原子力発電所事故後の現存被ばく状況での放射線防護のカテゴリーの記事は、保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイトに移行中です。
報道されている専門用語の解説です
放射性物質は崩壊時に一定の確率で放射線を放出します(核種によって特異的です)
I-131は約9割の確率で最大0.6 MeVのエネルギーの電子を崩壊時に放出し、約8割の確率で0.4 MeV程度のガンマ線を放出します。
Cs-137は崩壊時に1個の電子(最大0.5 MeVか1.2 MeVのエネルギーを持ちます)と約9割の確率で0.7 MeVのガンマ線を放出します。
放射性物質の量は一秒間の崩壊数で示します。
1 Bq(ベクレル)は毎秒1個のペースの崩壊を示します。
放射性物質が放射線を出すのは崩壊(壊変)するときなので、放射性物質としての量は、どの程度、崩壊するかで示します。
測定の効率
放射性物質から放出された放射線は、ある確率で測定器に入ってきます(測定器の大きさなどにより確率が異なる)。
測定器に入ってきた放射線は、ある確率で測定器内でエネルギーを失います(放射線の検出器の種類により異なる)。
エネルギーを失った(=放射線のエネルギーが検出器に与えられる)場合に放射線が計数されます。
GM計数管は比較的エネルギーの高いβ線を効率よく測定することができます。
CPSは一秒間あたりの放射線の計数率です(60CPM=1CPS)。
1 Bqの放射性物質から毎崩壊時に1個の放射線が放出されて、その放射線を検出器で全て捕まえている場合には、60CPMの計数率が1 Bqの放射能の量であることを示します。
kCPMは1,000CPMのことです。
(kは1,000, Mは百万を示します)
CPM: count per minute
CPS: count per second
GM計数管は、何故、高感度?
ここでの「高感度」は、相対的なものです。
信号を増幅しているから。
どうやって増幅
GM計数管に入射した荷電粒子や、放射線がGM計数管に入射後生成される荷電粒子(=電子)を加速し、加速された電子が,周辺をさらに電離することで、一つの放射線粒子の入射時の応答を改善させているからです。
この現象は「電子雪崩」と呼ばれています。
ガイガーカウンターは「エネルギーの大きさ」を測定できる機器ですか?
入射するエネルギーに関係せずに、入射した荷電粒子である放射線や入射した放射線に由来して生成される荷電粒子を効率よく数える装置であり、入射した放射線のエネルギーを直接得ることは出来ません。
入射した荷電粒子などの放射線のエネルギー情報を得るには、計数管の窓の厚みを変化させ、応答を観察するなど必要があります。
ガイガーカウンターは「微弱なエネルギーの大きさ」の放射線粒子も計測できますか?
「微弱なエネルギーの大きさ」の放射線粒子を計測するには、放射線粒子が検出器に入射する必要があります。
ガイガーカウンターの窓の厚みを薄くすると、より「微弱なエネルギーの大きさ」の放射線粒子も計測することが出来ますが、その窓を突き抜ける運動エネルギーを持たない放射線粒子は計測できません。
GM計数管は、「まるごと食品中」の放射性セシウムを効率的に検出できる?
まるごと食品では、β線を検出することが困難です。
何故なら、β線は、まるごと食品で自己吸収されるからです。
放射性セシウム由来のガンマ線は、入射する数が同じ場合には、(それなりのエネルギーを持つβ線よりも検出される可能性は、2桁以上小さくなりますが)検出されることが期待されます。
しかし、エネルギー弁別されていないので、他の線源由来のガンマ線の入射との区別を付けることが課題になります。
食品中の放射性セシウムを計測するには?
GM計数管を用いた計測で、食品の基準値レベルの濃度にあるかどうかは、周囲を遮へいし、エネルギー弁別しないと、短時間の計測で判断するのは困難です。
NaIシンチレーションサーベイメータなど、ガンマ線への感度がよりよい検出器では、周囲を遮へいし、計測時間を確保することで、必ずしもエネルギー弁別しなくても、食品の基準値レベルの濃度にあるかどうかが判定できることがあります。
ある測定系が、その水準に達しているかどうかは、総合的な観点から判断されます。
FAQ
CPMとCPS混同しているようです
CPSは一秒間あたりの放射線の計数率です(60CPM=1CPS)。
もうこの()内からおかしいと思いますが。
Sは秒ですよね?60分=1秒になっていると思いますが。
Sは秒です。1秒間に1個計数することは1分間で60個計数するのと等しいことになります。