新規格基準
食品中の放射性物質に関する広報の実施
~「食べものと放射性物質のはなし」と題して食品売り場等で広報を実施~
厚生労働省
食品衛生法上の新基準値
食品中の放射性物質に関する「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」の改正について
消費者庁
食品中の放射性物質の新しい基準値(pdf file, 246kB)
平成24年4月から、食品中の放射性セシウムについて、暫定規制値から新しい基準値になります。
政府広報
ご存じですか?食品中の放射性物質の新しい基準値は、子どもたちの安全に特に配慮して定められています。
わかってもらいたいという担当者の思いがあらわれているのかもしれません。
米国大使館
Radiation, Health and Food Safety Information Post-Fukushima
新しい食品の規格基準に関するFAQ
事故に由来したPu-241が環境放射能測定で検出されたと聞きました。食品の新しい規格基準の策定では、今後、増加するであろうAm-241のことも考慮されているのですか?
考慮されています。
Pu-241 から生成する Am-241 の濃度比やその線量寄与については どのように考えているのか。
年代別の年代区分別の限度値(一般食品)で、1歳児が310 Bq/kgであるのに比べて13~18歳(男)では120 Bq/kgと13~18歳の方が食事からの線量を相対的に受けやすいのは何故ですか?
1歳児の方が放射線のリスクを受けやすいので限度値は小さくなるはずではないですか?
線量から食品濃度の計算
ここでの限度値は、限度となる線量から限度となる食品中の放射性物質の濃度を計算したものです。
限度となる線量は、ともに1ミリシーベルトです。
この線量は一年間の食事摂取により受ける線量の大きさを示しています(専門用語では預託実効線量と言います)。
食品濃度を決定する要因
線量から食品濃度の誘導計算で結果を決定する要因は、
・単位放射能量あたりの換算係数
・食品の摂取量
・その他(食品区分別の線量割り当てなど)
です。
単位放射能量あたりの換算係数
Cs-137
1歳児:1.2E-08[Sv/Bq]
15歳児:1.3E-08[Sv/Bq]
→ほとんど変わりません。
その理由は1歳児の方が体格は小さい一方で代謝が早いことによります。それぞれの時点までに受ける線量を比較すると、Cs-137を経口摂取した場合、1歳児ではその当日に約半分の線量を受け1週間で約9割の線量を受けます。それに対して15歳児では、その当日に受ける線量は約1/3で1週間で受ける線量は7割程度にとどまり、それ以降も線量を受けます。
Sr-90
1歳児:7.3E-08[Sv/Bq]
15歳児:8.0E-08[Sv/Bq]
→ほとんど変わりません。
その理由は放射性セシウムと同様に、1歳児の方が体格は小さい一方で代謝が早いことによります。それぞれの時点までに受ける線量を比
較すると、Sr-90を経口摂取した場合、1歳児ではその当日に約1/3の線量を受け1月間で約9割の線量を受けます。それに対して15歳児では、その当日に受ける線量は約2割で1月間で受ける線量は7割程度にとどまり、それ以降も線量を受けます。
このように同じ放射性物質の量を摂取した場合には、1歳児に比べて15歳児の方が線量が大きくなります。
食品の摂取量
コメの摂取量は1-6歳児の男児で1日あたり200g程度であるのに対して13-18歳の男子では499.4gと倍以上摂取します。
食品の摂取量では1-6歳児の男児で1日あたり1kg程度であるのに対して13-18歳の男子では2kg程度と倍程度摂取します。
まとめ
線量換算係数があまり変わらず、食品の摂取量で決定されます。
暫定基準やその他に関するFAQ
原子炉で生成量が大きいと考えられる(I-131に対して1.3)Te-132は、I-132に崩壊し、それらは事故早期には空間線量の比較的大きな構成成分ですが、その吸入による甲状腺への線量は考慮されていますか?
考慮されています。
体外測定で甲状腺に取り込まれた放射性ヨウ素による甲状腺の等価線量評価でもI-132の寄与が考慮されています。
線量推計でも考慮されています。
JAEA
福島第一原子力発電所事故に係る特別環境放射線モニタリング結果-中間報告(空間線量率、空気中放射性物質濃度、降下じん中放射性物質濃度)-(pdf file, 1.4 MB)
放射性セシウム-137 と放射性ストロンチウム-90 の経口摂取による内部被ばくについて
NIRS
食品の出荷制限と摂取制限では用いている濃度基準が異なっているのですか?
