原子力発電所事故後の現存被ばく状況での放射線防護のカテゴリーの記事は、保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイトに移行中です。
放射性物質と言えば半減期だな。
時間がたつと減ってしまうけど、ウランは半減期が長くてなかなかなくならないから危険というイメージがある。
学校で過渡平衡を学ぶと子孫核種がどんどん増えてしまうと心配してしまう学生もおるようじゃ。
放射性廃棄物の話で混乱するところですね。
どれだけ増えるかは連立微分方程式を解けば簡単にわかるから [1]、得体の知れないお話しということではない。
でも半減期の長い核種は危険だから、なるべく医療でも短い半減期のものを使おうとしているのじゃないの?
目的に応じて使い分けておる。
ある程度長い期間かけて照射した方がよい場合は比較的長い半減期のものも使われておる。
何でも最適化が大切じゃ。
半減期が長いとなかなか放射能がなくならないから危険じゃないの?
放射性核種の数が同じだとすると、半減期が長い核種は、それぞれの原子核が放射性崩壊するまでの時間が長いことを意味する。
だから、すごく半減期が長い核種だと我々が生きている間には崩壊しないから放射線が飛んでこないということになる。
でも未来の人類に影響を与えそうだ。
それは受ける線量によるお話になる。
また、極端に半減期が長いものとして、Bi-209を考えると半減期は1.9×1019年なので、量が少なければ、ヒトの寿命を考えると生存期間中には崩壊しないと考えられるので、安定同位体とも考えられる。
逆に半減期が短いとすぐになくなるから危険性が小さい気がするけど、半減期が短い核種は集中して放射線を出すので危ないかもと思ってしまう。
放射性核種の数が同じだとすると、半減期が短い核種は、それぞれの原子核が放射性崩壊するまでの時間が短いことを意味する。
だから、すごく半減期が短い核種だと、その核種のそばいる時間に、その核種が崩壊する確率が高いということになる。
結局、半減期だけじゃなくて、それがどの程度あるか(曝露時間中の総壊変数)ということが重要なんだね。
医療で使うTc-99mは核異性体でTc-99という半減期が長い核種になるが、それによる人体への線量は小さい[2]。
もちろん、Tc-99mに汚染されたものを廃棄する場合の安全評価では、Tc-99のこともきちんと考慮されておる。
何でも総合的に考えると言うことだね。
[1]
-dN1/dt=λ1N1
-dN2/dt=λ2N2-λ1N1
-dN2/dt=λ2N2-λ1N1,0e-λ1t
両辺にe-λ2tをかけると、
e-λ2t×dN2/dt+e-λ2t×λ2N2=λ1N1,0e-λ1t×e-λ2t
d(eλ2t×N2)/dt=λ1N1,0e(λ2-λ1)t
eλ2t×N2=λ1N1,0∫e(λ2-λ1)tdt+C
λ2t×N2=λ1N1,01/(λ2-λ1)e(λ2-λ1)t+C’
N2=λ1/(λ2-λ1)×N1,0×e-λ1t+C’e-λ2t
t=0のときN2=N2,0とすると、
N2,0=λ1/(λ2-λ1)×N1,0+C’
∴C’=N2,0-λ1/(λ2-λ1)N1,0
N2=λ1/(λ2-λ1)×N1,0e-λ1t+(N2,0-λ1/(λ2-λ1)×N1,0)e-λ2t
N2=λ1/(λ2-λ1)×N1,0(e-λ1t-e-λ2t)+N2,0e-λ2t
[2]
Tc-99mの半減期が6.01時間であるのに対して、Tc-99の半減期は2.11×105年です。
このため、放射性物質の量としては8桁、Tc-99の方が小さくなります。
例えば、2016年度のアイソトープ流通統計によるとTc-99mの日本での流通量はMo-99/Tc-99mが76,127 GBqでTc-99mが298,780 GBqとなっています。Mo-99の6倍量のTc-99mが採取可能だとすると使用量は755 TBqとなります。これらのTc-99mが壊変してできるTc-99の量は2.5 MBqとなります。
医療用放射性核種の半減期
核種 | 半減期 |
---|---|
C-11 | 20.39分 |
N-13 | 9.965分 |
O-15 | 2.037分 |
F-18 | 109.8分 |
P-32 | 14.26日 |
Co-60 | 5.271年 |
Ga-67 | 3.261日 |
Kr-85m | 1.83時間 |
Sr-89 | 50.53日 |
Y-90 | 64.1時間 |
Tc-99m | 6.01時間 |
In-111 | 2.805日 |
I-123 | 13.27時間 |
I-125 | 59.41日 |
I-131 | 8.021日 |
Cs-137 | 30.07年 |
P-32の半減期が誤っていたので修正しました。
ご指摘ありがとうございました。
FAQ
Pu-239の半減期は2万年程度であるはずなのに、核実験が行われていた頃に比べて、1/1.000に減ったというのは、話が合わないのではないですか?
1/1,000に減ったという説明は、環境での存在量の議論ではなく、年間などの降下量の推移を説明しているものと思われます。
疑問を呈している例
南先生からのご指摘
○南委員 ちょっと話は異なるかもしれませんけれども、医療では短半減期核種を非常に多用されていて、非常に結構なんですが、一つだけちょっと、これから本格的に動き始める再処理との関連で、再処理ではやはりモリブデン系統、要するにテクネチウム99が出る。医療でも、モリブデン、テクネ99mを利用して、mは6時間の半減期なんですけれども、それが崩壊した後テクネの99になって、これが非常に長半減期なんですね。2×105 年ぐらいあったと思うんですが、これがちょっと環境へ出ていっている。それのレベルの調査が今は非常にないんです。コンマ3ミリオンぐらいのβ線放出核種で、調査が非常に難しい。化学分析を伴わないとできないということで、余り研究報告がないので、これから再処理との関連で、現状の水準を把握しておかないと、ちょっとまた難しいことが出てくるんじゃないかなと思って、ちょっと心配なので、コメントいたします。どうも。
出典
関連情報
半減期が長い核種が、規制上、放射性ではないとされた例
有効半減期が長い程危険であるとしている例
放射化学入門
比べ方にもよると考えられます。
半減期が最長の放射性(?)同位体
テルル128の半減期は2.2E24年。