放射線の白内障発症リスク

放射線が水晶体周辺部皮質混濁を引き起こすことを示唆する研究結果が得られています。

眼の水晶体の等価線量限度が引き下げられました(2021年度施行)

医療法施行規則の一部を改正する省令等の公布について (眼の水晶体に受ける等価線量に係る限度等)

経過措置が講じられることとなっています。

同常任理事は、報告書をまとめるに当たり、日医として「十分な放射線防護措置を講じても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者については、ガイドライン等の周知や専門家の指導等により改善するまでに要する期間や新たな放射線防護用品が開発されるまでの期間として、約3年間(公布後3年・施行後2年)は、眼の水晶体の等価線量限度を50mSv/年を超えないこととすることが適当である」を主張、その旨が取り入れられたことを高く評価した。

新しい知見

浜田 信行, 眼への放射線の影響に関するアップデート, 日本白内障学会誌, 2021, 33 巻, 1 号, p. 81, 公開日 2021/07/20, Online ISSN 2188-613X, Print ISSN 0915-4302

第243回原子爆弾被爆者医療分科会(令和3年8月23日)

放射線の健康影響に関する 最新の知見についてー 白内障 ー

経緯

放射線取扱作業者の線量限度は、眼の水晶体に対して150 mSv/yであり、これは、原爆被爆者に被ばく後2~3年後頃から発症した原爆白内障の知見に基づく。しかし、その後、放射線の遷延性の影響として老人性白内障があることが明らかになり、原爆被爆者の白内障の再評価が始まっている。この再評価は、水晶体に対する放射線影響の新たな生物学的事実の発見、新しい眼科障害評価法の開発、新しい疫学的交絡因子や危険因子の発見などに基づいている。

従来、放射線の眼の水晶体への影響は、被曝後、主として2-3年(0.5 – 35年)で細隙灯顕微鏡検査により観察される後嚢下部軸混濁が出現し、その閾値は、0.5-2.0 Gyであり、視力障害をきたすことなく長期に安定しているとされてきた。また、より高い線量では、視力障害を伴う放射線白内障を発症するが、その閾値は、5Gyであるとされてきた。このように被爆者の後嚢下部軸混濁や多色性変化などの水晶体所見に線量との関係が認められたが、周辺部混濁(所謂、老人性白内障)には線量との関連は認めなかった。しかし、これに反する知見が、その後、得られている。Wideらは、血管腫に対し放射線治療(1-8Gy)を幼児期に受けた患者の照射を受けなかった側の眼に(最小で0.1Gy)、照射30-45年後に、後嚢下部軸混濁の水晶体変化があることを認めた。Brownは放射線に起因した水晶体上皮細胞障害がかなりの年数を経て偏在化する可能性を指摘した。Kleinらは、Beaver Dam Eye Studyで、調査対象の4926人のうちコンピューターX線体軸撮影法(CAT)834人と16.9%のみではあるが、水晶体後嚢下部混濁 (95% CI: 1.08-1.95)と水晶体核混濁 (95% CI: 1.02-1.1.61)で検査履歴と関係があることを認めた。ここで、CATで水晶体が受ける線量は6-80 mSv(眼の水晶体の等価線量として示されています)とも推定している。錬石和男らは、術後白内障症例479人を含む、2000年から2002年に健康診断を受けた推定線量の判明している原爆被爆者3,761人を対象に、線量反応を推定するためロジスティック回帰解析を行い、尤度プロファイル法を用い最適閾値モデルの決定を試みている。その結果、1 Gy当たりのオッズ比 1.39、95%信頼区間 1.24-1.55で術後白内障の有病率に統計的に有意な線量反応増加が認めた。線量を0-1 Gyに限定すると線量反応は示唆的となり、有意ではない閾値0.1 Gy(95%信頼区間 <0-0.8)が認められ、これまで推測されている閾値2-5 Gyよりかなり低く、全く閾値がないという考えとも統計学的には矛盾しない結果を得ている。また、宇宙飛行士を対象にした調査では、Cucinottaらは、NASAの Longitudinal Study of Astronaut Health (LSAH) と個人の職業上の被ばく情報を組み合わせることで、水晶体に8 mSvを超える曝露があった宇宙飛行士で、白内障のリスク増加を検出している。
また、後嚢下部軸混濁だけではなく、周辺部混濁と放射線との関係でも新しい知見が得られている。重度の周辺部混濁は一般集団では52-64歳で5%、65-74歳で18%、75-84歳で46%に観察され、軽度の混濁はそれぞれ41%、73%、91%出現しており、これらはいわゆる老人性白内障といわれているものである。1980年代初めの放射線影響研究所が実施した成人健康調査(AHS)対象者に対する眼科調査では、水晶体周辺部の皮質混濁(いわゆる老人性白内障)には原爆被爆の影響はないとされてきた。しかし、2000年6月から2002年9月まで成人健康調査(AHS)対象者に対し行われた眼科調査では、873人について解析が行われ、その結果、原爆被爆後30数年以降に発生した後嚢下混濁および水晶体周辺部皮質混濁の二つの型の白内障に新たに放射線の影響があることが分かった。この結果は、小児期に血管腫の放射線治療を受けた人において、30−40年後に上記の型の白内障が増加したというスウェーデンの研究報告に合致する。
一方、医療従事者へのリスクに関しては、血管内治療を行う医師に白内障やレンズ内の混濁が発生するリスクが高いという報告が2004年のRSNAでなされ、わが国でも日本脳神経血管内治療学会放射線防護委員会では、学会中に学会参加者を対象に実態を調査した。
この調査は、第20回日本脳神経血管内治療学会で191人の脳血管内治療医を対象に水晶体を検査した。被ばく線量と水晶体の混濁の関係は見いだされていないが、差の検出力が十分ではないことや水晶体の混濁を無散瞳で眼科検査装置を用いて判断していることの限界がある。また、第35回日本IVR学会でIVR学会防護委員会がIVR術者の水晶体への被ばくによる影響を金沢医科大学眼科学教室の協力を得て調査した。対象は、主として腹部IVRを施行し、IVR件数が500件を超える医師である。左眼を散瞳させて、眼科医による診察を行った。