いいえ。いずれも同じ暫定規制値を用いています。
食品中の放射性物質をめぐる対応のスキーム(pdf file, 393kB)
もっとも、比較する基準は同じであるものの、それを著しく超えるかどうかの判定基準が異なっていると考えられます。
なお、H24年4月以降は新たな摂取制限は設定されていません。
食品中の放射性物質に関する「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方
出荷制限
暫定規制値(現在は基準値)を超過した品目について、地域的な広がりが認められる場合には出荷制限が設定されています。
摂取制限
暫定規制値(現在は基準値)を著しく超過した品目について、サンプル・サイズに関わらず摂取制限が設定されています。
輸入食品の暫定濃度基準
チェルノブイリの時の暫定値は何時“適用廃止”となったのでしょうか?
まだ適用されています。
食品の放射線安全に関する規格基準が食品衛生法で定められたために、それが適用されることになっています。
「暫定」としての基準
ポーランド及びウクライナ産ベリー類の濃縮加工品 の放射能検査の実施について【平成21年 8 月20日】
旧ソ連原子力発電所事故に係る輸入食品の監視指導について(一部改正)【平成21年12月18日】
介入レベル
摂取限度を守れば年間の摂取でも預託実効線量が5 mSvになることが担保されているのでしょうか?
介入濃度は年齢階級別に誘導されており、それぞれの区分でもっとも低い値が採用されています。
このため、放出されたFP(核分裂生成物)やAP(放射化物)などによる線量は、流通しているもので最悪の場合でも、5 mSvよりも低い値になると考えられます(放射性セシウムではもっとも多く採用されているのは成人区分での誘導値)。
(サンプリングに限界があり検査をすり抜けたものの正確な把握は困難かもしれませんが、想定の質をよくすることで、そのエラーは減らすことができます)
別の事象が起こった場合
今回の規制値の導入では、放射性Csは5mSvを一律1/5づつに各食品区分に配分しています。
仮に、同種の事故が国内で発生したとすると、この5 mSvは使えなくなる(担保されていない)のではないでしょうか?
摂取制限基準は、施設から放出された放射性物質がピークに達した後に減っていくことを考慮しています。
従って、その減り方に変化がなければ、実効線量として5 mSvを上回る曝露を与えないことが保証されます。
しかし、環境中の量が増えるなどの事態がおきると、シナリオの範囲外になるので、5 mSvが担保できなくなります。
このように新たな事象が起きた場合は、回避線量の思想からは、そのまま使えることになりますが、残存線量を担保するという観点では、これまでの曝露も考えて、制御を厳格にするかどうかを考えることになるでしょう。
介入するかしないかは、介入により避けられる回避線量だけを考えればよいのでしょうか?
介入をした場合としない場合のそれぞれのメリットデメリットが比較されていますが、もともと線量を受けているので、さらなる追加線量をどう考えるかを考慮することも考えられるでしょう。
同じような構造であるかもしれない例
・もともと住んでいる地域で自然放射線による線量は異なるが、それを考慮して、線量限度の適用を考えるかどうか
・宇宙飛行士が宇宙飛行業務に従事した後に、医療機関に勤務した場合に、放射線診療に従事してよいかどうか
チェルノブイリ原子力発電所事故後の食品への影響をまとめた資料を教えて下さい
東日本大震災に伴い発生した原子力発電所被害による食品への影響について
大気圏内での核実験で放出された放射性核種の総量をまとめた資料を教えて下さい
日本人はヨウ素を多く含んでいる食品をより食するので放射性ヨウ素を取り込んでも被ばく線量が小さいので安全基準をあげてもよいのではないですか?
食習慣による代謝特性を考慮することも考えられますが、暫定規制値でも、甲状腺への取り込みは保守的に想定しています。この背景としては、事故の状況では味噌汁が飲めなくなるかもしれないことや若年層では海藻類の摂取が少なくなっていることを考慮していたようです。
緊急被ばく状況での放射性ヨウ素の基準の適用
基準値はどのような前提で誘導されていたのですか?
