胸部X線検査で受ける線量と航空機の中で受ける線量

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胸部X線検査の4回分の線量は、成田ーニューヨーク往復1回で受ける線量と同じくらいと聞きましたが,本当ですか?


飛行機の中で受ける線量

飛行機に乗ると受ける放射線の量は増えるのかな?

飛行機は機体で覆われているので、機内の乗り込むと線量率が少し下がる。

あの〜宇宙線の質問だと思います。

海上に出て高度を上げる場合には、しばらくはさらに線量率が下がる。
これは海上では大地にあるウランやトリウム系列からの放射線の量が少なくなるからじゃ。

飛行機が飛ぶ高度の10km程度ではどうなりますか?

大気による宇宙線の遮へい効果がだんだん小さくなるので、およそ1.5km高度が上昇すると線量率が倍になると考えられている。
地上で0.04μSv/hだったのが、一般の航空機高度(10-12km)では、5-8μSv/hになりえる。

それに飛行時間をかけると線量になるね。

計算ツールがクールなサイトで公開されている

ツールがあるので利用するとよいじゃろ。

デザインのセンスに優れたサイトだね(Adobe Flash Player 8.0以上なのでスマホでは計算できないようです(HTML5版航路線量計算ページが作成されていました))。
プレスリリースの資料では、成田ーニューヨーク往復1回の線量が150 μSv程度となっている。
胸部X線検査の実効線量はだいたい50 μSv程度だから3倍かな。

成田ーニューヨーク往復1回の実効線量は飛行時期によっても変動するが、おおざっぱに見積もって200 μSvとされていて、胸部X線検査の実効線量はだいたい50 μSv程度であるとして4倍であると示されている。
胸部X線検査の実効線量も検査の目的などで変化するので、だいたいの目安と考えればよいじゃろ。

リスクコミュニケーション的な取り組みでガイドラインが策定された

航空機乗務員の宇宙線被ばく管理に関するガイドラインは、乗務員の団体から再度の要請を受ける形で作成されたのですね。

作成の過程では当事者からの意見も聞き取られておる。
このガイドラインもリスクコミュニケーション的な活動でまとめられたものと考えられることができるじゃろ。

航空機機内の線量計

survey meter in airplane

それぞれの測定器で値が異なるのはどうして?

ガイガーカウンター(左側)では2.63μSv/hだけど、シンチレーションサーベイメータ(右側)では0.29μSv/hと桁で違っているようだけど、どちらかの測定器は正しく作動していないのですか?

測定器の応答特性の違いを示しておる。
シンチレーションサーベイメータでは高いエネルギーの放射線を捕まえきれないのじゃ。(リンク先の文字コードはEUCです)

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線量率が違うのではないですか?

飛行機の中で24時間で受ける線量と1秒間にも満たない短時間で照射されるX線検査の線量をそのまま比べてもよいの?と疑問を持ってしまうあなたは、こちらの記事をご覧下さい。
医療分野で実効線量を使ってもよいですか?

航空機内の線量率との比較例

NICUの医師や看護師が受ける線量

バックグラウンド計測との関係

バックグラウンドの線量率

より正確な調査

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構.公衆の宇宙線被ばく線量を世界で初めて国や地域ごとに評価~世界平均値は国連科学委員会の評価値より16%低いことが判明~

放射線リスクを心配する方にはこのようなリスク比較が反発されうるのは何故?

人工放射線と自然放射線のリスク
リスク比較 Risk comparison

医療での放射線利用は合理的?

慎重に考えるってどうすればよいのかな?
患者さんが受けた線量を記録管理するように医療法施行規則が改正されており、2020年4月から施行される予定となってています。

JAEA

Excel-based Program for calculating Atmospheric Cosmic-ray Spectrum

文部科学省.放射線安全規制検討会

航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討について
放射線安全規制検討会航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ

放射線安全規制検討会 航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ(第6回)議事録

航空機乗務員等の宇宙線被ばくは、法律上の定義は別として、職業上の理由で放射線にさらされているという意味では、職業被ばくと言えよう。本ワーキンググループでは、科学的知見や、外国で行われていることをベースに考え方をまとめたく、そこから先の法令等により規制するかどうかなどは、関係行政機関が判断する問題である。

内部被ばく

宇宙線による核破砕反応などで生成された放射性核種を吸入することによる線量も考えられます。

記事作成日:2011/02/18 最終更新日: 2023/06/30