平成18年度の測定データでは、長瀬ランダウア社で計測した医療従事者89,232人のうち、診療放射線技師の平均水晶体線量は、3.37 mSvと医師の2.32 mSvと比べて高く、検出限界を下回った割合も、21.6%と医師の60.0%に比べて低い。平成20年度のデータでは、医師の0.6%が頭頸部の1cm線量当量がICRPが勧告する線量限度である50 mSvを上回った。また、千代田テクノル社で計測した医師50,454人、診療放射線技師23,904人では、平均水晶体線量はそれぞれ0.59 mSv、 1.12 mSvと診療放射線技師の方が高い。
高橋が、平成19年度日本学術振興会科学研究費補助金により、診療放射線技師の人員を調査したところ約4万人が病院等に就業しており、そのうち女性技師は約6,000人を占め、放射線を利用した職業ではかなり多くの割合になると思われる。これは、その被ばくに伴う不安やストレスを感じている女性技師が多数いるのではないかと予想される。また、就業期間中は、電離放射線障害防止規則により健康診断が実施されているが、定年後はまったくフォローされておらず長年の低線量被ばくによる影響は不明である。

文献

1)放射線リスク評価のための低線量反復被曝集団の疫学調査研究について
2)原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査報告講演会講演要旨
3)Cancer Mortality among Radiological Technologists in Japan. J Epidemiol, 1999; 9 61-72.

RERFによる解説

放射線白内障(水晶体混濁)
Epidemiological Studies of Cataract Risk at Low to Moderate Radiation Doses: (Not) Seeing is Believing(pdf file, 217kB)

関連記事

医療機関で放射線を扱うことのリスクは大きいですか?
放射線診療従事者の白内障のリスク

IAEAでの活動成果

IAEA Cataract studies published

IAEA Cataract study

CIRAJ-BJELAC, O., REHANI, M.M., SIM, K.H., LIEW, H.B., VANO, E., KLEIMAN, N.J., Risk for radiation induced cataract for staff in interventional cardiology: Is there reason for concern? Catheter. Cardiovasc. Interv. (Jun. 2010).

VANO, E., KLEIMAN, N.J., DURAN, A., REHANI, M.M., ECHEVERRI, D., CABRERA, M., Radiation Cataract Risk in Interventional Cardiology Personnel. Radiat. Res. (Jun. 2010).