- 臨界は継続せず、放出も継続しない。
- より高いレベルの放射性ヨウ素を含む食品は他の地域から流入しない。
課題の指摘例
それは、まあちょっと間違って、場合によっては間違って、不適切に運用されている可能性はあるんですが、例えば、その暫定、食品のほうの暫定規制値のほうは、今回はあまり細かく導出過程は書かれていないんですが、あれは一回切りの放出というものと、自然半減期というものを前提に決められた値なので、実際、運用が、何か3週連続で超えなかったらオーケーみたいな運用をされていたと思うんですけれども、あれは、やっぱりその基準値の算定根拠からしたら間違った運用だったと思っていて、ちゃんと運用しようと思ったら、ヨウ素の場合、1週間で基準値を半分に減らしていくという運用をしないといけない基準値だったと思っているので、そういうのも含めて、やっぱり、その根拠と運用の齟齬があったかという視点も、ぜひ考えてチェックしていただきたいなというふうに思います。
海外の基準
IAEA
IAEA SAFETY STANDARDS SERIES
No. GS-R-2 Preparedness and Response for a Nuclear or Radiological Emergency(pdf file, 324kB)
JOINTLY SPONSORED BY FAO, IAEA, ILO, OECD/NEA, PAHO, OCHA, WHO
TABLE III–I. GENERIC ACTION LEVELS FOR FOODSTUFFS
Radionuclide | Generic action level (kBq/kg) |
---|---|
Foods destined for general consumption | |
Cs-134, Cs-137, I-131, Ru-103, Ru-106, Sr-89 | 1 |
Sr-90 | 0.1 |
Am-241, Pu-238, Pu-239, Pu-240, Pu-242 | 0.01 |
Milk, infant foods and drinking water | |
Cs-134, Cs-137, Ru-103, Ru-106, Sr-89 | 1 |
I-131, Sr-90 | 0.1 |
Am-241, Pu-238, Pu-239, Pu-240, Pu-242 | 0.001 |
米国の摂取制限
米国FDAは、I-131に対するDerived Intervention Level (DIL)として170 Bq/kgを推奨しています。
我が国の摂取制限は放射性ヨウ素に対して、野菜類では2kBq/kgを基準として用いており10倍以上も値が異なっています。
このように値が違うのは何故ですか?
米国FDAによる回避線量は我が国と全く同じ設定であり、実効線量として5 mSvで放射性ヨウ素による甲状腺の等価線量は50 mSvとされています。
線量換算係数はICRP Pub.56を用いています(我が国と同じ)。
I-131では、
・摂取期間を60日間のみとしています。これは、環境での減衰を考慮しているためです(我が国と同様の考え方であるが、より安全側)
・汚染食品の摂取割合は0.1をデフォルト(我が国よりも非安全側)
・地域の特性を考慮する場合は汚染食品の摂取割合は0.3(それでも我が国よりも非安全側)
・3ヶ月児と1歳児では1と設定(我が国と同様)
・年齢階級別にderived intervention levelを計算(我が国と同様)
・derived intervention levelはDietary intakesに対して計算(我が国は食品群別に線量を割り当てて計算)
→1歳児の摂取量は60日間で83kg(=1.38kg/day)
→1歳時で甲状腺の等価線量50 mSvをPAG(Protective Action Guide)にした場合に50[mSv]/(1×83[kg]×3.6×10-3[mSv/Bq])=167 Bq/kg
→DILとして170 Bq/kgと設定
・成人では甲状腺の等価線量50 mSvをPAGにした場合に2,420 Bq/kg
米国大使館からの日本と米国の食品放射線安全対策比較に関する説明
The U.S. Embassy recognizes that food and water safety in some areas of Japan has been a concern for U.S. citizens since the March 11 disaster. Here are answers to some commonly-asked questions.
Are food and water safe in Japan?
How do Japanese standards for food safety compare to U.S. and international standards?
How does the Government of Japan protect the food supply?
How does the Government of Japan protect the safety of seafood?
How does the Government of Japan protect the water supply?
Where can I get more information?
