf file,217kB)
事故前の測定例
島根県による海水の測定
環境試料の放射性核種濃度の調査結果(2008年度)(pdf file,365kB)