IAEA TECDOC 1731

Implications for Occupational Radiation Protection of the New Dose Limit for the Lens of the Eye

ICRP

Statement on Tissue Reactions
2011年4月17-21日に韓国ソウルで行われたICRPの主委員会の会合で、組織反応に関するステイトメントが承認されました。(pdf file, 90kB)
このステイトメントでは、最近の知見から眼の水晶体のしきい線量を0.5Gyと見なすこと、計画被ばく状況の職業被ばくに対する眼の水晶体の等価線量限度(Publ. 103 では150 mSv)を5年間の平均で年20 mSv、年最大50 mSvにすべきであることが勧告されています。
また、不確かさがあるものの、循環器疾患のリスクが高まるしきい値が心臓や脳への放射線曝露量として0.5Gy程度になりえる可能性があり、複雑な手技のIVRではその線量に到達する可能性があるため、医療関係者は最適化で留意すべきとされています。

IAEA

Radiation and cataract
Q&Aで紹介されています。
Implications for Occupational Radiation Protection of the New Dose Limit for the Lens of the Eye

疫学研究例

Little MP, Patel A, Hamada N, Albert P. Analysis of Cataract in Relationship to Occupational Radiation Dose Accounting for Dosimetric Uncertainties in a Cohort of U.S. Radiologic Technologists. Radiat Res. 2020;194(2):153-161. doi:10.1667/RR15529.1
Occupational radiation exposure and risk of cataract incidence in a cohort of US radiologic technologists.
The O’CLOC study (Occupational Cataracts and Lens Opacities in interventional Cardiology)
European epidemiological study on radiation-induced lens opacities among interventional cardiologists
Cataract Risk in a Cohort of U.S. Radiologic Technologists Performing Nuclear Medicine Procedures.
Occupational radiation exposure and risk of cataract incidence in a cohort of US radiologic technologists
Azizova TV, Hamada N, Grigoryeva ES, Bragin EV.Risk of various types of cataracts in a cohort of Mayak workers following chronic occupational exposure to ionizing radiation.Eur J Epidemiol. 2018 Dec;33(12):1193-1204. doi: 10.1007/s10654-018-0450-4. Epub 2018 Oct 10.
Risk of cataract removal surgery in Mayak PA workers occupationally exposed to ionizing radiation over prolonged periods.
白内障手術は指標として感度が十分ではない。

Sumi Yokoyama Shoichi Suzuki Hiroshi Toyama Shinji Arakawa Satoshi Inoue Yutaka Kinomura Ikuo Kobayashi. EVALUATION OF EYE LENS DOSES OF INTERVENTIONAL CARDIOLOGISTS

IVR学会

防護委員会(古井理事)

放射線防護委員会ではIVR医の目の水晶体の変化を評価する目的で,金沢医大眼科の佐々木教授に依頼,昨年5月の総会(大阪)で会員約180名に対して水晶体検診(散瞳後の水晶体撮影を含む検査)を行った。今年度は,コントロール群(IVR術者としての被ばくの既往がない群,ボランティア300名が目標)の水晶体検診を行い,昨年得たデータと比較して,学会員の水晶体のデータを解析する予定。その第1回目として,5月30日(木)~6月1日(土)に東京でコントロール群の検診を行う準備を進めている。

その結果としてまとめられた論文

Quantitative evaluation of light scattering intensities of the crystalline lens for radiation related minimal change in interventional radiologists: a cross-sectional pilot study

日本脳神経血管内治療学会

水晶体混濁調査企画「白内障調査キャンペーン
放射線障害による白内障調査に関する結果報告
水晶体検診の結果報告

産業医大

個人が業務上受ける被ばく(職業被ばく)線量の実態調査および推移の解析(後ろ向き研究)

自然放射線

Wang Yan,Akiba S,Sun Quanfu.Survey of lens opacities of residents living in high background radiation area in Yangjiang, Guangdong province.Survey of lens opacities of residents living in high background radiation area in Yangjiang, Guangdong province.Chinese Journal of Radiological Medicine and Protection,2015,35(2):130-133

FAQ

海水浴では汚染した水と角膜が直接接するので水晶体表面への線量が高くなり、白内障のリスクが増加するのではないですか?

海水浴時の眼の水晶体への線量は、海水中の放射性核種の濃度と接触時間から推計できます。
線量は小さく、リスクも小さいと考えられます。

FAQ

金沢医大の佐々木洋教授らの研究では、68名のinterventional radiologistを対象にしたScheimpflug slit cameraにより撮影した水晶体画像から水晶体各層の後方散乱光強度を測定し、171名の健常者と比較したところ、明らかな後嚢下白内障は3名のみであったが、水晶体後嚢の後方散乱光強度は、interventional radiologistで有意に上昇しており、後嚢下白内障の初期病変を示唆する所見である可能性であるとのことですが、この変化は、細隙灯顕微鏡による肉眼判定で検出可能ですか?

