か行


回避線量
averted dose
対策を講じることで低減できる線量。
災害時には、受ける放射線の量をできるだけ減らしたいと思われるかもしれないが、予想されるリスクがどの程度か、その対策がどの程度効果的か、その対策で別の問題を引き起こさないかなど総合的な観点で考える必要がある。 原子力災害時の対応指針もご覧下さい。
外部被ばく
external exposure
体外にある線源から受ける放射線。内部被ばくと対立する概念。希ガスなどサブマージョンからの被ばくも含む。
確定的影響
deterministic effects
放射線照射により細胞死に至ることによる症状(死んだ細胞が引き起こす症状)。これに対して、確率的影響は生き残った細胞が引き起こす病態(法村俊之)。確定的とあるが、確率的な現象である。ICRP 2007勧告からは、組織反応(Tissue reactions)とも称される。
確率的影響
stochastic effects
発生確率が線量に依存すると考えられる影響。放射線防護では、発がんを確率的影響と考えている。リスクは線量に依存するので、線量が小さいとリスクも小さい。確率的影響のリスクの大きさを5%/Svとすると、50 μSvの胸部X線検査でのリスクは2.5E-6となる(ただし、このリスク推定の不確かさは大きい)。放射線によるがんで寿命が40年短縮すると仮定すると、平均余命短縮は40y×2.5E-6=1[h]程度となる。従って、この場合、1[h]以上の余命延長以上の意義のない場合、その検査は正当ではないと考えられる。
確率的生命価値
value of statistical life: VSL
社会的な介入が正当化どうかを判定するために導入される指標。ごくわずかな死亡リスクを何らかの介入で微少量削減できるとした場合の、その介入に対するWTP(支払い意思額)やWTA(いくら補助を受けるとリスクを受け入れるか)。例えば、10万分の2のリスクを10万分の1にするときのWTPが5千円であるとすると、VSLは、5千円÷10万分の1=5億円となり、この対策で100万人の人口に対して死亡リスクが10万分の2低下させることができるとすると、その対策の価値はVSLを用いて、100億円と算出される。確率的価値の公的利用
環境放射線モニタリング
environmental radiation monitoring
放射線施設周囲など環境での放射線の量を計測すること。リアルタイムで結果を見ることができるものもある
企業の社会的責任
corporate social responsibility:CSR
企業が社会に果たすべき責任。直接の顧客へのサービスに留まらない。
吸収線量
absorbed dose
放射線により与えられた電離エネルギーの大きさ。与えられた電離エネルギーの総量を評価したい領域の質量で規格化している。吸収線量が倍になるとラジカル生成密度は倍になる。
Grice(グライス)の会話の原則(maxim)
maxims of conversation
コミュニケーションでの誤解が受け手側の推論によると考え、その受け手側の推論は、受け手もコミュニケーションに能動的に関わっているが故に生じると理解する考え方。その観点から誤解を避けるようにメッセージを発信すべきと言う発想が生まれる。詳しくは、新型インフルエンザ発生時におけるクライシスコミュニケーションの問題
グレイ
Gy
吸収線量の単位。J/kgと同じ次元。温度上昇ではなくラジカル生成に着目しているので特別な単位を用いる。
血管造影
Angiopraphy
血管内に造影剤を入れてX線で血管を観察する検査法。
欠如モデル(欠陥モデル)
deficit model
専門家から非専門家へのトップダウン&一方通行の科学の普及啓発活動のベースとなる考え方。人々がリスクを理解せず、望ましい社会合意に至らないのは、人々の理解が適切ではないという考え方に基づく。非専門家を科学技術に関する知識が欠如している状態(=空っぽの容器)と捉え、彼らに科学知識(=溶液)を注入し知識を増えた状態にすれば問題が解決されるというモデル。科学者が信仰しそうなモデルで有用な場面もあるが、明らかな限界があることが数多く実証されている。例えば、啓発に基づく社会的受容の獲得は一般には困難である。この理由としては、(1)知識が高まると情報への理解は増える。このため、知的能力が高くなると自尊心が高くなり他者の言うことを容易には受け入れなくなる。(2)科学的なデータの解釈は一つではなく、専門家のリスク認知が往々にして様々である。さらに、いくつかのリスクがある場合に、どのリスクを重んずるかは主観的であることから、データをもとにどう考えるかは公衆衛生倫理の問題に帰着する。(3)人々の認知に対して啓発しようとする科学者に誤った思いこみがある(例えば、人々はゼロリスクを追及しているに違いないとする確信など)が指摘されており、リスクコミュニケーションは、一方方向ではなく、議論すべきものであるとマインドセットの変更を求める意見がある(吉川.2009)。もっとも、どこまで議論が機能するかも難しい問題ではある。以上から、社会での問題が解決されない理由は、専門家側が非専門家側にリテラシーや専門的知識が「欠如」している、という考え方から逃れられないことにあるとの指摘がある。
原因確率
probability of causation
ある疾患を発症した場合に、その原因が着目している曝露である確率。計算ツール例(Probability of Causation–NIOSH-IREP)
高線量率透視
High dose rate fluoroscopy
毎分50から125 mGyの照射。作動中は連続した警告音が鳴る。
コンピュータ断層撮影
Computed Tomography
放射線の透過情報から断面情報を得る検査法。エックス線装置を使う方法と放射性医薬品を使う方法がある。デジタル化した透視装置でも行えるものがある。
合意性の誤謬
False Consensus
自分の判断は一般的で正しく多数意見であるとみなす一方で、違う意見は一般的でなく不適切であるとする考え方。一般に誰でもこのような傾向を持つ。狭い専門領域内のみで活発にコミュニケーションしている専門家は、同様の考え方に囲まれて暮らすことになるので、「社会的現実(=あるコミュニテイ内で共有されるリアリティ)」が強化されやすい。専門家以外のコミュニティー以外の人と率直に情報交換すれば、自らのコミュニティーの中で合意されている考え方が他のコミュニテイでは必ずしも合意されたものではないことが実感できるかもしれないが、意固地になると固定化した役割図式の再生産に至ってしまう。
記事作成日:2009/12/01 最終更新日: 2016/06/22