米国の輸入制限基準等
CPG Sec. 560.750 Radionuclides in Imported Foods – Levels of Concern
Compliance Policy Guide: Guidance Levels for Radionuclides in Domestic and Imported Foods July 29, 2004
Supporting Document for Guidance Levels for Radionuclides in Domestic and Imported Foods July 29, 2004
食品の無視できない汚染が一年間以上続き、Cs以外の核種の寄与が大きくなる場合には、再検討が必要と記述されています。米国でのPAGは緊急時被ばく状況でも現存被ばく状況でも実効線量としては5 mSvを採用しているのでしょうか?
米国の食品放射能汚染ガイダンスは緊急被ばく状況と現存被ばく状況を区別していないというよりかは、環境放出後の1年間の適用しか想定されていないと考えられるのではないでしょうか。いずれにしても、一年後以降どうするかは明確には記述されていません。このことから、事故後一年以内に、汚染した食品は市場から排除され、市場にはクリーンな食品しか出回らないであろうという事故の規模内で想定されているとも考えられそうです。
ちなみに、日本でも、東電福島第一原子力発電所事故前は、一部地域からの輸入食品以外には現存被ばく状況を想定した基準を適用していなかったので、自国内で深刻な事故が起きてからでないと、現存被ばく状況での規制を作っていくのは難しいのかもしれません。
関係する資料
Accidental Radioactive Contamination of Human Food and Animal Feeds: Recommendations for State and Local Agencies. 1998
1982年の文書から1998年の文書への見直しに関する資料
トリチウムの議論
COMMISSION OF THE EUROPEAN COMMUNITIES
Accident at the Fukushima NPP, Japan
Questions and Answers: Safety of food products imported from Japan
Proposal for a COUNCIL REGULATION (EURATOM)
laying down maximum permitted levels of radioactive contamination of foodstuffs and of feedingstuffs following a nuclear accident or any other case of radiological emergency
(Codified version)
(presented by the Commission)(pdf file, 168kB)
飲料水関係はこちらをご覧ください。
農林水産省の取り組み
東日本大震災について~「食べて応援しよう!」キャンペーンにおける愛知県の取組について(福島県で水揚げされた鮮魚の販売促進)~
小売業界の取り組み
イオン
福島県いわき市小名浜港で水揚げされたカツオの県内販売について
小名浜魚市場
生活協同組合の取り組み
原子力発電所事故後に従来の自主基準を見直した例(生活クラブ)
福島第一原子力発電所事故に関する見解
置かれた状況でもっとよいと考えられる方法を模索されているように見受けられます。
参考レベルの違い
適用するフェーズの違い
参考レベルは最適化の産物ですから、状況に依存します。
放射性のI-131のガイダンスレベルがばらばらなように見えるけど、何故?
短半減期核種では放出期間の想定
汚染地区の食品摂取割合
摂取する食品の重量
乾燥食品のそのまま摂取割合
調理損失
よくある質問例
飲料水の放射性セシウム濃度の国際基準はありますか?
・非事故時のものがあります。
放射性のI-131のガイダンスレベルがばらばらなように見えるけど、何故?
原子力発電所事故により飲料水の放射性セシウムの摂取制限値が日本では200 Bq/kgとなっていますが、1986年に事故をおこした地域でも今での基準は10 Bq/kgと報道されています。経過期間を考慮しても、ベラルーシなどでの基準は、わが国の基準に比べるとあまりにも低いのではないですか?
・事故直後と25年後を考慮すると、「あまりにも低く」と考えるのが適切ではないと思われます。
・2011年11月現在で、わが国の水道水で放射性セシウム濃度が10 Bq/kgを超えているものはないと考えられます。
・水道法が適用されていない飲料水で水管理が不適切な場合には総放射性セシウムの平均濃度が1 Bq/kg程度になることがあるかもしれません。
飲食物から体内に取り入れる放射性セシウムが国の基準値内であれば本当に大丈夫なのですか?
皆様に如何に分かりやすく安全で安心感をどう説明をすればよいのかが分かりません。
・安心感が得られていないことは不信感があることを意味するでしょう。
・不信感が何に由来するかを考え、その不信感をぬぐうようなアプローチがよいでしょう。
・放射線の曝露量に対応したリスクの大きさは推計することができます。
Codex規格は緊急時に適用するものですか?