限界があり、より早期のSubclinicalな水晶体の変化を判定する手法を取り入れる必要があるとの意見もあります。
金沢医科大学 眼科学講座 佐々木洋.放射線白内障の基礎 -IVRに従事する医師の調査結果および現在進行中の東電福島第一原子力発電所事故での緊急作業従事者の疫学調査も交えて-

日本眼科学会

眼の水晶体に係る放射線防護の在り方について

国の対応状況

国では検討が必要としています。

IAEA安全基準上の要求内容(Basis)

(B24) IAEA安全基準において、新たに設定された職業被ばくに関する線量限度「眼の水晶体の等価線量が連続する5年間の平均で 20 mSv(5年間で100 mSv)、どの1年間でも 50 mSv」【GSR Part3 21 Schedule Ⅲ】について、我が国では、本知見を踏まえた対応が行われていない。

自己評価で要改善とされた課題(Recommendation)

(R24) 職業被ばくに関する眼の水晶体の新たな線量限度について、IAEA安全基準を踏まえた対応の検討が必要である。

検討のスケジュール案の例

原子炉安全専門審査会及び核燃料安全専門審査会におけるIRRSにおいて明らかにされた課題のフォローアップの進め方について(案)

平成29年1月から3月に検討とあるようです。

研究での対応

今後推進すべき安全研究の分野及びその実施方針(平成29年度以降の安全研究に向けて)

厚生労働省

職場における労働衛生対策

職場における労働衛生対策
放射線業務における眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策について(基安発0418第2号平成29年4月18日)
放射線業務従事者等に対する線量測定等の徹底及び眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策の再周知について(基安発1101第1号、基安発1101第2号)
厚生労働省医政局地域医療計画課長通知「放射線業務従事者等に対する線量測定等の徹底及び眼の水晶体の被ばくに係る放射線障害防止対策の再周知について(医政地発 1106 第1号)」(令和元年 11月6日)

学会の対応状況

日本保健物理学会

No.1 「水晶体の線量限度に関する専門研究会」報告書(2018年2月)

規制整備の課題

藤通有希,小佐古敏荘,吉田和生,浜田信行.新たな水晶体等価線量限度に関する放射線防護の課題
林田 敏幸, 佐々木 洋, 浜田 信行, 立崎 英夫, 初坂 奈津子, 赤羽 恵一, 横山 須美.東京電力福島第一原子力発電所事故復旧時の放射線管理の課題―水晶体の被ばく・生物影響の観点から―

Nobuyuki Hamada Yuki Fujimichi Toshiyasu Iwasaki Noriko Fujii Masato Furuhashi Eri Kubo Tohru Minamino Takaharu Nomura Hitoshi Sato. Emerging issues in radiogenic cataracts and cardiovascular disease

海外の対応

EU

Directive 2013/59/Euratom – protection against ionising radiation

Final Report Summary – ORAMED (Optimization of radiation protection of medical staff)
Shielding hospital workers from radiation

フランス

Publication of three decrees reinforcing protection of the public, patients and workers in the field of nuclear activities

英国

Simon Bouffler, Elizabeth Ainsbury, Phil Gilvin and John Harrison. Radiation-induced cataracts: the Health Protection Agency’s response to the ICRP statement on tissue reactions and recommendation on the dose limit for the eye lens
HSE: Ionising radiation

規制整備に向けて

Consultation outcome: Regulations on medical exposure to ionising radiation
CD282 – the implementation of Directive 2013/59/EURATOM laying down basic safety standards for protection against the dangers arising from exposure arising to ionising radiation
Impact Assessment (IA) Implementation of the occupational exposures elements of the Council Directive 2013/59/Euratom laying down the basic safety standards for protection against the dangers arising from exposure to ionising radiation – The Ionising Radiations Regulations.
Regulatory Triage Assessment – Department of Health Basic Safety Standard Directive 2013/059/EURATOM
Consultation on the implementation of Directive 2013/59/EURATOM laying down basic safety standards for protection against the dangers arising from exposure to ionising radiation – Occupational health and safety
2018 No. HEALTH AND SAFETY: The Ionising Radiation (Medical Exposure) Regulations 2018
Regulatory Triage Assessment – Department of Health Basic Safety Standard Directive 2013/059/EURATOM
Consultation outcome; Regulations on medical exposure to ionising radiation
Impact Assessment (IA)
Proposals for the Ionising Radiations Regulations (Northern Ireland) 2017
REVISED REQUIREMENTS FOR RADIOLOGICAL PROTECTION
Consultation on the transposition of European Council Directive 2013/59/Euratom (Medical Exposures) in Northern Ireland
EXPLANATORY MEMORANDUM TO THE IONISING RADIATION (MEDICAL EXPOSURE) REGULATIONS 2017, 2017 No. 1322
EXPLANATORY MEMORANDUM TO The Ionising Radiation (Medical Exposure) Regulations (Northern Ireland) 2018SR No.17
Regulatory Triage Assessment – Department of Health: Basic Safety Standard Directive 2013/059/EURATOM

