「口内法は被ばくが少ない」というフレーズを聞いたことがあるでしょうか?
確かに用いるビームは細いので患者が受ける実効線量は小さくなります。
しかし、ビームの単位面積あたりの線量は胸部撮影の約10倍です(もっとも歯科医療機関によって差異があります)。
このため受像体を保定する手指の被ばくが1 mSv程度になる可能性は十分にあります。
手指の線量限度は500 mSvなので繰り返し介助していると線量限度を超えることも考えられるでしょう。
手持ち撮影を意図しない携帯型口内法 X 線装置を使用して手持ち撮影を行った場合、1 日あたりの撮影回数が 4.7 回以上*3 になると、医療法施行規則の線量限度(500 mSv)を超えるおそれがある。
IAEAではレベルに応じた管理を推奨しています
患者の介助のために照射中にどの程度、X線室に立ち入りますか?
歯科用イメージングプレートなどを保持しますか?
IAEA
Radiation protection of staff in dental radiology
スペシャルニーズ歯科での介助作業と放射線曝露
山口 一郎, 南 佑子, 塚本 豊浩, 中井 康博, 三宅 実, ゴンザレス・クリーゼル, 廣田 誠子, 保田 浩志.スペシャルニーズ歯科での放射線管理.日本保健物理学会研究発表会講演要旨集 53回 64 – 64 2020年6月
山口 一郎, 三宅 実, 中井 康博, 保田 浩志, 廣田 誠子.障害者歯科放射線診療における医療従事者の線量評価.共同利用・共同研究課題 / トライアングルプロジェクト 研究成果報告集 2019年度報告書
従事者の線量推計例
Dental staff doses with handheld dental intraoral x-ray units
Hand-held dental X-ray
製品の例
Handheld X-ray
わが国でも薬事承認は得られている。
規制の例
オーストラリア国南オーストラリア州 South Australia (pdf file, 94kB)
X線診療室の利用はdiscourageされている(AustraliaだけではなくNew Zealandでも同様の規制)。
米国では、操作上の注意事項を示した上でハンドヘルドX線装置の使用が認められています。DENTAL RADIOGRAPHIC EXAMINATIONS: RECOMMENDATIONS FOR PATIENT SELECTION AND LIMITING RADIATION EXPOSURE
災害時の対応で言及されている例
わが国の労働安全の規制
下に記載されているように、X線診療室以外の使用では、距離の制限がかかっている。
電離放射線障害防止規則
立入禁止
第十八条 事業者は、第十五条第一項ただし書の規定により、工業用等のエックス線装置又は放射性物質を装備している機器を放射線装置室以外の場所で使用するときは、そのエツクス線管の焦点又は放射線源及び被照射体から五メートル以内の場所(外部放射線による実効線量が一週間につき一ミリシーベルト以下の場所を除く。)に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、放射性物質を装備している機器の線源容器内に放射線源が確実に収納され、かつ、シャツターを有する線源容器にあつては当該シャツターが閉鎖されている場合において、線源容器から放射線源を取り出すための準備作業、線源容器の点検作業その他必要な作業を行うために立ち入るときは、この限りでない。
2 前項の規定は、事業者が、撮影に使用する医療用のエックス線装置を放射線装置室以外の場所で使用する場合について準用する。この場合において、同項中「五メートル」とあるのは、「二メートル」と読み替えるものとする。
診療放射線技師法の法令適用
大分県
「X 線検査の撮影は、ポジショニングまでが一連の撮影行為となっております。」
医療法の法令適用
山形県
JIRA
放射線安全も含めた医療安全の資料
大阪府歯科医師会
歯科診療所スタッフのための医療機器の取り扱いに関する医療安全
放射線安全に関してスペシャルニーズ歯科に関する記述はないようです。
歯科医師の場合
歯科では大部分の者が検出限界以下であっても、少数の者の被曝が平均線量当量に大きく寄与している。これらの者への対策が歯科職業被曝の重要な課題と言えよう。
昭和53年からの3年間、歯科医師・女・61-65歳の項に着用者1人。年被曝線量当量がそれぞれ410,420,400 mrem(400 mremは4mSv)が記録されている。恐らく同一人物であり、特定の撮影パターン例えばフィルムを自分の手で押さえて撮影することが習慣的になっている可能性が強い。幼少児の撮影時に患者を押さえることも被曝の原因となっている。
診療の補助
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相原まり子, 中向井政子, AIHARA M, NAKAMUKAI M. 歯科衛生士法違反から見た歯科医業に関する抵触行為について. 湘南短期大学紀要 [Internet]. 2005 [cited 2023 Nov 29];16:1–8.
宮下登志子.不安な歯科衛生士.朝日新聞.昭和52年5月14日