最適化を考えると、よりよい対策は状況に依存します。
Codex規格は、国際的な食品流通にあてはめられる規格です。
Codex規格は介入参考線量レベルを1年間の摂取で実効線量として1ミリシーベルトにしていると聞きます。
その目標を達成するために、放射性セシウムは一般食品で1kgあたり1000ベクレルの基準値を設定していると伺っています。
この1000ベクレルは、一般食品を何kg食べるという前提なのでしょうか?
In order to assess public exposure and the associated health risks from intake of radionuclides in food, estimates of food consumption rates and ingestion dose coefficients are needed. According to Ref. (WHO, 1988) it is assumed that 550 kg of food is consumed by an adult in a year.
と ありますので、
年間550kg/y(=1.5kg/d)だと考えられます。
なるほど。よくわかりましたが、ひとつ疑問がわきました。
1000ベクレル×550kg×1.3(セシウム137として)×10ー5という計算をすると、7・15ミリシーベルトになり、1年で1ミリシーベルトを超えてしまうのですが、この計算は間違っていますか?
According to FAO statistical data (see Appendix 1) the mean fraction of major foodstuff quantities imported by all the countries worldwide is 0.1.
とありますので、
7.15ミリシーベルトに0.1(=汚染地域由来の食品が全体の食べる食品に占める割合)をかける必要があります(=0.7ミリシーベルト)。
ピーク濃度と平均濃度の比
この係数を原子力安全委員会の暫定基準では0.5としています。
放射性セシウムの線量換算係数
放射性セシウムをセシウム137と仮定すると、非安全側にはなります。
なぜなら、セシウム134の方が係数が大きいからです。
もっとも、時間がたつと放射性セシウムの構成割合ではセシウム137の割合が大きくなります。
なぜなら、セシウム137の方が半減期が長いからです。
コーデックスのように、1年1ミリを守るのに1000ベクレルでよいならば、日本の基準値も1000ベクレルでよい、というふうに解釈してもよいのでしょうか?
1年1ミリシーベルトを超えないようにするための放射性セシウムの濃度は、
・放射性セシウム以外の放射性核種がどの程度含まれているのか?
・汚染地域からの食品の摂取割合
・食べる食品の量
・その他
で決定されます。
・放射性セシウム以外の放射性核種が食品に多く含まれているかもしれない
・汚染地域からの食品ばかりを摂取するかもしれない。
・より多くの食品を摂取するかもしれない
と考えた場合には、Codexの規格値とは誘導の前提が異なると考えられます。
各国の規制例
規制値はフェーズで異なり得るので比較する場合には条件を合わせることが必要です。
消費者庁の資料
食品から受ける線量で、K-40と比較をしているのは何故ですか?
Kを含む食品の摂取を控えることを示唆しているのでしょうか?
Kは必須元素であり、安易な摂取制限は非合理的だと思います。
Kを含む食品の摂取を控えるように伝えることは意図していません。
放射能量の比較として示しています。
なお、K-40による線量はカリウムの摂取量にはほとんど依存しません(体内で恒常性が働きます)。
食品からの摂取としてはPo-210からの寄与が大きいことがある(摂取量に依存します)。
自然放射線による曝露も制御対象にはなり得ることはあります(何らかの介入を行うべきかどうかはトレードオフになるでしょう)。
食品に由来したK-40の摂取をなぜ規制しないのですか?
カリウムは必須元素
カリウムの摂取を控えるのは非合理的であると考えられます。
K-39/K-40比を変えるのは膨大なコストがかかる
K-40を除去する対策は正当化されません。
もともとあるもので、規制のしようがないので、規制から除外するという考え方が放射線防護では採用されています。
カリウムの摂取を控えると排泄量が低下
摂取量の制限が単純に線量に反映されません。
米国の飲食物摂取制限の値は日本によりも低いと聞きます。
日本の規制値は不適切ではないのですか?
アメリカは0.111 Bq/Lが規制値ではないのですか?