アイルランド

Consultation on Transposition of Council Directive 2013 59 EURATOM
Patient Radiation Protection Manual 2017

ドイツ

濱野 恵.ドイツ放射線防護令

Australia

Radiation Health Committee
Statement on Changes to Occupational Dose Limit for Lens of the Eye
(November 2011)

USA

Subpart C–Occupational Dose Limits
NRC Dose Limits
White Paper: Initiative to Reduce Unnecessary Radiation Exposure from Medical Imaging

オランダ

Radiation Protection and Dosimetry of the Eye Lens

フランス

Publication of three decrees reinforcing protection of the public, patients and workers in the field of nuclear activities

IACRS

http://www.iacrs-rp.org/products/iacrs-lens-eye.pdf

モニタリング

Eleftheria Carinou, Merce Ginjaume, Una O’Connor, Renata Kopec and Marta Sans Merce. Status of eye lens radiation dose monitoring in European hospitals
Consequences of european directive 2013/59 on lens dose monitoring of interventional neuroradiology workers
European epidemiological study on radiation-induced lens opacities among interventional cardiologists

千代田テクノル社のデータ

眼の水晶体の線量の経時変化
医療機関では線量モニタリングしている従事者の中で0.5%が年間の水晶体の等価線量が20mSvを超えています(防護眼鏡の効果を見込んでいない例がほとんどだと考えられます)。

長瀬ランダウア社のデータ

眼の水晶体の線量の経時変化

年間の実効線量が20mSv超の割合

測定会社20mSv超全測定者数20mSv超の割合
長瀬ランダウア社123163,132 0.08%
千代田テクノル社55186,613 0.03%

p-value = 1.67e-09

検出限界の割合

測定会社検出せず1mSv未満全測定者数検出せずの割合(対1mSv未満)検出せずの割合(対全測定者)
長瀬ランダウア社115,508147,019163,132 78.6% 70.8%
千代田テクノル社153,872186,613 201,608 82.4% 76.3%

2021年度

長瀬ランダウア社

長瀬ランダウア社のNLだよりNo. 539によると 178,734人中、令和 3 年度 個人線量の実態の単年度の50 mSvを超えるのが49人であり、同じこれ未満で5年で100 mSvにこのままだと到達するレベルとなる25 mSvを超えるのが322人、これ未満で 20 mSvを超えるのが323人となっています。

千代田テクノル社

FBNews No.549によると、224,058人中、令和 3 年度 個人線量の実態の単年度の50 mSvを超えるのが33人であり、これ未満で5年で100 mSvにこのままだと到達するレベルとなる25 mSvを超えるのが383人、これ未満で 20 mSvを超えるのが356人となっています(千代田テクノル, 2022)。

第三回放射線審議会眼の水晶体の放射線防護検討部会(2017/10/05)

個人線量測定サービス機関の統計データにみる眼の水晶体線量の分布状況

測定する部位による違い

モニタリングの位置による違い
不均等な放射線場なので、素子の装着部位で線量が異なります。

補償

放射線の労働災害(労災)認定事例

線量限度がしきい値を超えないことを担保しない?

オーストラリア

Statement on Changes to Occupational Dose Limit for Lens of the Eye(November 2011)
The ICRP now considers the threshold for tissue reactions to be an absorbed dose of 0.5 Gy. Based on the new limit for the lens of the eye, this effect threshold could feasibly be reached within a working lifetime. The end point of concern for the eyes is cataract formation. This latest ICRP recommendation, which represents a significant reduction in the occupational dose limit for the lens of the eye from 150 mSv to 20 mSv, has been incorporated into the revised BSS recently published by the IAEA. It is proposed that the revised limit will also be included in the replacement for RPS 1 and hence taken up in Australia.

