治療用加速器のターゲットの廃棄はどうすればよいですか?

リスクは小さいが、放射性廃棄物として廃棄する場合には排出者としての責任を果たそう。
関係者はそれぞれの専門性を発揮して医療機関を支援しよう。

治療用加速器の解体は結構大変だね。
放射化の程度を装置解体と廃棄物処理業者さんと確認しながら行って何とか納得してやってもらえた。

一緒に計測して作業するのは信頼を確保するためにもよいのじゃないかな。

ターゲットとターゲットフォルダなどは一月間減衰させても、GMサーベイメータで有意な放射線が検出されたから、放射性廃棄物として引き取ってもらうことにしたけど、RI廃棄物廃棄依頼書の書き方がよくわからない。

10 MeVの加速器で運転終了時の表面での1cm線量当量率が30 μSv/h程度あっても3年程度減衰させれば、5nSv/h程度になるので、規制免除レベルは下回り、物量も考えると非放射性廃棄物としてもよいように思うが、
どうしても、今の段階で廃棄したいのであれば、放射性廃棄物とせざるをえないじゃろ。

保管していることもあるのですか?

IAEA technical reports series No.414 Decommissioning of Small Medical, Industrial and Research Facilitiesでもその議論がある。
保管している例じゃ。

それで何に悩んでおるのかな?

RI廃棄物を集荷してくれる日本アイソトープ協会からは、RIの種類と量を書くように言われたけど、よくわからない。

廃棄物の性状を告知するのは排出者の義務じゃから、
わからないではすまされんぞ。
国民の納得もえられないじゃろ。

それはそうだけど、どうしてよいかわからない。

計測して確認するのであれば、日本分析センターに依頼することが考えられるじゃろ。

これだときちんと測ってもらって安心だね。
純β核種が出来ていた場合はどうなるのかな?

組成がわかっておれば、生成核種は推定できるから、生成量が極めて小さい核種は無視しても放射線安全は確保される。

医療機関にある測定器を使って測定した結果から推定するのはどうすればよいのかな?

標準的なターゲットだと比較的半減期の長い放射化核種とその半減期は
51Cr 27.70d
54Mn 312.1d
57Co 271.8d
60Co 5.271y
であるようじゃ。

それぞれの放射性物質の量は?

4年間の減衰だと
51Cr <1 Bq
54Mn <1 Bq
57Co <1 Bq
60Co <20 Bq
程度じゃ(出典:厚労科研報告書、KEK報告書)。

日常の放射線診療で使う量に比べると、なんだかどうでもよい数量だね。減衰させる前だとどうですか?

放射線利用で直接利益を受けない場合には受けうるリスクを厳しく制限しないといけないので、患者さんへの投与量は単純には比較できない。
比較的半減期が長いのは、これらであるようじゃ。
51Cr <100 Bq
54Mn <5Bq
57Co <20 Bq
60Co <30 Bq

廃棄物運搬中の事故を考えると半減期が短いものも考慮した方がよさそうだ。
どんなのがありますか?

安全側過ぎるかもしれないが、
18 MeVの直線加速器を考えると、
24Na 15 h
28Al 2.2 min
56Mn 2.6 h
57Ni 36 h
53Fe 8.5 min
59Fe 45 d
58Co 71 d
62Cu 9.7 min
64Cu 12.7 h
82Br 35.3 h
122Sb 2.7 d
187W 24 h
が生成しうるようじゃ

計数効率を安全側に設定して記述するとよいじゃろ

より合理的にするにはどうすればよいですか?

表面での線量率から放射能量を推計するとよいじゃろ。

例えば?

試料の正味計数率が30 cpmだとすると、ある程度のサイズの鉄試料で60Co が1 [ Bq/g ] あれば2000 [ cpm ] の計数率になるので(出典は山西さんのデータ)、15 mBq/gの濃度じゃから試料の質量が200gだと3 Bqになる。

さらに合理的に評価するには、施設で使う測定器と試料の形状などから計数効率を計算するとよさそうだね。
現場からは、組成が不明という意見がありますが、どうすればよいですか?

