放射線はものを突き抜けるって聞いたけど、
通り抜けるってなんだか不気味で怖いね。
全部通り抜けるのだったら怖くも何ともない。
えっ。どういうこと?
太陽からのニュートリノ高いエネルギーを持つが体を突き抜けていくので何の影響も及ぼさない。
詳しくは小柴昌俊先生関係のサイトをどうぞ。
ある「もの」を突き抜けないかったら、シールドは、その「もの」を使えばよいから簡単だけど、
完全に通り抜けるのだったら防ぐ必要もないということか。
でも、可視光はガラスじゃないと「もの」を突き抜けないのに何故、放射線は「もの」を通り抜けられるの?
可視光もガンマ線・エックス線の光子ではあるが、粒々のエネルギーが異なるので波長が違うのじゃ。
エネルギーが高くなると波長が短くなるのでものを突き抜けられるのじゃ。
波長が短い電磁波から見ると原子はスカスカじゃ。
中性子はシールドが大変って聞いたけどどういうこと?
中性子は水素の原子核である陽子と同じような重さを持つが電荷がない。
だから電気的な力の影響を受けないのじゃ。
電気的な力じゃ止められないとすると物理的にぶつかって止まるしかないのかな?
その通りじゃ。
鉄の壁を作ったら物理的に止めるのは簡単だと思うけど、どうしてコンクリートを使っているのかな?
原子炉ではどうしているの?
ポイントは2つあって、一つめは原子に比べて中性子は小さいということじゃ。
原子に比べて原子核はとても小さい。中性子から見れば原子は空虚で中に原子核という小さな的があるに過ぎない。原子がたくさんないとなかなか的に当たらないじゃ。
じゃ、壁を厚くして見かけ上、的を大きくすればいいんじゃないの?
ポイントの二つは中性子をぶつける原子核の重さじゃ。
ぶつかる相手の原子核があまりにも重たすぎると壁にぶつかる野球のボールと同じで単に跳ね返ってくるだけになる。
ビリヤードみたいに中性子を同じような大きさの原子核に衝突させればよいのか。
だったら止まりそうだね。
だから水素を含む物質が中性子を止めるのによいのじゃ。
ビリヤードでやるみたいにまっすぐにぶつけると手玉が止まるように中性子も止まるのかな?
絶対零度の世界だとそれで止まるけど室温で気体分子が飛び回っているのと同じよう
に中性子が特別なエネルギーを持たずに飛び回ることになる。
これを「熱化」と呼んでいる。
「熱化」って何?
発電に必要な水蒸気を発生させるための熱?
エネルギーが高くて高速で飛び回っていたのが、冷めて室温と同じになって気体分子と同じように飛び回るということじゃ。
気体も暖めると気体分子の運動が活発になるじゃろ。
熱気球を思い浮かべてほしい。
単に飛び回っているのだったら気にしなければよいんじゃないの?
中性子は電荷がないので原子核に接近できる。
運悪く、きわどくエネルギーバランスを取っている原子核とぶつかった場合には、ヘリウムの原子核にあたるアルファ線が原子核から運動エネルギーを得て放出されることがあるのじゃ。
生体中でできたアルファ線は生体内にラジカルを作るので、量が多いと生体影響を与えかねない。
『ラジカルは、「放射線って何ですか?」の回を参照』
アルファ線は英国でのリトビネンコ氏の殺害事件で有名になったね。
その他の問題は中性子が原子核に入り込んで放射性核種を作ることじゃ。
もっとも中性子が過剰になっても放射性核種にならない核種が多いので中性子のすべてが放射化に関与するわけではない。
いずれにしてもウランなどでの核反応でできた中性子は数kmを超えては飛んでいかないことになる。
身の回りには放射性核種がたくさんあるって聞いたけど、何で放射性核種ができるのが問題なの?
量が少なければよいが、あまりにたくさんできると放射線防護の対象になるのじゃ。
特に加速器の運転に伴い中性子がたくさん発生すると、周囲を放射化するので、加速器を撤去したり施設を壊すときに注意が必要になるんじゃ。
いろいろなことを考えないといけないんだね。
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