ICRP

防護が適切であれば、線量限度の引き下げにもかかわらず、しきい値を超える可能性が大きくないとしている。
Clement C. New dose limit for lens of the eye. ICRP, Vienna,2012
Low likelihood of protracted preferential exposure of the lens

規制整備

英国

CD282 – the implementation of Directive 2013/59/EURATOM laying down basic safety standards for protection against the dangers arising from exposure arising to ionising radiation

総説

Hamada N, Azizova TV, Little MP. An update on effects of ionizing radiation exposure on the eye.Br J Radiol. 2019 Nov 12:20190829. doi: 10.1259/bjr.20190829
浜田信行.眼の水晶体に関する生物学・疫学・放射線防護

放射線審議会

意見具申

H'(3)やHp(3)の規制への取り入れの必要性の議論(正確な線量評価を可能とすることだけではない理由での)

今後、新たな水晶体の等価線量限度を規制に取り入れることとした場合、正確に水晶体の等価線量を算定することが事業者等にとって必要となる場合も考えられる。

Hp(3)を用いることでHp(0.07)やHp(10)での過大評価を避けられる場面として考えられる想定

比較的、高いエネルギーのβ線を放出する核種によるサブマージョン場
吉富 寛、古渡 意彦、萩原 雅之、長畔 誠司、中村 一.加速器施設における眼の水晶体モニタリングに関する被ばく不均等度の定量的評価 Quantitative estimation of exposure inhomogeneity in terms of eye lens monitoring for radiation workers in the accelerator facility

学会でのガイドライン策定の必要性の議論

○横山部会長 ありがとうございました。
それでは、議題3で詳細な論点整理、議論をさせていただきますので、こちらでは事実確認ということで何かございましたら御質疑をお願いしたいのですが。何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
1点確認させていただきたいんですけれども、ガイドラインが非常に有効であるという話、有効活用されているということなんですが、実際に、今、水晶体の被ばくに関するガイドラインを作成しようという動きというのはあるんでしょうか。
○大野教授 水晶体の線量限度が変わるということが確定した場合には、そういったものをどういうふうに考えるかというガイドラインを出したほうがいいだろうなということは考えております。
放射線審議会 第5回 眼の水晶体の放射線防護検討部会
「眼の水晶体に係る放射線防護の在り方について」(意見具申)を踏まえた関係省庁における検討状況について

IARC

チョルノービリ(チェルノブィリ)原子力発電所事故

ARCH Technical Report

原子力発電所事故後の現存被ばく状況での放射線防護のカテゴリーの記事は、保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイトに移行中です。

Deterministic Effects to the Lens of the Eye Following Ionizing Radiation Exposure: Is There Evidence to Support a Reduction in Threshold Dose?

緑内障?

Glaucoma in Atomic Bomb Survivors
Occupational radiation exposure and glaucoma and macular degeneration in the US radiologic technologists
Azizova TV, Bragin EV, Bannikova MV, Hamada N, Grigoryeva ES. The Incidence Risk for Primary Glaucoma and Its Subtypes following Chronic Exposure to Ionizing Radiation in the Russian Cohort of Mayak Nuclear Workers. Cancers. 2022; 14(3):602.
浜田 信行, 吉永 信治, 医療放射線被ばくの疫学とリスク推定に関する最近のトピックス, 保健物理, 2018, 53 巻, 3 号, p. 136-145.

被爆者援護法

放射線白内障(加齢性白内障を除く)については、被爆地点が爆心地より約1.5km以内である者から申請がある場合については、格段に反対すべき事由がない限り、当該申請疾病と被曝した放射線との関係を積極的に認定するものとする。

補償を巡る議論

ある疾病が放射線被ばくの影響によると考える、あるいはそれを補償する際の基準となる被ばく線量について、日本ではダブルスタンダード、トリプルスタンダードと言ってよいほど、一貫性がない。(吉田由布子)
厚労省の決めた1.5km(500ミリシーベルトの被曝)という線引きはこうした科学的知見を無視している。白内障は年齢とともに増え、70歳代で84-97%、80歳 以上では100%に見られるから、被爆者の白内障を原爆症に認定したら予算がいくらあっても足りないとの立場から、医療特別手当の予算枠を守ろうとしているからに外ならない。日本被団協ではすべての被爆者に健康管理手当相当額の被爆者手当を支給し、障害ある場合は程度に応じて3段階の加算をするという適切な提案している。国は敗訴しない限り被爆者援護制度を変えようとしないが、高齢の被爆者に訴訟を続けさせるのは酷である。司法判断を真摯に受け止めて被爆者が納得のいく認定制度の抜本的な改善に早期に着手するべきである。

どのように解決するか?