米国の平常時の規格はEPAが示しています。
4 millirems per year(=0.04 mSv/y摂取)を介入線量レベルとすることがリスクアセスメントに基づく総合的な検討により決定されています。
介入線量レベルから各核種の制限濃度が誘導されています。
放射性セシウムのうち、Cs-137は誘導濃度(が200pCi/L(≒7.4Bq/kg)とされています(他の核種の寄与を考えると、より濃度は低くなります)。
放射性セシウムのうちCs-134は、誘導濃度が80pCi/L(=2.96Bq/L)とされています。
また、I-131は3pCi/L(=0.111 Bq/L)とされています。
日本でもこの水準が平常には担保されていることが環境放射能水準調査でも確認されています。
WHOは1 Bq/Lを規制値として示してるのではないですか?
Ra-226などのα核種では、1 Bq/Lを規制値として示しています。
日本水道協会による翻訳
Reference Dose Levelを0.1 mSvとした場合の各核種の誘導濃度は、
Cs-134: 10 Bq/L
Cs-137: 10 Bq/L
となっています。
汚染割合とは何ですか?
汚染割合の定義
摂取する食品でもっとも高い濃度(=摂取制限濃度)に対する、平均的に摂取する食品の濃度の比です。
暫定基準値の誘導では、「ピー ク濃度比」とされていました。
海外での規制値誘導では、汚染地域の食品摂取割合としている例があります。
汚染していない食品とは何ですか?
放射性物質を含まない食品はないと考えられます。
また、どのような食品でも人工の放射性核種を含むと考えられます。
このため、汚染しているかどうかは、食品からの線量として、その寄与が無視できるレベルかどうかであると考えられます。
測定で検出されるかどうかは、測定の質に依存しますので、必ずしも、検出されるかどうかであることは意味しません。
汚染という用語はあるレベルを超えた容認できないものというイメージを与えますが、ここでは、必ずしもその定義では使われていません。
0 Bqを目指すべきではないですか?
今の状況でのベストを追求するしかないでしょう。
0.1 Bq/dを目指すのか、1cBq/dを目指すのか、1 mBq/dを目指すのか、1nBq/dなどを目指すのかを考えることになるでしょう。
最適化で「達成可能な濃度」を目指すという考え方が理解できません。もっとも望ましい汚染の程度があるというのは不可解です。
端的には汚染が全くない状況を目指すのは不可能だからと考えられるからです。
また、放射線リスクを小さくすることを目指すことによる弊害も懸念されると考えられるからです(何よりも放射線のリスクの低減を目指すのであれば、それも一つの考え方だと思います)。
・どのレベルまで目指すべきか?
・そのレベルは達成可能か?
を被災地の状況も考慮して具体的な事例で考えていくしかないのではないでしょうか。
放射線リスクはできるだけ減らした方がよいのではないですか?
合理的に達成できる範囲で減らすのが合理的だと考えられます。
また、放射線リスクを減らすこと増えてしまうリスクも考慮する必要があるでしょう。
食品の検査結果データからは汚染割合50%とあるのは安全側過ぎるのではないですか?
「汚染割合」は、摂取する食品の状況に依存します。
・どのような食品摂取パターンを取るかは、個人によって異なります。同じような食品のみを摂取する方をどこまで考慮すべきによって、その前提の安全尤度の大きさは変化するでしょう。
・出荷制限を超えそうだと予測され、出荷しないこととし検査を控えていたものが、状況が改善したと考えられることから出荷を目指して検査を行うようになると、出荷制限濃度付近の割合が増えることが考えられます。つまり、これまでのデータがそのままでは通用しないことも考えられます。
既に事故から1年経過し50%汚染していることはないのではないですか?
食品の規格基準に近い濃度の食品を半分摂取する場合でも(=規格基準に近い濃度のコメが近くで採れるとして、それを食べ続けた場合でも)、食品に由来した追加摂取が1 mSvを超えないように設定されています。
自家菜園の野菜を食べるとどの程度内部被ばくしますか?
食品の放射能濃度と摂取量がわかれば、線量が推定できます。
自治体のサービスを利用して測定して評価することも考えられるでしょう。
福島市の例
伊達市の例
市の広報「市政だより災害対策号」で結果を市民にお知らせなさっています。
「暫定規制値」と「規格基準値」はどう違いますか?
