原子力発電所事故後の現存被ばく状況での放射線防護のカテゴリーの記事は、保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイトに移行中です。
「空気中の放射線量」とは?
報道などで、「大気中の環境放射線量」や「空気中の放射線量」という表現を見かけます。
「空間線量」という表現も見かけます。
空気中の放射性物質の量を示しているのですか?
使用されている例
東京電力
首相官邸
災害情報
用語の由来
元々は、dose in the free airだと思われます。
だとすると、この用語は、散乱体なしの線量測定の意味しています。
散乱体ありの測定とは人体の表面や、人体を模擬するものの表面に付けた線量計で放射線の量を測定することです。
このようにして測定するのは、人体からの散乱線も考慮していることを意味します。
人体からの散乱線を考慮するとは測定器から見ると線源と反対側の後方からの散乱を考慮することなので、通常は散乱体があった方が線量は高くなります。
また、「dose」とあるのは、空気吸収線量、空気カーマ、何かの物質に対する吸収線量、何らかの線量当量のいずれかであることを示しています。
これらは、それぞれ定義が異なっていますので、大きさが異なります。
「空気中の放射線量」は何を計測しているのですか?
現在の測定はほとんどがフォールアウトした放射性核種からの線量を計測しています。
従って、「空気中の放射線量」が高いことは、空気中にまだ放射性物質が多く漂っていることを意味するものではありません。
線量が高いことは、周辺の環境(樹木や屋根や地表)フォールアウトした放射性物質の量が多いか、フォールアウトしたものが集積していることを意味します。
関連質問
「空気中の放射線量」を減らすにはどうすればよいですか?また、そのために、どの程度の労力を割くのが適切ですか?
環境中の放射性物質を低減させるか、曝露する放射線量をシールドするような措置を講じれば、線量を低減させることができます。
線量を低減させるべきかどうかは、
・対策を講じない場合のリスクが受容できる程度であるかどうか
・対策を講じることで放射線リスクが低減できる便益が、介入による不利益を上回るかどうか
などで考えることが出来るでしょう。
大地からの放射線は、地表からどの程度の高さで測定されているのですか?
測定によって異なります。
放医研の阿部先生らのデータは地上1mで取得されています。
外部放射線によるリスクは、原発事故前からの正味増加分で考えればよいですか?
外部放射線による放射線のリスクとしては、バックグランドの放射線と原発事故後に増加した分の放射線では、本質的な違いはありません。
原発事故後に増加した分の放射線は、対策を講じることで減らせる可能性があります(バックグランドの放射線も制御が全く不可能ではないですが)。
空気中濃度の計測例
原子力規制庁
ダストサンプリングの測定結果
福島第1及び第2原子力発電所周辺のダストサンプリング、環境試料及び土壌モニタリングの測定結果
不検出の記載は、ダスト試料の放射能濃度の検出値が検出限界値(I-131 が約0.54~0.85Bq/m3, Cs-134 が約0.48~1.8Bq/m3, Cs-137 が約0.53~0.96Bq/m3, I-132 が約2.8~4800 Bq/m3, Te-132 が約0.38~0.93 Bq/m3)を下回る場合。
東京電力
福島第一原子力発電所敷地内における空気中の放射性物質の核種分析の結果について(第九十三報)
参考記事
空気カーマと空気吸収線量ってどう違うの?
放射線の測定器の不確かさが大きいのはどうしてですか?
線量当量と空気吸収線量の違いなど。
モニタリングポストの値が変動しています