かけられる費用は有限であるのも現実であり、どのように対応するのがフェアであるかが課題だと思われます。

実態調査

東北大学大学院医学系研究科・東北大学災害科学国際研究所

放射線医療従事者の水晶体被曝の実態と危険性を解明 ‐IVR 従事者の眼の水晶体放射線防護の重要性‐

産業医大

個人が業務上受ける被ばく(職業被ばく)線量の実態調査および推移の解析(後ろ向き研究)

施策形成のための基礎資料収集

入札公告(眼の水晶体の被ばく限度引下げ等に関する諸外国動向調査及び検討事業)

校正場

光子放射線校正場に関する国際・国内規格の動向

Hp(3)

Hp(3)でないと過小評価される場合

RQR7 では表面と 10mm のどちらの値よりも高くなり得るため, 新たに Hp(3)を測定すべきと考えられた。

検討会

報告書
眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会

第二回の資料4 欅田委員提出資料「眼の水晶体の等価線量分布(医療分野)」の修正(確認が不十分で申し訳ございません)

JSRTの研究班の調査で診療放射線技師の方々は業務ローテーションがあるので一月間の線量が示されています(年間ではなく)。
検査数と室内での業務数によりますが、検査数、介助数の多い施設は年間20mSvを超える可能性もあるとのことです。

その他修正すべき点

・診療放射線技師を正式名称に
・診療科別ではなく主要な担当業務別に

第二回の資料7 欅田委員提出資料「医療分野における被ばく実態と被ばく低減効果」の補足説明

「8」の外れ値

介入前、6人中5人は防護眼鏡を使用していませんでした。
残りの1名は10%程度(約10回に1回)は防護眼鏡を使用していました。症例番号が「8」の事例です。

「10」の外れ値

介入後、全員、防護眼鏡を使用していました。
ただし、1名の方だけ、備えてあった防護眼鏡の数が足りず、1例使用できませんでした。それが、症例番号が「10」の事例です。

資料8 欅田委員提出資料「眼の水晶体の等価線量限度を意見具申どおりに見直す際の留意事項」

測定費用などは特定のサービスを想定しているのでしょうか?

いいえ、ここでは仮想的に設定しています。利用可能な情報があれば、それを利用して推計の質をよくすることができるでしょう。

出典によって人数が異なるように見受けられます?

千代田テクノル社がFBNewsで公表している統計データでの「医療」の人数は”一般医療”と”歯科医療”の人数を合算した値となっています。一方、個線協の統計データでは、「一般医療」と「歯科医療」を区別して統計処理が行われています。

「業種の分類については事業者名から判断している」とありますが、個人線量計の事業所の申込用紙には、業種を選択する欄があり、そこで選択された業種に分類されます。 法人の名前だけでは業種の分類は不可能です。

放射線審議会の意見具申の記述に従っており、個人線量測定サービスを行っている各社の確認を得ています。しかし、一般的には線量測定サービス申込書の業種選択欄に申込者が選択した業種で分類されているようです。

総説

浜田信行.放射線作業者に対する水晶体等価線量限度の改訂: 現行の限度との違い,規制動向,放射線影響の観点からの課題
浜田信行.眼の水晶体に関する生物学・疫学・放射線防護
浜田信行.放射線作業者に対する水晶体等価線量限度の改訂: 現行の限度との違い,規制動向,放射線影響の観点 からの課題
横山 須美.放射線業務従事者の水晶体の放射線防護

過去の報道例

原子力産業新聞(昭和31年3月5日 7号)

サイクトロンの従事者に3年後に白内障(白そこひ)の生じたことがあるが、これも後期障害である。

職場巡視

職場巡視のポイント

健康診断での眼の水晶体の検査

非散瞳の検査に意義はあるか?

第四回眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会

その他の課題

医療上の救命措置に従事時の放射線曝露

NCRP publication 168, recommendation 22

疾患の数学モデルの開発

A biologically based mathematical model for spontaneous and ionizing radiation cataractogenesis.

防護メガネのデザイン

Honorio da Silva E, Martin CJ, Vanhavere F, Dabin J, Buls N. An investigation into potential improvements in the design of lead glasses for protecting the eyes of interventional cardiologists. J Radiol Prot. 2022 Jul 6;42(3). doi: 10.1088/1361-6498/ac758f. PMID: 35654011.
Hirata Y, Fujibuchi T, Fujita K, Igarashi T, Nishimaru E, Horita S, Sakurai R, Ono K. Angular dependence of shielding effect of radiation protective eyewear for radiation protection of crystalline lens. Radiol Phys Technol. 2019 Dec;12(4):401-408.
防護眼鏡の遮へい効果を「the sum of shielding efficiency (SSE)」で評価しています(対象臓器である眼の水晶体の防護が重要なところだと思います)。
Mao L et al. Influences of operator head posture and protective eyewear on eye lens doses in interventional radiology: A Monte Carlo Study.Medical Physics.46(6), 2744-2751, 2019
術者の頭部姿勢がIVR時の水晶体線量に与える潜在的な影響を考慮することの必要性を示した。顔にフィットするスポーツグラスタイプは高い線量低減をもたらす。0.35以上に増やしても、水晶体線量は効率的に低減しない。