企業秘密の保持と安全性検証のバランスのお話じゃな。
企業秘密は健全な競争に不可欠だから保持されなければならないが、第三者が安全を検証できるようにしておくのも重要じゃ。
特殊な遮蔽体の透過率評価と同じで安全性評価用の概念組成を示してもらうとよいのではないじゃろか。

業界の自主的な取り組みが求められそうだね。

よい医療を国民に提供できるように関係者は力を結集して欲しい。

参考資料

ターゲットの放射化例

平坦化フィルタ(イコライザ、フラットニングフィルタ)の放射化例

【材質】タングステン+銅の合金
【表面の線量】
(取り外し時)表面線量率(H(10)):0.41 mSv/h、表面計数率;25kcpm
(半年後)表面線量率(H(10)):0.28µSv/h(約千分の1に減衰、実効半減期:10.5日)
【光子放出生成核種(濃度は取り外しから半年後経過時の概算値)】

図.Ge半導体検出器による測定例
(濃度)
Mn- 54 : 0.6 mBq/g (Fe-54(n,p)Mn-54)
Co- 60: 5 mBq/g (Ni-61(γ, p)Co-60, Ni-60(n, p)Co-60)
Zn- 65: 1 mBq/g (Zn-66(γ,n)Zn-65)
Ag-110 m: 0.3 mBq/g (Ag-109(n,γ)Ag-110 m)
W-181: 3.6kBq/g, 約1 MBq(規制免除レベルの約1/10)(W-182(γ,n)W-181の核データW-182(γ,n)W-181のグラフ)
W-185: 180 Bq/g((W-186(γ,n)W-185の核データW-186(γ,n)W-185のグラフ, W-184(n,γ)W-185)
W-182での光核反応で生成されると考えられるW-181の濃度が最も高い。
クリアランスレベルを上回っているのは、W-181のみ。
W-181のクリアランスレベルは10 Bq/gなので、平坦化フィルタ単体でそのレベルになるには、今後、3年間の減衰保管が必要。
制動X線は、W-185のβ線によると考えられる。
(データの解析はkek桝本和義教授の援助を得た。)

Zn-66(γ,n)Zn-65

Data: retrieved from NNDC, web site

Ni-61(γ, p)Co-60

Data: retrieved from NNDC, web site

ベビーメタル(WとANVILOY-1700の合金)の放射化例

半年保管後の測定例

放射能濃度の概算(以下の濃度は概算値で正確に評価された値ではありません)
Co- 57 0.01 Bq/g
Co- 58 5 mBq/g
Co- 60 0.03 mBq/g
W -181 60 Bq/g
W -185 0.3 Bq/g
半年の減衰保管で免除レベル未満であり、運転後は2年以内の冷却でクリアランスレベル未満となる。

セカンダリコリメータ(Jaw)の放射化例

放射能濃度の概算
Co- 57 0.2 mBq/g
Co- 58 0.1 mBq/g
Zn- 65 0.04 mBq/g
W -181 1 Bq/g
半年の減衰保管でクリアランスレベル未満となっている。

Ni-58(n,p)Co-58とNi-60(n,p)Co-60では、前者の方が断面積が大きい。また、反応の閾値エネルギーは後者の方が高い。
また、ターゲットの数は前者の方が倍程度大きい(Ni-68:68%, Ni-60:26%)。
従って、照射直後は、Co-58の生成量の方が多いと考えられる。
Ni-58(n,p)Co-58

Data: retrieved from NNDC, web site
Ni-60(n,p)Co-60

Data: retrieved from NNDC, web site
Ni-58(γ,n)Co-57のグラフ

電磁石の中央部の放射化例

放射能濃度の概算
Mn- 54 30µBq/g
Co- 60 3 mBq/g
Zn- 65 20µBq/g
Ag-110 m 30µBq/g
Sb-124 0.3 mBq/g
半年の減衰保管でクリアランスレベル未満となっている。
ただし、電磁石の中央部の放射化は、加速された電子のエネルギーを揃える際のビームロスなどにも影響を受ける可能性があり、必ずしも一般化できない可能性がある。

ENDF-formatが理解できなくても利用できる光核反応の核データ

ENDF/B-VII Incident-Gamma Data

桝本先生による解説記事

加速器施設の放射化

関連学会等による指針案

放射線治療装置における放射化物の管理に関する学会標準(ドラフト版)

