そもそも二重鎖って何?
内容以前に質問のタイトルが理解されないように思うけど。
細胞の複製に必要な情報は細胞核にあるDNA(Deoxyribonucleic acid)におさめられておる。DNAは遺伝子の本体じゃ。遺伝子と言っても子供の世代に伝わるのではなく、複製される細胞に伝えられる情報じゃ。DNAは2本の鎖による螺旋状の構造物で、放射線で、両方とも切れることがあって、1本のみの切断よりも修復が大変で、健康に悪影響を及ぼすという説明がよくされている。
よく理解できない方は生物学の復習から入る必要がありそうだ。
二重鎖切断は放射線照射に特徴的ですか?
放射線によるDNA損傷としては重要じゃが、少ない線量だと日常に起こるDNA損傷に埋もれてしまう。
放射線にあたらなくてもDNAが切れてしまうってどういうこと?
生命の維持には活性酸素が必要じゃが、DNAの損傷をもたらすのじゃ。
活性酸素によるDNA損傷の頻度は細胞一つあたり一日1E+6の程度にも達する膨大なもので、その中で二重鎖切断が起こる確率は小さいが、DNAの損傷頻度そのものが大きいので、細胞の10個に1つは、ある一日で二重鎖切断が生じると考えられておる。
それに比べて、日常の自然放射線レベルだと細胞1万個に1つに放射線に由来した二重鎖切断が生じておると考えられる。
なるほど、少しの放射線でリスクがうんと大きくなるとは考えがたいのですね。
話を二重鎖切断の修復に戻すと、二重鎖切断を修復するには、まずは二重鎖切断がおきたことを感知しないと始まらないんじゃないかな。
DNA損傷センサーが何かはまだ完全にはわかっておらんが、P53タンパクが損傷の程度を判断して、
1)細胞周期の停止
2)DNA損傷の修復
3)修復不可能と判断した場合は細胞死(アポトーシス)
がおこると考えられておる。
切れても直すなんてすごいね。
DNAの損傷はとてもよく起こっているので生物には修復機構が備わっておるのじゃ。
二重鎖切断は放射線に特異的という訳じゃなく、それに対しても修復機構を持っておる。
他に影響を与えないようにアポトーシスするのもなんだか憐れだね。
でも、たくさんの細胞がアポトーシスしたら影響が出そうだね。
それが細胞欠落症状じゃ。
150 mGyを超えると精子の減少が観測されることがある。
検査の回数が多いとよくないということ?
例えば、X線CT検査だと年1回でも15年間続けて受けると精子が減少するのかなあ。
細胞の欠落症状じゃから、組織として回復しておれば、それまでの線量はオフセットされておる。
ただし、比較的大きな線量を使うIVRじゃと、繰り返し行い、転院する場合には注意が必要なことがある。
適当なツールを使って皮膚の線量分布を把握しておくと安心じゃろ。
放射線の影響は世代間を超えて蓄積されないのかなあ。
ひとたび被ばくした線量はDNAに何らかの影響を蓄積し次世代へ伝えられるか?という疑問じゃな。
人類が地上に存在してから現在まで何年くらいじゃろか?
40万年位かなあ?
じゃあ、世代数は?
少なく見積もっても1万世代だ。
一世代で受ける線量は?
年間2 mSvで50年とすると100 mSvか。
1万世代だと、約1000 Svだね。
影響が蓄積されているとするとどうなるじゃろか?
とても世代間で蓄積するとは思えないね。
広島・長崎で致死量近い線量を被爆して死を免れた人たちの子孫での遺伝的障害の発現頻度は一般人によりも高いか?というのもよくある疑問じゃが、
被爆2世と一般人の間に、周産期異常、乳幼児死亡、性染色体の異数体の出現頻度、突然変異、遺伝性がんのいずれも差は検出されていないのじゃ。
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