JIS T 61331-3:2016(IEC 61331-2)

13.2 設計 防護眼鏡は,一層の透明な防護材料から構成され,少なくとも眼の領域を完全に覆い,頭部又は耳に装着できるフレームに取り付ける。防護する眼の範囲は,レンズとフレームとをカーブさせた設計,又は分離形側面シールドで補ってもよい。
13.3 材料 防護材料は,変形による視界の妨げが生じないよう,硬質素材でなければならない。
a) 軽装防護マスク又は眼鏡・ゴーグルは,透明含鉛アクリル製で,全体にわたり減弱比2以上でなければならない。
b) 重装防護眼鏡又はゴーグルは,透明鉛ガラス製で,側面シールドを含む全体にわたり,0.50 mmPb以上の鉛当量でなければならない。

ブリッジ付近での透過分にも着目した例

Mao L, Liu T, Caracappa PF, Lin H, Gao Y, Dauer LT, Xu XG. Influences of operator head posture and protective eyewear on eye lens doses in interventional radiology: A Monte Carlo Study. Med Phys. 2019 Jun;46(6):2744-2751. doi: 10.1002/mp.13528. Epub 2019 Apr 26. PMID: 30955211; PMCID: PMC7469704.

現場での管理に対する疑念例

関西労働者安全センター

また、放射線業務従事者が最も多い医療現場での被ばく規制は、労働安全衛生法以外に医療法による規制も行われている。もし労働基準監督署が、 法定限度を超過する被ばくをした労働者がいる旨の情報を把握したときは、保健所に情報提供して医療法に基づく立ち入り検査と指導を行い、その情報を適宜労働基準監督署に情報提供する等の連携を図るなどという取り組みが事務局より紹介されている。ただ、 ここ数年の運用状況をみても、電離則違反で書類送検となった保健衛生業の事案は皆無(2014~2016)であり、先ほどの個線協の202人が法に触れる可能性というデータを考えると、規制の曖昧さがよく分かる。

均等場での眼の水晶体の被ばくの不均等性

古渡 意彦, 吉富 寛.モンテカルロ計算を用いた原子力及び加速器施設における均等被ばく状況下での放射線業務従事者の被ばくの不均一性に関する検討—γ線及びβ線による均等被ばく状況下での眼の水晶体への被ばく—

令和元年度放射線の安全規制研究戦略推進事業費(円滑な規制運用のための水晶体の放射線防護に係るガイドライン作成)事業

「医療スタッフの放射線安全に係るガイドライン」

一般社団法人日本放射線看護学会 学術推進委員会

看護職のための眼の水晶体の放射線防護ガイドライン

日本保健物理学会

「眼の水晶体の線量モニタリングのガイドライン」に関する公衆審査の結果ならびにガイドラインの制定について

放射線審議会からの意見具申

放射線審議会は、平成29年4月根拠法の改正により自ら調査し提言する機能を有することとなった。そこで、放射線審議会はICRPの当該勧告内容に関し我が国の制度に取り入れるための検討を行うこととし、平成29年7月の会合において「眼の水晶体の放射線防護検討部会」を設置した。

IRPAの調査

Sudchai MCC and MG and CJM and NH and SY and J-MB and LD and AD and CJ and WH and OK and AOK and SCM and W. Report of IRPA task group on issues and actions taken in response to the change in eye lens dose limit. J Radiol Prot [Internet]. 2020; Available from: http://iopscience.iop.org/10.1088/1361-6498/abb5ec

医療安全の観点

撮像法の工夫による患者の眼の水晶体の被曝線量低減の実践例の紹介

シンポジウム「医療における放射線防護の現状と課題-CT検査を中心に-」報告(渡辺)

防護眼鏡内側での線量分布の不均一性

防護眼鏡内側の線量分布の不均一性
小山内 暢, 佐藤 華菜, 佐藤 秀紀, 工藤 幸清, 細川 翔太, 藤田 彰, 北島 麻衣子, 對馬 惠, 小宮 睦弘, 工藤 真也, 齋藤 陽子, 体幹部用個人線量計と X 線遮蔽体による放射線防護眼鏡装着時における水晶体線量の簡易推定方法, 日本放射線技術学会雑誌, 2021, 77 巻, 12 号, p. 1432-1443

判例

平成30年(行ヒ)第191号 原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴,同附帯控訴事件 令和2年2月25日 第三小法廷判決

記事作成日:2010/01/22 最終更新日: 2023/12/06