暫定規制値
緊急時の摂取制限・出荷制限の係る暫定規制値は、食品衛生法第6条に基づいて設けられています。
規格基準値
2012年4月以降は、食品衛生法第11条(→13条)に基づく、摂取制限・出荷制限の規制のが導入が予定されています。
食品衛生法第11条(→13条)では、「販売の用に供する食品若しくは添加物の製造、加工、使用、調理若しくは保存の方法につき基準を定め、又は販売の用に供する食品若しくは添加物の成分につき規格を定めることができる」とありますので、基準値という用語が用いられています。
2012年4月以降に、暫定規制値ではなく、規格基準値を用いるのは、暫定規制値が誤っていたからでしょうか?
摂取制限・出荷制限は最適化の産物
事故からの回復の程度によって、最適化の結果は異なります。
最適化には主観的な判断も含まれるので、科学的なデータや様々な方のご意見を踏まえて、主権者が判断することになるでしょう。
安全とは?
リスクの程度が小さいことを意味します。
新規格基準値では、より小さいリスクとすることを目指すことなります。
安全を確保するだけでなく、消費者に安心してもらうことが大切ではないですか?
信頼を得るために、対策の実態を理解していただく必要があるとすると、そのためには関係者ができることをすることが考えられるでしょう。
参考レベルは、そもそもどのような性格なのでしょうか?
緊急時や現存の制御可能な被ばく状況での、放射線防護では、参考レベルを目安とした管理がなされています。
参考レベルは、最適化により誘導されるものであり、それを超えないように対策を講じるものです。
また、それを下回る場合でも、さらなる防護措置が必要かどうかを検討すべきとされています。
参考レベルは、おかれている被ばく状況に依存します。
達成可能なレベルありきで決めていてご都合主義ではないですか?
・決定過程の不透明感をなくす
・関係者の態度への疑念を拭う(官僚が善良であっても出来ることには限度があることに気付いて頂く?)
ことが課題であるように思われます。
そもそも達成が難しくても低くしなければならないのであれば、たとえ厳しくても濃度設定を低くするのが道理だろうと思う方々が多いのではないでしょうか?
放射線リスクを低減するために、どこまで社会で負担するかに帰着するのではないでしょうか。
地場産業や地域での文化に重要であったり、単価が高く大量に摂取することのない食品は、規格基準となる濃度を別に定めるのが合理的ではないですか?
単純さと最適化のトレードオフになるでしょう。
過去の原子力災害事例では、その考え方が適用された事例もあります。
規格基準で牛乳と乳児用食品だけ特出しのように説明されていますが、飲料水と一般食品の摂取で、1ミリシーベルトが担保されるように計算されているのでしょうか?
飲料水は切り離して、牛乳と乳児用食品は汚染割合の設定を変えて(一般食品の半分の濃度となります)、確認しており、全年齢階級を考慮した計算がされています(主要な食品で汚染割合が異なる場合の線量も検討のために計算されています)。
従って、牛乳の摂取も考慮されています(年代によっては乳児用食品も)。
つまり、最も線量が高くなり得る性年齢階級であっても(線量換算係数と食品摂取量を考慮して)、平均的な食品摂取量であれば、年間の飲料水+食品摂取で合計1ミリシーベルトを超えることがないことが担保されています(=それぞれの年代で規格基準濃度を一年間摂取しても、預託実効線量が1ミリシーベルトを超えないように計算されています)。
リスクの割り当て問題になるので、何らかの事情があり特別扱いにするもので、まず達成可能な濃度を決めて(飲料水を先に設定したのと同じような考え方)、残りの食品の濃度を決めていくというアプローチもあり得ると思いますが、そのような議論は国民の間からは起こらなかったため、単純に計算されています。
1歳と20歳でリスクの割り当てはどうすべきですか?
