Q.Kr-81mによる従事者被ばくの評価法の質問です。
対象核種がクリプトン(Kr-81m)の場合、告示第398号「放射線診療従事者等が被ばくする線量の測定方法並びに実効線量及び等価線量の算定方法」の別表第3に当該核種の記載がありません。クリプトン以外にも、希ガス類は全て記載がありません。
また、改訂版 医療放射線管理実践マニュアル 116ページでも、内部被ばく計算の部分で-Kr-81mやXe-133の数値は入っていません。
計算しなくてもよいのでしょうか?
A.
放射性希ガスが人の周囲にあると、吸入により身体組織に放射性物質が集積することによる線量よりも、体外又は肺の中の放射性気体からの線量の方がはるかに大きくなります(体内摂取が少ないので。なお、量の大小に関する表現は相対的に考えましょう)。
このような核種を「サブマージョン」とよびます。
サブマージョンとしてのKr-81mの実効線量率は4.8E-10 [(Sv/d)/(Bq/m3)]とされています。
年間の被ばく時間を2,000時間、線量管理基準値を50[mSv/y]とすると、誘導される空気中濃度が1.3[Bq/cm3]となることから、空気中濃度限度は1[Bq/cm3]とされています(医療法施行規則 別表第3の第二欄)。
また、年間の被ばく時間を8,760時間とすると公衆の線量限度が1[mSv/y]なので、誘導される空気中濃度が5.7[mBq/cm3]となることから、排気中濃度限度は5[mBq/cm3]とされています(医療法施行規則 別表第3の第四欄)。
お尋ねの「改訂版 医療放射線管理実践マニュアル」別紙4での設定で計算すると3月間の線量は0.7[μSv]となり無視できることが分かります。
Q.サブマージョン核種の実効線量率定数を教えてください。
A.医療で関係するのは、
Ar-41: 5.3E-9 [Sv d-1/Bq m-3]
Kr-81: 2.1E-11[Sv d-1/Bq m-3]
Xe-133: 1.2E-10[Sv d-1/Bq m-3]
です(出典はICRP 68 付属書D)。
換気を考慮せず、
期間を無限に設定すると、
Kr-81mとKr-81による線量比は、
それぞれの実効線量率定数の比に等しくなります。
東海再処理施設からのKr-85の環境放出量は最大8.9E+7GBq/年とされていましたが、医療機関からのKr-81の環境放出量は極めて微量です(I-131は医療からの放出の方が多い)。
このため放射線防護上はKr-81の寄与は考慮不要とできるでしょう。
告示第398号別表3の実効線量率でサブマージョン核種の記載がないのは意図的であるのは間違いないと思います
(Cl-34 mはサブマージョン以外の反応性のある化合物では実効線量率が記載)。
そもそも、サブマージョン核種は、吸入摂取して線量を受けるというわけではないので、第2欄に数字の記載がないのは、論理的だと思います。
告示(医療法も障害防止法も)で、サブマージョン核種の線量評価が規定されていないのは何か理由があるのではないでしょうか。
この理由の答えをご存じな方、どうぞ、教えて下さい。
O-15は不活化ガス?
エネルギーが高い加速器では、O-15が生成されることが考えられます。放射線管理の法令上、O-15は不活化ガスとして扱われていますが、比較的反応性が高いガスとして存在することがあるのではないですか?その場合、吸入などによる内部被ばくが無視できなくなるのではないですか?
この問題意識が提示されている例
横山 須美.大型加速器施設における内部被ばく線量評価用パラメータの検討及び線量評価法への適用
吸入による線量が推定されている例
C1502,1502の持続吸入法によるPET測定時の内部被曝の検討
持続的な吸入を仮定すると、CO2で3.8E-13 Sv/Bq、O2で4.6E-13 Sv/Bqとなるようですが、内部被ばくでもっとも大きいのは肺の等価線量とされ、「肺中の放射性核種から放出される放射線による肺及び ET 領域の被ばく」が除かれているかどうかもポイントになるかもしれません。
Endo Akira; Kikuchi, Masarnitsu; Izawa, ; Shoji, ; Ikezawa, Yoshio. Characteristics of the Chemical Forms of 11C 13N, and 150 Induced in Air by the Operation of a 100 MeV Electron Linear Accelerator. Health Physics: January 1995
線量換算係数
Dose Coefficients and Derived Air Concentrations for Accelerator-Produced Radioactive Material
Table 3. Dose coefficients (Sv Bq-1) for inhalation of important forms of 13N or 15O
O-15(Sv Bq-1)
Water vapor: 1.16E-12
Oxygen gas: 4.45E-13
Table 4. Occupational ALIs and DACs for inhalation of selected forms of 13N and 15O based on tissue weighting factors given in ICRP Publication 26 (1977)
DAC (Bq m-3)
Water vapor: 1.7 x 107
Oxygen gas: 4.0 x 107
サブマージョン核種としてのO-15の空気中濃度限度 (Bq m-3):2 x 105
O-15の製造
講演内容/PET用15O製造のための小型サイクロトロンの開発計画
このような課題も国立保健医療科学院の医療放射線監視研修で扱っています。
原子力発電所事故後の現存被ばく状況での放射線防護のカテゴリーの記事は、保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイトに移行中です。
サブマージョン核種での吸入による内部被ばくは無視できるとしていると考えられる例
ICRP 2007年勧告の組織加重係数等に基づく内部被ばく線量係数,濃度限度等の試算(受託研究)
Ar-41
Ar-41: 5.3E-9 [Sv d-1/Bq m-3]とすると、年間の線量は9.68E-01 [mSv/y]となります。
疑問が呈されている例
質問
回答
A 値は A 型輸送物で許容される放射性同位元素の収納限度であり、IAEA の A1 値 A2 値の計算と適用のための Q システムに基づき算出されています。御意見にある下限数量は規制免除値(改正後の RI 外運搬告示案第 1 条の 2 第 1 項第 2 号の免除量)を指すものと考えますが、規制免除値は当該値を超えた場合に放射性輸送物として運搬する必要がある値であり、GSR Part 3(BSS値)の放射能量の値を取り入れたものになります。D値は未管理状態に放置した場合に重篤な影響を引き起こす量であり、分散しない場合(密封)を示すD1値と分散する場合(非密封)を示すD2値と分けて評価され、D1値とD2値で厳しい値が採用されています。
それぞれの値について想定されているシナリオが異なるため、核種によってA値、規制免除値、D値で危険度の度合いが異なる場合があります。
IAEA が示す限度値等の技術的基準については国際的に承認されたものであり、国内法令取り入れについては放射線審議会等で妥当性を検討した上で取り入れを行っているものであり、値については適正に評価されています。