原子力発電所事故後の現存被ばく状況での放射線防護のカテゴリーの記事は、保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイトに移行中です。
法令適用
原子力発電所の事故により生じた放射性同位体で汚染されたものは、どのような法律が適用されるのですか?
法令の想定を超える事態であるために、関係省庁から必要に応じて通知が出されています。
環境省
福島県内の災害廃棄物の処理における一時保管(H23.7.28)
一般廃棄物焼却施設における焼却灰等の一時保管について(H23.7.28)
国土交通省
福島県内の下水処理副次産物の当面の取扱いに関する考え方について
農林水産省
放射性物質が検出された野菜等の廃棄方法について(Q&A)
放射性物質が検出された原乳(生乳)の廃棄方法について(Q&A)
保管している牧草等の取扱いに関するQ&A
Q7.飼料利用できない牧草等を埋却やすき込みを行った場合、ほ場に悪影響はないのですか。
A7.そもそも、300~5,000 Bq/kgの牧草は、繁殖雌牛などに給与して構わないものです。また、放射性物質に汚染された牧草については、300~5,000 Bq/kgの地域では、通常の一般廃棄物として処分又は、土中にすき込むことにより処分することとしています。
Q12.放射性物質により汚染された牧草をほ場にすき込むと、消費者が畜産物の安全性について不安になるのではないですか。
A12.5,000 Bq/kgを超える牧草等については、すべて一般廃棄物として処分することとしており、ほ場へ還元されることはありませんので、畜産物への影響はありません。
また、5,0000 Bq/kg以下の飼料利用が可能なレベルの牧草等について、すき込んだ場合の、栽培される牧草への影響については、問7の通りです。
このため、通知に従って放射性物質により汚染された牧草をほ場にすき込むのであれば、畜産物の安全性への影響はありません。
福島県の浜通り地方及び中通り地方(一部を除く)は、引き続き保管することとなります。
学会からの要望例
日本放射線安全管理学会
放射線障害防止法および政省令改正に関する要望書の提出について
JRSMシンポジウムでのアピール発表について
国会での参考人による指摘例
平成23年7月27日衆議院厚生労働委員会
仮に規制免除レベルをあてはめた場合の基準はどうなりますか?
我が国では国際原子力機関が設定した免除レベルを規制対象になるかどうかの基準として採用しています。
規制免除レベルは濃度と数量で与えられており、双方の基準を超えるものが規制対象になります。
例えばCs-137の規制免除レベルは数量が1×104[Bq]、濃度が1×101[Bq/g]とされています。
従って、この考え方に従うと、1[kBq/kg]の濃度の試料が10[kg]あると、規制が免除されないレベルとなります。
ただし、この基準は全ての場合に適用されるわけではありません。
廃棄物に関して、仮に規制解除レベルをあてはめた場合の基準はどうなりますか?
クリアランスレベルは濃度で与えられており、Cs-137では0.1 Bq/gです。
規制解除レベルの考え方を適用すると、廃棄物の量が1tである場合に、0.1 MBqあれば、放射性物質の規制から解除できないと考えられます。
ただし、規制解除レベルの考え方を適用するのは、そもそも規制対象であるものに対してです。
放射線管理区域を設ける必要があるのはどのような場合ですか?
電離則では、
一 外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が三月間につき一・三ミリシーベルトを超えるおそれのある区域
二 放射性物質の表面密度が別表第三に掲げる限度の十分の一を超えるおそれのある区域
を管理区域とすることを求めています。
どの程度の放射性物質を扱うとその基準を超えるかは、事前に判断することができます。
また、必要があれば、作業環境をモニタリングすることで事前の安全評価が適切かどうかを判断することができます。
個人線量モニタリングはどのような場合に必要とされていますか?
電離則では、
第八条 事業者は、放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入る労働者の管理区域内において受ける外部被ばくによる線量及び内部被ばくによる線量を測定しなければならない。
なお、「労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について」に、「線量の測定を行ったものとみなして取り扱って差し支えない」場合の基準が示されています。
と定められています。
放射能に汚染した試料を扱う場合の線量はどの程度になりますか?
安全側推計例
Cs-137の1cm線量当量率定数は0.0927(μSv/h)/(MBq/m2)であり(参照:アイソトープ手帳(第10版))、Cs-137が点線源として存在した場合を仮定し(最も安全側になります)、仮に1万Bqの汚染サンプルを距離30 cmのところにずっと滞在して測定する場合、
0.0927 x 1/(0.3 x 0.3) x 0.01(MBq)≒0.010 μSv/h
の線量率となります。
この環境で、1年間2,400時間測定した場合の被ばく線量は、
0.010 μSv/h x 2400 = 24.0 μSv
となり、自然放射線源で被ばくする線量(世界平均)2.4 mSvの1%程度の増加になります。
(因みに、現在までに実際に測定された牛肉の放射性セシウムの汚染濃度は最大で4,350 Bq/kgでした)
サーベイメータ用にCs-137の校正用線源(5kBq)を購入しました。
手で扱ってもよいですか?
安全側に1cm2あたり5kBqであるとすると、その線源を皮膚に密着させた場合の皮膚が受ける吸収線量率は、
1.4[(nGy/h)/Bq/cm2)]×5[kBq/cm2]=7[μGy/h]
となります(ICRU Report 56)。
たとえ、効果が小さくても、ピンセットを使う方法は手間もなく検討に値することから、ピンセットを使う方法が推奨されています。
また、規制対象外であっても不要になった場合は頒布元に返却することが求められていますので、台帳を整備しておく必要があります。
線源の使用上の注意は、納品時に同封される『使用上の注意事項』に従って下さい。
試料の自己吸収や面状の試料を想定した線量評価の参考例
安心して仕事するにはどうするのがよいですか?
納得できるルールづくり
関係者の理解を得ることが大切です。
放射線を理解する
研修を利用するのもよいでしょう。
国立保健医療科学院では、あなたの疑問にとことん付き合う研修を実施しています。