Decades after Childhood Radiation, Thyroid Cancer a Concern
December 16, 2010
悪性腫瘍の治療や複数回の診断目的のX線CT検査のいずれであれ、小児期に頭頸部に放射線が照射された場合、58年以上もの追跡により甲状腺がんのリスクが高くなることが、 米ロチェスター大学メディカルセンター(URMC)による研究で明らかにされました。
この研究は、医療での小児への放射線照射による影響を調べたものとしてはもっとも長期に追跡されたコフォート集団を用いており、甲状腺がんの発症の有無が調べられました。
この研究結果は、Radiation Researchの2010年12月号に掲載されました。
筆頭著者であるURMCの地域予防医学部の准教授のJacob Adams博士によると、このデータは、X線CT検査などの放射線を用いた画像診断の件数の増加による公衆への線量の増加が甲状腺がんの罹患率の上昇と関連があるのではないかという示唆を与えるかもしれないとのことです。
「電離放射線の発がん性は既知で、実のところ、5歳以下の小児に年間百万回程度のX線CT検査が行われています」と Adams博士は続けます。「X線CT検査は他の画像検査は重要な診断手段で放射線治療は悪性腫瘍の重要な治療手段ですが、何でもリスクを伴います。私たちの研究は、医療での放射線利用に伴う甲状腺がんへの影響を、これまでにない長い期間で調べたものです。私たちの研究結果は、乳幼児期に複数回のX線CT検査を頭頸部や胸部を受けた場合や小児期に上半身に放射線治療を受けた場合に生涯での甲状腺がんのリスクが増加することを強く示唆しています」
Adams博士と同僚は1953年から1987年にニューヨーク州のロチェスターで低線量胸部放射線治療を受けたグループでの甲状腺がんの発症率を推計することで、今の患者の将来のリスクを間接的に評価しています。
コフォートは幼少のころ、当時の医師が治療対象と考えていた胸腺腫大に対して放射線治療を受けたものです。真の悪性腫瘍のために放射線を照射されたものはいません。このため、この研究ではがん発症の感受性は交絡因子(=真の要因ではない見かけ上の要因。疫学研究の結果の解釈では常に重要)にはなっていません。
Adams博士は2004年から2008年に集団を再調査し、対象グループの健康状態を放射線の照射を受けていない兄弟と比較しました。
放射線を照射された患者では 1,303 人中50人が甲状腺がんを発症しているのに対し、1,768 人の兄弟では甲状腺がんの発症は13人のみでした。
研究者が甲状腺がんのリスクに寄与しうる要因を考慮してもなお、放射線と甲状腺がんの間には強い関係が見られました。
前世紀の中ごろの集団が受けた放射線の量は現在の医療手技による線量も加算されています。
しかしながら、一般的には、かつては、より高い線量でありながら精度が悪いものでした。
研究対象コフォートの最後の段階の線量は、今日での小児への胸部のX線CT検査と比較する程度であることがこの研究では述べられています。
高い放射線の暴露では甲状腺がんのリスクが高くなるのは驚くべきことではないでしょう。
ロチェスター研究は、5つの先行する異なる集団を対象にした疫学研究のデータをプールしたレビュー研究で得られた知見を裏づけるもので、少なくとも小児では放射線による発ガンリスクの増加が中央値で57.5年間継続することを明らかにしました。
出典
Decades after Childhood Radiation, Thyroid Cancer a Concern
文献
医療でのExternal Radiationによる甲状腺がんのリスク研究のまとめ
謝辞
表は長瀧重信先生にご提供いただきました。
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