食品の規格基準では、20歳に比べて1歳では1/3程度の線量になることが担保されており、リスク係数の年齢依存性を3と仮定するとリスクとしてほぼ等価になると考えられます。牛乳と乳児用食品では、他の食品よりも濃度レベルが低い水準にあるので、リスク比がこの想定を超えることは考えがたいと思われます。
いずれにしても、子どもと20歳とで、リスクの割り当てをどうするのがよいのかという子どもの場合の線量低減レベルも社会で合意形成していくしかないと思われます。
食品でのその他のリスク
どちらのリスクがより「問題」であるかは、おかれている状況や主観的な価値観に依存します。
トランス脂肪酸
消費者庁
農林水産省
食品安全委員会
アクリルアミド
加工食品中アクリルアミドに関するQ&A(厚生労働省)
フライドポテトを家庭で作るときのアドバイス(農林水産省)
アクリルアミドのトレードオフ
vs. 遺伝子組み換えUW-Madison scientists create low-acrylamide potato lines
カドミウム
食品中のカドミウムに関する情報(農林水産省)
「食品に含まれるカドミウム」に関するQ&A(厚生労働省)
食品安全情報(化学物質)No. 3/ 2013(2013. 02. 06)
カドミウムのトレードオフ(放射線照射による品種改良)
コメのカドミウム汚染をなくす遺伝子を発見
カドミウムをほとんど含まないコシヒカリ、イオンビーム照射で作出に成功-安全なお米を生産現場から食卓へ-
ヒ素
ヒジキ中のヒ素に関するQ&A(厚生労働省)
食安委のリスク評価
食品に含まれるヒ素の実態調査(農林水産省)
水銀
アルミニウム
基準値の有効数字
104Bq/kgは100 Bq/kgとみなすと聞きましたが、どのような考え方に基づくのでしょうか?
基準値そのものの有効数字に依存すると考えられます。
基準値の有効数字が二桁であることに由来していると考えられるでしょう。
なお、基準値の適用に関しては、タイプ1のエラーだけではなく、タイプ2エラーをどうするかの観点での吟味も求められるでしょう。
Codex
CCCF6, Codex Committee on Contaminants in Foods
Radionuclides in food
169. The Committee agreed to establish an electronic Working Group to start new work on levels for radionuclides in food for comment at Step 3 and further consideration by the next session, subject to approval by the 35th Session of the Commission.
170. The Working Group would:
• review the current guideline levels for radionuclides in food; and
• develop in connection with the review of the guideline levels, a clear guidance on the interpretation and application of the guideline levels.
171. The Committee agreed that the electronic Working Group would be led by the Netherlands and co-chaired by Japan, working in English only and open to all members and observers.
172. The Netherlands and Japan will prepare a project document for submission to the 67th Session of the Executive Committee through the Codex Secretariat.
173. The Committee noted the importance of involving the IAEA and other relevant organizations in this work.
出荷制限のものが出荷された例
基礎知識
山口 一郎, 食品中の放射性物質の新たな基準値を考えるための基礎知識, ファルマシア, 2013, 49 巻, 1 号, p. 32-36.
歴史的な経緯
政府事故調査委員会ヒアリング記録
道野 英司.飲食物の出荷制限等について,食品中の放射性物質に関する規制値について,暫定規制値の設定に関する関係機関の調整等について
原子力災害対策特別措置法
(原子力災害対策本部長の権限)
第二十条 原子力災害対策本部長は、前条の規定により権限を委任された職員の当該原子力災害対策本部の緊急事態応急対策実施区域及び原子力災害事後対策実施区域における権限の行使について調整をすることができる。
2 原子力災害対策本部長は、当該原子力災害対策本部の緊急事態応急対策実施区域及び原子力災害事後対策実施区域における緊急事態応急対策等を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、関係指定行政機関の長及び関係指定地方行政機関の長並びに前条の規定により権限を委任された当該指定行政機関の職員及び当該指定地方行政機関の職員、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関並びに原子力事業者に対し、必要な指示をすることができる。
第七章 罰則
第三十七条 第七条第四項、第八条第五項、第九条第七項、第十一条第六項又は第十三条の二第二項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第三十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第七条第三項、第八条第四項前段、第九条第五項又は第十一条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第十条第一項前段の規定に違反して通報しなかった者
三 第十一条第七項の規定に違反して放射線量の測定結果を記録せず、又は虚偽の記録をした者
四 第十二条第四項の規定に違反して資料を提出しなかった者
五 第十三条の二第一項又は第三十一条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
六 第三十二条第一項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
第三十九条 第二十七条の六第一項の規定による市町村長又は同条第二項の規定による警察官若しくは海上保安官の禁止若しくは制限又は退去命令に従わなかった者は、十万円以下の罰金又は拘留に処する。
第四十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第三十七条又は第三十八条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。