日本放射線技術学会研究班・厚労科研研究班報告書資料

治療用加速器の運転状況実態調査
放射線発生装置の医療利用の実態調査へのご協力のお願い

日本放射線腫瘍学会

診療用高エネルギー放射線発生装置の放射線障害防止法・医療法に基づく放射線管理の徹底に関する報告書

中性子のエネルギーの検討論文

医療用電子線線形加速器で発生する中性子線の平均エネルギーMean Energy of Neutrons from an Electron Linear Accelerator for Radiation Therapy

陽子線治療や重粒子線治療でのボーラスなどの放射化

厚生労働科学研究

厚生労働科学研究(医療技術評価総合研究事業). 重粒子線治療等新技術の医療応用に係る放射線防護のあり方に関する研究. (中間報告書)

補償フィルター/ 患者コリメータ放射化測定

宮原信幸、今野紀章、斎藤金三郎、遠藤真広.補償フィルター/ 患者コリメータ放射化測定
治療患者数が1,400人となった段階で、補償フィルター5千個(30t)と患者コリメータ2.5千個(20t)が保管されていました。
筑波大学陽子線治療センターでは2千個を超えるボーラスが保管されています。

粒子線治療用患者ボーラスの放射化量の評価

坂井洋登、松村一博、清水勝一、矢能稔啓、井田亮二、須賀大作.粒子線治療用患者ボーラスの放射化量の評価.日本放射線安全管理学会 第2回学術大会
日本放射線技術学会での発表

添付文書の記載例

装置の廃棄は、法令に基づいた保管廃棄処置が必要である。加速部装置、中性子シャッタ、患者ボーラス、患者コリメータ、固定具などは装置運転に伴って放射化されるので、保管廃棄は計画性をもって法律に従い処置を講じること。

文部科学省科学技術試験研究委託事業での検討

治療で用いたボーラス・患者コリメータは放射化物としての管理が必要か?
平成23年度文部科学省科学技術試験研究委託事業「放射化物安全規制に係る調査作業委員会」(原子力安全技術センター)と平成 24年度文部科学省科学技術試験研究委託事業「放射線発生装置から発生した放射線によって汚染された物の安全規制のための運用基準に関する調査」(原子力安全技術センター)報告書によると陽子線治療や炭素線治療で用いたボーラス、炭素線治療で用いた患者コリメータは2年後にはクリアランスレベルを下回ることが確認されたとして、放射化物としての管理は必要ないとされています。ただし、物理実験の為に大線量を照射した場合は、個別の評価が必要になると考えられます。

重粒子線治療体験記


放射性廃棄物にも言及されています。
東京都八王子市立別所中学校 教諭 伊藤 宏昭
6 低レベル放射性廃棄物
一年前の突然のガン宣告。余命数ヶ月であったものが現在も生きていられる要因、それはとにもかくにも”人と人との善意とつながりに助けられた!”その一言である。生死を分けた分岐点一つ一つで人に助けられた、家族に助けられた、そういう意味で感謝以外言葉がない。その一方、自分自身を助けるのは自分自身しかないことも事実である。最後の時を迎えざるを得ないときの気管挿管や昇圧剤の使用には意義を見いだせないが、生還へのステップであるならばとりうる手段はすべて尽くすべきだと考える。『あきらめたらその時がすべての終わり』なのだ。たとえ解決困難な問題であったとしても、問題の核心に正面から向き合い目をそらせないこと、問題の先送りはしないこと。しかし、困難であればあるほど目をそらせたくなるし、先送りしたくなる。それをやったら致命的な結末が待っていることがわかっていても・・・
ガン宣告からここに至るまで、重要な判断はすべて自分の頭で考え、自分自身の意志で決定してきたという自負が私にはある。しかし、すぐ隣に自分自身のことなのに自分のこととは考えず、現実から目をそらし、問題を先送りしようとする自分もいた。
重粒子線治療で個人的に用いられたボーラスやコリメータなどはきわめてわずかながらも放射化するという。すぐに測定器にも検出できない程度に放射能は弱まるがこれらは低レベル放射性廃棄物として外に出すことができず敷地内に保管されつづけている。私自身”直接的に”放射性廃棄物を排出していたのだ。
なぜかその時六ヶ所村の「低レベル放射性廃棄物埋設センター」の広大な風景が頭の中をよぎった。

ボーラスの放射化へのコメント

重粒子線治療で用いられるボーラスは確かに放射化され、このうちBe-7が最も長く残存しますが、その生成量は極めて少なく(=クリアランスレベルを下回るレベル)、放射線防護上は、放射性物質として扱う必要のない程度です。

関連したパブリックコメント

「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令案」等に関するパブリックコメント(意見公募手続)の結果について

学会によるガイドライン

粒子線治療施設における放射化物の取扱いに関するガイドライン(改訂:2013 年 9 月 20 日)

Current situation of regulatory reform on induced radioactivity in Japan

Activities of MEXT(pdf file, 328kB)

米国での取り組み

DOE

Accelerator Safety Workshop 2010

Breakout Session 1:

Metals Moratorium

Weds, 8/18 の講演

Progress on the Metals Moratorium Initiative DavisMetals Moratorium Issues and Progress Rokni
Metals Moratorium Issues and Progress

メーカーからの推奨例

Induced Radioactivity in VMS Accelerators

資料の注意

この資料は、Clinacのユーザーや正規の撤去や廃棄業者のために作成されたもので、一般の方にお示しすることを意図したものではありません。
推計された濃度はある一つの装置(Clinac 2100; s/n 0097; measured 10/15-16/2007)のものに過ぎません。
実際の放射化のレベルは加速器の使用法に依存するので、このデータは典型例を示すものでもありません。

トラブル例

放射化物の盗難

放射線管理区域からの銅線材の盗難

FAQ

放射化しているはずなのに放射化が確認できません。何が考えられますか?

規制対象部品の範囲は、前提を置いて決定しています

このため、前提の範囲外の場合には、放射化が確認されないことがあります。
放射化が確認されない場合としては以下のことが考えられます。
・BGの線量率が高く,変動も大きいために、少ない線量の増加を見いだすことができない。
・対象物が小量で数量として少ないために、線量の増加分が小さい。
・測定対象物の自己吸収が大きく放射化している部分が過小評価されている。
・治療で用いた総線量が小さく放射化が少ない。
・半減期が長く、かつ、γ線を出す放射化核種が生成しにくいような工夫がなされている(ビームロスを小さくしたり光核反応をおこりにくくするなども含む)。
・運転停止から放射化を評価するまでの時間が長く、放射化核種が減衰した。

放射化が確認されない場合の廃棄の扱い

日本アイソトープ協会は産業廃棄物を扱う施設ではありませんので、放射性でない廃棄物の処理の委託はできません。
日本アイソトープ協会に保管廃棄を委託するには、放射性廃棄物としての性状を情報提供する必要があります。
最も安全側なのは、検出限界の線量が検出されたと仮定して、放射化量を推計することです。

非放射性廃棄物として扱う場合の手続き

十分に減衰したものを放射性廃棄物としての規制の対象外とするには、クリアランス検認の手続きを経る必要があります。

金の放射化

金が放射化した場合、198Auになるように思いますが、196Auがメインになるのは何故ですか?

放射化する状況に依存します。
光核反応
中性子との反応

粒子線加速装置

粒子線治療施設における放射化物の取扱いに関するガイドライン

添付文書

本装置を使用することにより、装置の一部が放射化するため、法令に従って保管・廃棄をすること。定期的に装置の放射化状態を測定し、医療従事者が被ばくしないよう適切に管理すること。

動体追跡照射技術で患者に埋め込んだ金マーカーは放射化しないのですか?

北海道大学病院陽子線治療センター見学会 印象記

ターゲットでの低放射化技術の利用例

筑波大学の装置は、大強度専用陽子線加速器リニアック(8 MeVのRFQ+DTL形式リニアック)により、標的のブリスタリング破損を回避するため3層構造標的(0.5mmのベリリウム、パラジウム、銅性ヒートシンク)を用いており、低放射化技術を採用し、大強度中性子を発生させることが出来ます。

放射化の程度が小さいとしている例

運用の仕方によっては、加速器の一部がわずかに放射化する場合がある。ただし、放射化した物質は金属の中にとどまり、周りに飛散するわけではない。
高エネルギーの中性子が出てこないので、放射化も非常に限られたものにできると考えている。装置の実際の計算、反射材の置き方など、諸条件により多尐変わるが、あまり大きな問題にはならないと考えている。

補償フィルタの問題に言及している例

スキャニング照射法の長所は、補償フィルタがいらないところである。通常のワブラー法による照射法では照射後に放射化された補償フィルタが溜まっていくので、その処理が大変であり、コストもかかる。

記事作成日:2010/03/19 最終更新日: 2017/07/26